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悪縁は永年の拘束 後編



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




 兄は倫理観がない。


 残酷なものが好きだし、多分今でも合法で殺人が行えるならしているだろう。周囲に警察官になることを勧められ「人を守ることはやりがいがありそう」などと供述するけど、絶対殺伐とした意味合いだと思う。捜査官に捜査協力をしたりする殺人鬼は、「殺したりするのが大好き!」ではなく独自のルールに基づいて生きている。一方兄はどう考えても何かが苦しむ姿が好きだし、殺戮フェチとして世に生きているとしか思えない。


 ただ、兄は倫理観が死んでいながらも社会性があるし、何より中高生徒会長になったほど人望もある。高校で会う先生はみんな私に、「お兄さんは本当に立派」と言う。私が「この人殺人鬼です!」と言っても誰にも信じてもらえない雰囲気だって持っていたけれど、最近は化けの皮が剥がれつつある……と思う。


「アアアア! もう! やめよ! なし! 私が悪かった! 私が悪かったから!」


 夏休みの昼下がり、私は奇声を上げながら兄へクッションを投げつけた。低反発で優しく人に寄り添うと評判のやわらかクッションは、即座に兄に叩き落される。ことの発端はゆかりちゃんとトークでやり取りをしながら、軽い気持ちで私が兄をつついたことだった。ゆかりちゃんはかなりのくすぐったがりで、私が抱きついただけで可愛い声を出す。ふわふわしてるし、その反応が可愛くてキュートアグレッションにも似た邪悪な気持ちがわいてしまうけど、ふと兄はどうなんだろうと気になった。だから軽い気持ちでつついたら、私はくすぐり地獄に陥ったのだ。


「いやだ」


 兄は私に馬乗りになりながら、楽しそうにくすぐり続ける。幼稚園くらいなら無邪気な戦いだけど、もはや一方的な拷問だ。いやでも兄がくすぐりが弱かったら、私もやめずにくすぐり続けるだろうし、中々難しいけれど……。


「なんか、すごく楽しい。すごい不思議な感じがする」


 そう言って、兄は私の脇腹に触れる。最近わかったけど、兄は小馬鹿にしたときの笑顔、想定に反して何かが楽しかった時の笑顔、よそ行きの微塵も心が動いてない笑顔の3種類がある。そして想定に反した笑顔は直近で、「床に這いつくばっている私を引きずったとき」「ソファに座る私にめりこんできたとき」「私の口の中に指を突っ込んできたとき」だから、たいてい最悪なときだ。もう二度と兄に虫歯で痛いかもとか言わない。


「いや余裕じゃないから! 本当に、もうつつかないから! あははは!」


 くすぐられてどうしても笑ってしまう。兄は妹が苦しんでいるというのに楽しそうだ。


「人が苦しんでるのどんだけ好きなの」


「違うけど」


 しかし、私の一言で兄はすぱっと動きを止めた。昏い瞳で私を見下ろし、私の頬をつつく。


「舞に触ってるのが楽しい。確かに前は誰かの首締めてみたいとか色々思ってたし、まぁ今もリスク無いならしたいけど、今は普通にこっちのが興味ある。リスクあっても」


 そして今度は、私の心臓のあたりを指差した。


「それは、殺戮的な意味合いで……でしょうか」


「俺のこれからすることで判断すれば」


 他人事な物言いに絶句した。一方兄は嬉しそうに時計に目を向け、「お父さんとお母さん帰ってこないね」と、楽しそうに告げる。


「そういえばお母さんとお父さん、買い物遅いね──……」


「せっかくだし夕食食べてくれば? って今日限定のギフトカード送ったから、お昼食べるんじゃないかな? 美味しいもの食べてほしくて四駅先の行列するレストラン教えたけど、コース式だし時間かかるだろうね」


 誠は興味なさげに窓の外へ視線を向ける。


「親孝行ですね……」


「どうだろう。一般的に言えば悪い子じゃない?」


 誠はそう言って、私に顔を近づける。


「まぁ、舞も今から悪い子になるんだけど」


 くすりと笑いながら、誠は唇を近づけてくる。私はこれからのことに思いやられながら、目を閉じたのだった。




本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




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