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悪縁は永年の拘束 前編



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




兄がデスゲームを開催しなかったとはいえ、私は誠に料理を作ることをやめていない。習慣のようになってしまっているし、普通にクッキー食べたいなと思って焼いて兄に渡すことは多々ある。


「楽しい?」


 そして、休日の午前中のこと。お昼ごはんを食べる気はしないものの甘いものは食べたいと、コンビニに行こうとして兄に追跡され、材料を買ってきて台所でケーキを作ろうとしていると、兄が興味なさげに近寄ってきた。


 兄は料理に興味がない。家庭科の成績がいいのは知っているし、お母さんやお父さんの料理の手伝いもよくしている。ただ料理をしていても、微塵も楽しそうじゃない。表面上「料理って楽しいね」と周囲に微笑んで見せるけど、多分魚や肉を切ったり血を出したりするのが好きなんだと思う。そうじゃなきゃ、虫をあんなふうにしないし。


 そんな手作りや甘いものへの関心なんてどこかに削ぎ落とした兄ではあれど、今日は私の横に立ってじっと私の様子をうかがっていた。


「楽しいけどなに……? りんごのコンポートの味見分はないよ……?」


 今日作るのは、シナモンをたっぷり効かせたアップルパイだ。明日は盛大に驚き要素を詰めた食事にするから、今日は油断させるため余計なことはしない。そして、私も早く食べたいから多めに作ってない。分量きっちりだ。


「人を卑しいみたいに言う。で、この生地は何?」


「アップルパイの上のシャッシャのところですけど……」


「井桁状のやつか」


 兄はそばにあった包丁を手にとった。包丁はきちんと生地に向けられ、定規を使っているわけでもないのに均一に、スッと線が入っていく。


 兄の頭が正常化していないことを、私はよく知っている。今までは天性の快楽殺人系おかしさだったけど、だんだん牢の中にいながら捜査協力するような、気に入らない人間を胃で消化していくタイプの在り方を獲得したのでは……。


「人間食べようとしてる?」


「刃物持ってる人にちょっかいかけちゃ駄目って家庭科で習わなかったの?」


 誠は大して気に留めていない様子で返答してくるけれど、普通の人っぽい挙動をされると逆に不安を覚える。一番普通とかけ離れた価値観を持っているだろうし。疑念は拭えずつい警戒していると、「舞は」と兄は包丁を持ったままこちらに振り向いた。


「俺が普通にあろうとすると、変な顔するよね」


「いや、そういうの好きじゃないだろうからね、なんなんだろうって思うよ。ゆかりちゃんがある日突然ロックバンドとかに目覚めるとか、除夜の鐘叩き鳴らすくらい危機感抱くよ」


 ゆかりちゃんは、大きい音が得意じゃない。チカチカする点滅も駄目だ。たぶん激しい光も好きじゃない。すぐびっくりして飛び上がってしまう。近くにいると木魚も中々厳しいらしいし、鐘系は論外だから毎年のお正月はうちに避難しに来るほどだ。そんな彼女が「私大きい音大好き!」と手筒花火などを持ち出したら危機感を抱く。


「俺が普通に暮らすことが、ねぇ」


 するとやけに兄はこちらに馬鹿にしたような目をむけてくる。鼻で笑ったかと思えば、視線をりんごに落とした。


「舞の落ち度もあるからね」


「何が」


「舞がそうなってるの」


 あまりにも主語がなくて理解が出来ない。いや、この兄の思考を理解すること自体、かなり無理があるけれど……。


「まぁ、そのうち後悔すればいいんじゃない? 放っておけば幸せだったのに、引き金ひいたのはそっちなんだから」


 兄は丁寧にパイ生地を切り分けると、さっさと盛り付けオーブンにパイを入れてしまった。片付けまで始めてあっけにとられていれば、台所のカレンダーへと目を向けた。


「そういえば今日、親二人はのんきにお出かけか」


「最低な言い方してる」


「だってのんきとしか言いよう無いからね、人間二人、家に残してでかけて」


 兄は「手が砂糖でべたべたするなぁ」と不快さを隠さず手を洗い始める。私は兄の思考がいまいち掴めないまま、片付けに移ったのだった。



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

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