黒辺誠
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
さようなら天国おはよう地獄──通称「さよ獄」は、デスゲーム漫画だ。青年向け週刊誌と、その週刊誌のアプリで連載され、最初は知る人ぞ知る作品でカルト的人気を得て、最終的に大ヒットを記録した。
舞台はとある高校。肝試しに集まった1年生のクラスが、夏休み最後の3日間ネットが遮断された学校に閉じ込められ、デスゲームに巻き込まれるというサスペンスだ。
『おはようございます。地獄の時間です』
そんなアナウンスを皮きりに謎の主催者から突如提示されるデスゲーム。当然クラスメイトたちは戸惑い、そんなものに関わりたくないと逃げようとするが、そうした動きをあざ笑うようにクラスの学級委員長の惨殺死体が発見される。
生き伸びる手段は出題される課題を突破するか、一人ひとつ渡された武器で誰かを殺し、最後の一人になるか。
あらかじめ誰か一人を殺しておけば、次の課題がクリアできずとも免除される。課題に自信がなければ誰かを殺せばいいし、誰かを殺すことに自信がなければ、課題をクリアするか、課題の間に誰かを蹴落とせばいい。
そうした過酷な状況の中、毎週誰かが死に先の読めない展開は、多くの読者を熱中させた。
なおかつ、デスゲームに巻き込まれる生徒たちは一部主要人物をのぞいて、本当に身近にいそうなキャラクターばかり。
現実、ネット問わず、あのキャラは誰かに似ている。このキャラは自分と境遇が同じだ。自分だったらどうするかと共感しながら、はたまた他人事だと楽しみながら読み、先の展開を予想していくファンが多かった。
そこで、黒幕に続き最も注目されていたのが、主人公の田中ひろしだ。いい意味でも悪い意味でも等身大の善人であり常人の彼は、デスゲームに巻き込まれると「殺し合いなんて出来るわけないよ」「おかしいよ」と、自分の置かれた状況にただただ戸惑う。
誰も殺せない、誰も殺させない、できれば皆で生き延びたい。
善の指針で行動する田中ひろしは、頭は悪くないのでデスゲームの課題はクリアしていけるが、当然課題に失敗した人間は死んでいく。第三者からのトラップに気付けても、しかけた人間は自業自得で死ぬし、もしもトラップに引っかかっていたら、というひろしのもしもを再現するように、周囲の人間は死んでいく。
主人公として、殺戮場面のカメラ役にならなければいけない面もあるだろうが、周りはデスゲームの餌食になっていくのだ。
そしてひろしは、善意からミッションの抜け道を見つけ出しみんなで助かろうとするが、みんなで助かってしまえば物語にならない。ひろしの善意で人が死ぬこともある。普通は心を病む状況だが、ひろしは一貫して「殺し合いなんて出来るわけないよ」「おかしいよ」を繰り返す。
それでも最終的に主人公補正により、ヒロインである姫ヶ崎ゆりあとともに、物語終盤、最後の二人として生き残り、姫ヶ崎を殺せず二人で生き延びる道を探そうとするが──当然、相手は殺したくないです。生き残りたいです。なんて甘い考えは許されない。
脱出をはかろうとする二人の前にデスゲームの主催者であり、黒幕が現れる。それが、物語の冒頭で惨殺されたと思われていた学級委員長──黒辺誠だ。
完璧な容姿、完璧な頭脳、完璧な身体能力を持つ皆の人気者である彼の本性は、共感性に欠けた生粋のサイコパス。
幼いころから優秀だった半面、生き物を殺すことに惹かれていた彼は、虫から始まり、ネズミやハムスターと段階を踏み殺傷対象を大きくしていき、やがて一つ年下の義妹を事故に見せかけるなど、エスカレートしていった。
そして最終的に中学三年の冬、白猫が車に轢かれるさまを見たことを決定打として、人を殺す構想を練り、ただ殺すだけでは退屈かつ、普通の人間がどうやって殺意を抱くか、どんなふうに人を殺すのかに関心を抱きはじめ、とうとう高校1年生の夏休み、8月の最後にデスゲームを開催するのだ。
