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凝固



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




 ホワイトデーなんて、好意の押し付けをした末に見返りを要求する日だと思っていた。最初から全部、何もかもが欲しくなんてないのに。ただ期待を雑に切り捨てれば不利益を被ることも目に見えていて、バレンタインデー当日は優しい兄の顔で舞に食べさせ、ホワイトデーのお返しは「女の子の趣味ってどんなのかな? どれを選んでいいか分からないんだ」と、舞に処理を任せていた。でも今年はホワイトデーの前に卒業式があり、面倒くさいことはせずに済んだ。しかし、今年のバレンタインデー当日俺にチョコ……完全に見た目が幕の内弁当のチョコレートと見た目がチョコレートのからくり時計を渡してきて、なおかつ、俺が卒業しようが関係なく顔を合わせる人間が、家の中に一人いる。

「うーん? なんか変……」

 休日の昼下がり、該当者はリビングの窓を開け、サッシのあたりで腰をおろし熱心に球体関節人形へはんだごてを向けていた。相変わらず愚かだなと思う。静かに蒸発するような音が断続的に聞こえる。ものを溶かす音だ。はんだごての先端は熱湯の温度をゆうに超える。あれに皮膚を焼かれたらたまったものではない。そう考えると肩や肘のあたりに妙に力がこもってきて、考えないようにする。しばらく舞を観察して、はんだごてのコードを抜いてから、俺は舞に声をかけた。

「ホワイトデーのお返し」

 いつもどおり、毎年、毎年、毎年同じ言葉をかけて、同じような笑みを浮かべる。そうしていつもどおりを演じながら、俺は小箱を舞に差し出した。

 舞への贈り物に選んだのは、真っ赤な花をアクリルで固めた置物だ。去年まではクッキーとか、マシュマロとかそういうものばかりだった。シュシュはあげたけど、消えないものを、残るものをこうした「お返し」に選んだのは初めてだ。

「え、あ、ありがとう」

 舞は戸惑いがちに箱を開いて、中を確認する。置物を見た途端、バッと顔を上げ、目を輝かせた。

「かわいい! ありがとうお兄ちゃん! すごい! こんな素敵なもの売ってるお店あるんだ! すごい! どこにあったの?」

 舞は太陽にすかしながら、アクリルにより時間を止められた花を見つめる。どこに売ってたか。花とアクリル。どちらの店を答えようか悩んで、俺はわずかに口角を上げた。

「秘密」

「なんでよ! 教えてよ!」

「舞には言わない」

「えー!」

 舞が声を上げると、舞と血が繋がった親が「静かに!」と注意する。

 馬鹿みたいだなぁと、ただただ思う。

 舞も、自分も。

 舞の時間を止める瞬間──その少し前なら、答え合わせをしてもいい。

 でもその時が来るかは、分からない。そんな時が来てほしいか来てほしくないのか、感情も定まらないままだ。ただ蜿蜒と、どうしようもない想いだけが焼き爛れて広がっていく。

 赤い花から、嬉しそうに花を眺める横顔に視線を移す。湧き上がる衝動に苛まれる。だからまた、暗がりに誘うような廊下へ進んでいく。

「まあ、いつかは分かるんじゃない。いつになるかは──わからないけれど」




本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

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漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

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