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○320日前



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




 兄は本当に、気まぐれにアイスを買いに出かけただけだったのか。


 そんな私の疑問と不安は瞬く間に膨らんでいった。なぜならそれ以降、兄はまた幾度となく深夜に出かけては私にアイスを食べようと誘ってきたからだ。


 学校で朗読会の仕事をしながら、ちらりと兄を盗み見る。兄はきちんと絵が飛び出して見えるよう定規を使って淡々と作図をしていた。教卓では野島先生が私のびっくりカードを黒板に貼り付け「みんな頑張りましょうね!」とほほ笑んでいる。


 あれから生徒会の集まりはほぼ大部分、紙芝居の制作に時間が費やされるようになった。ただでさえ今は周りの治安が物騒で、放課後遅い時間まで残れないのに野島先生はあれこれ難癖をつけてくる。この間は「切り絵とトリックアートのいいとこどりをしましょう!」なんて言ってのけた。


 さらに、私のびっくりカードを完成形にしているのか、要求するクオリティがやけに高い。私のカードはほんのハガキサイズだけど紙芝居は図工で絵を描く画用紙二枚分の大きさがある。作業時間だってずっと多くなるはずなのに、なぜか先生は私のびっくりカードの製作時間が一日であることを聞いて、皆でやればもっと早く終わると意気込んでいたのだった。


 状況的には最悪だと思う。すでに朗読会まで二週間を切っているし空気もどんどん悪くなる一方だ。はじめこそ兄は空気を良くしようと努力していたけど、最近では疲れ気味な顔でただ作業を進めることに努めていた。


「なぁ、本当に朗読会すると思う?」


 絵具で紙芝居の背景を塗っていると、横から岩井が耳打ちしてきた。彼は野島先生が二年生の色塗りの手伝いをしているのを確認しながらこちらに顔を近づける。


「母ちゃんさあ、毎日聞いてくんだよ。まだ捕まってねえじゃん犯人って。なのに学校何考えてんだーって」

「それはうちも心配された」


 かくいう私の両親も朗読会については不安視していた。一番不安視してほしいのは兄だけど、転々とこの辺りで起きている連続殺人事件はいまだ犯人が見つかる気配がない。


 犯行自体は全部夕方や夜に集中しているらしい。毎日毎日放送されるニュース番組でやっているから、朗読会に行ったら危ない! というわけじゃないけどこのままでいいのかなという不安はある。


 漫画ではそんな描写なかったし、私は来年、兄によってミキサーにかけられたみたいにされる嫌な役目がある。兄は兄でクラスメイトにデスゲームを開催する最悪な役回りだ。


 だからそれまでに死ぬことはないだろうけど……兄は「アイス食べたくなっちゃって」とアイス大好き食いしん坊のふりして夜中出かけては、ぱっと帰ってくるという変なことをしている。


「こら、そこお話ししないの。それに舞ちゃん。舞ちゃんがもっとちゃんと頑張ってくれないと先生困っちゃうよ?」

「え……?」

「だって、舞ちゃんあんなにカード作るの得意なのに、全然お仕事進めてくれないでしょう? 先生舞ちゃんならもっと出来ると思うんだけどな……」


 野島先生はがっくりと肩を落とした。そんなことを言われても困る。私は紙芝居職人じゃないし。


 朗読会はちゃんとやらなきゃとは思うけど、兄のデスゲームのことがある。クラスメイト約四十人分の命もかかっているわけだし、その四十人と関わっている家族の人生だって兄の手にかかっている状況だ。その熱意を向けろと言われても困る……。


 でもここで言い返しても先生は納得しないだろうし頷くしかない。


「あ、そうだ。舞ちゃん色塗りじゃなくて、こっちをやってくれない? 簡単すぎて飽きちゃったんでしょう!」


 そう言って野島先生が差し出してきたのは色を塗り終わった画用紙だった。確かこれを切り絵にするはず。でも、一枚だけじゃなく「はい、これも」と私の机に置かれたのは十枚ほどの画用紙だ。なんなんだ?


「舞ちゃんは、色塗りじゃなく切り抜き係にしましょう。それで色塗りは、そうね。岩井くんやってもらえるかしら?」

「え、俺?」

「うん。岩井くん色塗り楽しそうにしているし、ぜひやってもらいたいなと思って」


 野島先生が屈託なく笑う。切り抜きの量はとてもじゃないが徹夜しなければ間に合いそうもない。兄のほうをちらりと見ると、私を見て困った顔をしていた。でも、その瞳は変わらず真っ暗だ。


「岩井、今朗読会やりたい気持ち何割くらい?」

「一ミリもない」


 私たちは、はぁとため息を吐く。でもそれも野島先生に見られていて、結局私たちは委員会が終わるぎりぎりまで先生の「悲しい」という言葉を聞かされ続けたのだった。




本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

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