そして主人公である田中ひろし、ヒロインである姫ヶ崎ゆりあを圧倒的な力でねじ伏せ容易く殺し、すべて終わった後、首を切って自殺する。
最終的に主人公がヒロインとともに殺され、黒幕が自殺する衝撃的な展開は、ネットのトレンドに数日わたってのぼり、大きな影響をもたらした。連載終了後発売されたコミックスは即日完売が相次ぎ、また発売日当日には実写映画化も発表され、元々SNSを一切せずカルト的人気を得ていた漫画家が次回作はおろか漫画活動はさよ獄のみと出版社を経由し発表したことから、さらに話題となり、その素性についてニュースで取り上げられるほどだった。
そんな話題性抜群のさよ獄の漫画家からひろしは、「善意や優しさが必ずしも最良の結果をもたらすとは限らない」「善良な人間が人の感情に聡いかは別の話」と言われており、ほぼ公認の鈍感気質である。
ヒロインは姫ヶ崎で、ひろしは姫ヶ崎に恋をしているが、ひろしを慕う幼馴染の好意には全く気付かない。
不憫だ。可哀そう。幼馴染=負けヒロインだから。
ネットで同情され、時に励まされる第二ヒロイン、それが徳川明日加だ。彼女は幼少期、不審者に襲われたところを田中ひろしに助けてもらったことがあり、ひろしに恋をする。しかしひろしは幼馴染としか見ておらず、デスゲーム開催中、明日加はひろしを守ろうとしひろしと一緒に行動しようとするが、ひろしはひろしでほかに命の危機に瀕した人間や、ヒロインの姫ヶ崎が気になり明日加を放置してしまう。
にもかかわらず、明日加はひろしを庇い、最後には死んでいく。
長年大切に抱えていた初恋をその命とともに散らすのだ。彼女の死に際、回想場面が挿入されるが、ほかの人物は過去の未練や思い出である一方、彼女の回想は「田中ひろしとしたいこと」だ。小学校の頃に一緒に行った水族館に行きたい。海に行きたい。彼と結婚したい。
幸せを想像し、田中ひろしに抱えられながら死んでいく夢を見るが、実際は冷たく暗い理科室の中、魚が泳ぐ水槽のそばで一人命を落とす。ひろしは他者にさらわれた姫ヶ崎を助けに行っていて、明日加を看取るのは、名も知れぬ魚たちだ。
明日加の人生については、王子を想いながらも最終的には泡になり死んでいく人魚姫をモチーフにしているのではと考察がされていた。
報われない、人魚姫。
報われない、徳川明日加。
幸せを望んでいるのに、手が届かない。
さよ獄で、僕は誰にも共感できなかった。皆が「この人物が助かってほしい」と望む中、僕は誰にも何も思えなかった。徳川明日加に対しても、何も思っていなかった。
でも、想いが報われず孤独に死んでいく彼女に対しては、違った。
徳川明日加は可愛らしく明るい女の子で、僕とは全然違う。次元が同じだったとしても世界が違う。
それでも、どうしたって報われない、孤独を抱えているところに、重なれそうなものを感じた。
付き合いたいとか、話し相手になってほしいとかじゃない。形容しがたい、同情とも共感でもない、重なりがあるような気がした。
そんなものは、無いだろうに。
「徳川、明日加」
僕は彼女の名前を呼ぶ。
「え、何突然、どうしたの?」
明日加は目に見えて動揺した。突然フルネームを呼ばれたら、驚くのも無理はない。
『ここはデスゲーム漫画の世界で君はこの夏死ぬんだよ』
そう続けても、きっと君は理解出来ないだろう。だから言わない。
それに、言ってしまえば、計画を知られたと黒辺誠が僕らを殺す。間違いなく、殺す。
「なんでもない」
僕は返す。いつの間にか黒辺誠の姿は消えていた。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




