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○61日前



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




「なんで放課後って来るんだろうね……」


 兄やお母さんに八つ当たりをして翌日、私はゆかりちゃんや岩井に嘆く。今日は短縮授業で五時間目しか授業がない。だからすぐ帰ってもいいけれど、兄が迎えに来る決まりで私は残っている必要があり、ゆかりちゃんが裁縫部ということで家庭科室にて待たせてもらっている。


「当たり前だろ。じゃなきゃ部活できねえし帰れねえし」


 岩井はといえば、野球部が暇になるたびこうして顔を出しにくる。そんなに練習を抜け出して大会に響かないのかと思うけど、他の高校が熱中症で死人を出したとかで、一時間の練習につき二十分休憩が義務付けられているらしい。


 窓辺から校庭を覗けば、青々と茂る木々の下、木陰で身体を休める野球部の姿があった。そばに生えているひまわりの黄色や青空も相まって、白いユニフォームは映えて見える。


「兄に会いたくない……」

「どうしてぇ、喧嘩しちゃったのぉ?」

「分かんない。私が一方的に兄を見てると苛々しただけ……お母さんにも八つ当たりしてしまった」

「通り魔かよ」


 岩井のストレートな言葉が心に突き刺さる。ゆかりちゃんに縋ると「よしよし……」と頭を撫でてくれた。


「どうして舞ちゃん苛々しちゃったのぉ?」

「わかんない。兄に彼女が出来るからかな」

「それは舞ちゃんが悪いよぅ」


 彼女のおそるおそるの声色がさらに心へ深く刺さった。胃が痛い。


「ゆかりちゃんのお兄ちゃん彼女できたときなんか嫌な感じしなかった?」

「私のお兄ちゃんに彼女できたことは一度もないけど、苛々はしないかなぁ。でも、舞ちゃんが苛々するのは仕方ないことだと思うよぉ」

「何で」

「だって舞ちゃん、お兄ちゃんと結婚したいって小学校の頃からずーっと言ってたもん。お兄ちゃんに彼女が出来たら舞ちゃんの夢が叶わなくなっちゃうよぉ」

「夢……」


 確かに私は小さい頃から兄のことが好きだった。でもそれは黒辺舞だからだ。この気持ちは漫画のシナリオによるもので、私が兄の未来を変えたいのは兄が殺人鬼になるのが嫌だから。


 でも、兄が殺人鬼になるのは嫌なのに、私は兄が姫ヶ崎さんと付き合うことを嫌だと思ってる。この矛盾は……。


「あ、お前の兄さんもう来てるぞ」

「え……?」


 窓のほうを見ると、兄は校門近くで立っていた。今日は勉強会はしないらしく兄一人だ。


「お兄さんに謝れるといいね」


 ゆかりちゃんが私を見て微笑む。岩井も「がんばれよ」と続けた。


「うん……行ってくる」


 私はいまだ自分の心がぐるぐると掴めないまま、その場を後にしたのだった。





「舞」


 兄のもとへ向かうと、足音で分かったのかすぐ振り返ってきた。そのまま言葉を交わすことなく兄は私に手を差し出してきて、私も無言でその手を取る。


 昨日はあんな感じの別れ方をしたけど、今朝も私は兄に送り届けられる形で登校した。お弁当も作ったし、会話がないこと以外は何も変わらない。


 八つ当たりをしたことは謝ったほうがいいと思う。でもどうして自分が苛々するのか分からないまま謝るのは嫌だとか、会話をしたくないとか、謝らなくてすむ理由ばかり探してしまう。


「来週のホームステイ……」


 兄がぼそりとつぶやく。それきり何も言葉を続けない。


 一昨日両親にしていた説明を盗み聞きしたところ、あっちでイルミネーションを見たり、牧場の見学をするそうだ。


 だから前日は幼児用の押し車を改造し、牛がイルミネーション風にライトアップするように輝く押し車で追い回すつもりだ。その為にも、早く謝らなければ。


 ぎゅっと兄と繋いでいないほうの手のひらを握りしめていると、兄が体勢を崩した。


「……、お兄ちゃん?」


 屈みこんだ兄は激しく咳き込み始めた。とりあえず背中をさすろうとするけど、兄は私の手をしっかり握っていてさすれず、向かい合うようにして空いてる手で背中をさする。


「お兄ちゃん大丈夫?」

「うん……、まぁ、風邪みたいな……? 寝てれば治るよ」


 そう言いながらも兄は苦しそうに咳き込む。顔色も悪いように思えて来た。しばらくさすって水筒を渡したりしていると、兄は口元に手を押さえて首を横に振った。


「帰ろ、舞。帰って休みたい……」


「うん、帰ろうお兄ちゃん」


 支えたいけど、兄は私の手をきつく握って離さない。私はせめて兄がふらつかないよう、その手をしっかり握り帰宅を急いだのだった。




本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




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