△331日前 ゆかりの困惑
前半がデスゲのゆかり
後半が池に飛び込む舞と友達になったゆかりの物語です。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
【畏怖の教室 side Yukari Comic】
クラスに怖い人がいる。
名前は、黒辺舞ちゃん。黒髪のさらさらしたストレートの髪をなびかせ、生徒会の副会長をしている女の子だ。同じクラスで、私から声をかけたことはない。
「どいて」
「あっ、ごめんなさい」
教室に入ろうとすると、前から黒辺舞ちゃんがやってきた。小学校から一緒だったけど、私から話しかけたことも、彼女から声をかけられたことも一度もない。でも、なんとなく嫌われているんだろうなと思う。
私は動くのが遅いし、話をする時どうしてもゆっくりになってしまうし、それでぶりっ子って悪口を言われることも多いし……。
小学校の頃は、ずっと休み時間を教室で過ごしていた。クラスのドッジボールに混ざって遊んでみたかったけど、ボールを投げるのも避けるのもうまくないから、足手まといになってしまう。体育のチーム分けをするときだって、私が入ると気まずくなってしまう。
一方、黒辺舞ちゃんは、小学校は六年間すべて、中学校も一年二年と同じクラスだったけど、いつもクラスを仕切る、女王様みたいな感じだった。真面目で、何でもずばずば言えて、私と大違い。かっこいいなと思うけれど、同時に怖かった。そんな彼女は、生徒会長をしているお兄さんのことが好きだ。なんとなく、見ていてわかる。いつも冷たい印象を受ける彼女が、お兄さんには優しく笑うから。
私は教室へと入り、自分の席に座った。けれど、話し相手もいなくて、スマホを取り出してぼんやり眺める。授業の間にある十分づつの休憩が、苦しい。話し相手もいないし、楽しくない。
夏休みが恋しい。これからさき、少し頑張ればシルバーウィークがあるけれど、それが終われば冬休みまで、月、火、水、木、金と、学校に通わなくちゃいけないし。
学校、つまんないなぁ。嫌だなぁ。
私は、はやく学校が終わりますようにと祈る気持ちで黒板に目を向けたのだった。
【急募 大切な友達の応援方法 side Yukari REAL】
お友達が変わってしまったとき、一体どうすればいいのだろう。
とっても悪い道に進んじゃったら、駄目だよって止めてあげなきゃいけない。良い方に変わったのなら、応援したい! 頑張れってたくさん伝えて、疲れちゃってたら、お疲れ様って声をかけてあげたい。
でも──、
「お兄ちゃんの部屋の中にね、ドミノを置いたんだ。もう一面に。でも気づいたんだよね。ドミノってある程度間隔が無いと見応えないし、一色だとちょっと地味すぎたかなって」
変なふうに変わっちゃったら、友達としてどうすればいいんだろう。
「バンジーもねぇ、ただ飛ぶだけじゃわりと地味だったかもしれない。もっと派手なの考えなきゃなぁ」
どう考えてもお兄ちゃんに嫌がらせを始めてしまった友達の舞ちゃんは、難しそうな顔でそう言って、体育館のステージに視線を向けていた。
夏休みが終わり、皆日焼けしたり、髪を切ったりして、変わってはいるけれど、外見的に一番変わった感じのしない舞ちゃんは、ものの見事に変わってしまった。
「あ、お兄ちゃんだ」
そう言って、ただ見たままの景色を舞ちゃんは声にだすけど、前だったら「お兄ちゃんだー!」と声を上げていたし、「かっこいい!」なんて私をつついてきた。
友達だからなんて関係なく、舞ちゃんが彼女のお兄さんを好きなことは、学校の皆が知っているくらい、目に見えてわかることだった。でもそれが、夏休みがあけて、シャボン玉がはじけるみたいに消えてしまった気がする。
舞ちゃんは朝いつも「お兄ちゃんがさぁ、結婚は早いって言ってくるんだよねぇ、どう思う?」と私に言ってきたのに、今日は「暑いね〜ゆかりちゃん。夏休み楽しかった?」と、特にお兄さんに触れること無く、その後もテレビのことや、宿題の話をして、クラスの皆をざわつかせていた。
今だって、お兄さんの朗読会の説明に、「えぇ」なんて面倒くさそうな顔をしている。
「朗読会で放課後残るの嫌だなあ」
「ゆかりイラストならお手伝い出来るけどお話するのは無理だよぅ……」
「なにか描かなきゃいけなくなったら呼んでもいい?」
「勿論だよ〜」
イラストを描くのは好きだ。可愛い動物や、きれいな景色を見ると、つい利き手が動いてしまう。思えば、舞ちゃんと話をしたのもイラストがきっかけだ。小学校の頃、引っ込み思案で全然クラスに馴染めなかった私を、舞ちゃんが「ゆかりちゃんは絵が上手いね」と声をかけてくれた。
それで、一緒に話をするようになって……、話の仕方がぶりっこっぽいとか、気持ち悪いと言われる私に、「そんなことないよ」って励ましてくれた。だから優しい子だってことは知ってるけど……。
木魚をお兄さんに向かってかき鳴らすのは、さすがに駄目だと思う。あれ、結構音大きいし、お父さんも、「もう少し音が小さくないと、近所がなぁ」と、厳しい顔をしていたし……。
「ねぇ舞ちゃん、あんまりお兄さんに酷いことするの、よくないと思うよ……?」
「大丈夫だよゆかりちゃん。これも、未来の平和のためには、必要なことだから」
私の肩をぽんぽんとたたき、こちらを落ち着けてくる舞ちゃんの理論が何一つ分からなくて、戸惑う。
だけどせめて、彼女がなにをしたいのかは分からずとも、困った時は応援して助けたい……と、セミの鳴り響く体育館で思ったのだった。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




