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本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




 舞を殺す当日。親二人は早々に家を出た。舞はそわそわした様子で俺との勉強を始め、俺の紅茶に薬を仕込んでいた。今まで俺を驚かすときそんなものは使っていなかった。不思議に思ったし舞の淹れたものなら飲んでも良かったけれど、今日だけはいけない。


 すり替えた紅茶を一口飲む。舞はじっと俺が紅茶を飲みこむ様子を観察していた。


「舞はさ」

「ん?」

「俺が兄で良かったって、思ったことはある?」


 俺は舞が妹で良かったと思ったことは一度もない。舞が傍にいて良かったと思ったこともない。


 恋しい、愛おしい、欲しい。そう思うけれどその想いをぶつけられた舞が哀れで、舞が傍にいて幸せを感じることはあっても、「良い」とは思えない。


 可哀想、なのだと思う。同情をする。こんな化け物に愛されて犠牲にされて、今日全てを奪われ失われていく舞は、酷く可哀想なんだと思う。


 でも、やめてやれない。


 舞が欲しい。俺は全てが欲しい。生きている限り終わらない。俺は舞を好きになってしまった。愛している。だからこそ殺すしかない。ただ幸せを願いそっと愛することなんて、俺には出来ない。


「どうしたの、いきなり」

「いや、舞は可哀想だなと思って」


 俺の言葉に、舞は戸惑った顔をする。きっと俺の言葉を理解するのは俺が舞に手を下す瞬間だ。そのときはじめて舞は俺の真意を知ることになるだろう。


 俺が舞を愛していることを知って、命を途絶えさせていく。想像すればするほど色鮮やかに見える光景は、ぞっとするほど心が震えず、ただただ身体を冷やしていくばかりだ。


「世界で一番可哀想だよ。舞は」


 舞は可哀想だ。これから世界で一番可哀想な女の子になる。俺がする。化け物に愛されたばっかりに、何一つ悪くないのに貪り奪い尽くされる、可哀想な舞。可哀想な舞。可哀想な舞。


「ねえ、お兄ちゃん、私ね……」


 舞は俺を見て、意を決したように何かを伝えようとする。薬が効いて来た。身体が痺れてきたのだろう。もうあとは意識を堕とすことしかできない。さよなら、舞。また会おうね。俺を愛せるように直してあげる。それが駄目だったら一緒に死んで、一緒に死のう。それか、もしくは――、


「お兄ちゃ……」

「舞。俺やっぱり変われないや。俺のこと、一生許さなくていいよ」


 俺に手を伸ばすように、俺を求めるように舞の瞳は最後まで俺を映している。最後の意識が途絶えていく前に、俺は舞の額に唇をあてた。


 しばらくそうした後、用意していた手錠を舞の手首にかける。鎖で繋ぎ、さらに俺の部屋に繋げた。これで舞が手首を切断するか、俺が鍵を渡さない限り絶対逃げられない。


 俺はほっと息を吐いてから、ぐっすりと眠る舞に目を向けた。


 ぐっすりと眠っている頬を撫でる。柔らかくて、すぐに切り裂けそうだ。病室で横たわる舞を見つめていたときが懐かしい。あの時はこんなことになるなんて思いもしなかった。


 まさか、俺に人への執着が芽生えるなんて。


 池に突き落としたらどうなるんだろうと思っていた、


 舞はどうでもいい存在で、俺の社会性を補強するための部品。明日死のうがどうでもよかった。それなのに。


「可哀想にね」


 呟いても舞は目覚めない。俺がまともだったらもっと違った結末を迎えていただろうか。正しく舞を幸せにして、舞を好きで、愛して、愛されていたのだろうか。


「ごめんね」


 今まで心の底から誰かに謝ることなんて出来ないと思っていた。でも今は心の底から舞に申し訳ないと思う。胸が痛い。これからもっと痛むことを舞にする。それでもやめられないのだから、俺はどうしようもない人でなしだ。


「舞になら、殺されても良かったよ。俺は」


 いっそ、殺してほしい。舞を殺す前に。そうして一生俺を覚えてその身と心に刻んでほしい。別れの言葉の代わりに最後に舞を抱きしめる。体温が温かくて、それがうつったのか目頭が熱くなった。


「ごめんね、好きになって」


 呟いた言葉は愛しい人には聞こえない。もう後戻りもできない。幸せな未来は望めない。




本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

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― 新着の感想 ―
ここ、ヤンデレのサビすぎて何度も見に来てしまいます
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