●30日前
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
人は、危機を感じると冷静さを失うと聞いていた。俺の中にもその思考は存在していたらしい。
長谷が舞を欲しがる行動は俺にとっては想定していないことで、もし舞が他の人間に好意を持ったらという想像を俺にさせるには十分だった。
終わりの見えない焦燥に駆られ、瞼を閉じれば舞が他の人間のもとへ駆け寄る瞬間が繰り返される。でも、舞を殺すことを考えたのは、他でもない舞のずっと近くにいた存在……舞の同級生が、舞に告白をする瞬間を見てからだ。
その日は酷い土砂降りで、帰りの電車に遅れが発生し、舞を待たせるのが伸びてしまった。スマホで呼び出してもいいけど、中学校の中はスマホの使用が禁じられている。幸い俺は卒業しても出入りは許されていて、いつも通り来校証を下げることなく借りたスリッパで校舎へと入った。
舞はいつも家庭科室にいる。寺の娘と仲が良く、それが裁縫部だからだ。いつも通り扉に手をかけると、「好きなんだけど、お前のこと」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……え?」
続けて舞の間抜けな声が聞こえてくる。窓から覗くと、教室の隅の席で舞がこちらに背を向け座っていた。隣には野球のユニフォームを身に着けた男子生徒がいて、舞を真剣に見つめる横顔が見えた。
「小学校の頃からずっと好きだった。付き合ってほしい」
「い、岩井……」
「お前が俺の事そんな風に見てないのは分かってる。でも、俺の気持ちは知っててほしいし、これから男として見てほしい」
真っすぐな言葉。強い瞳。俺が舞に与えられないもの。声だけでも十分すぎるほど善性が伝わってきて不愉快だった。同時に舞の答えが聞きたくてじっと息を殺すと、やがて「ごめん」と首を横に振った。
「岩井とは、付き合えない」
その言葉に、自分でも驚くほど安心した。どっと額から汗が湧いた気がして慌てて拭う。
「俺に勝ち目はないか」
「岩井とは……ごめん」
舞が頭を下げる。喜ばしいことだ。でも、自分も同じように好きだと伝えて、舞に断られたらどうするかと不安も抱いた。今まで舞に拒まれる想像が出来なかったけど、今実際目にしたことで鮮明にイメージすることができてしまう。
もし、舞がほかの男を選んで、俺に別れを告げようとしたら。
直感的にしてはいけない想像だと思った。それを想像してしまったら後には戻れない。ただでさえ俺は正しい思想を持ち合わせていないのだから。
「ただ、これからも友達として仲良くはしてほしい」
ただ、これからも兄妹として仲良くはしてほしい。
不思議なほど、自分が言われたと錯覚するほど想像が出来た。
そして次に思い浮かんだのは舞を殺すことで、その夜、首を切り流れる血の細部まで鮮明な夢を見てしまったのだった。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
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