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○62日前



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




 六月を目前にしてもなお、兄の勉強会は相変わらず続いていた。テスト期間だけだと思っていたけど、どうやらテストが終わってもだらだらと続いている。勉強会のある日は兄は皆と帰って来るし、皆がいるから驚きの提供が出来ない。今週は兄が海外に行き三日間不在になるから余計焦ってしまう。


 だから私は兄と姫ヶ崎さんをくっつけることに尽力するしかない。


 そして今日も私は姫ヶ崎さんに「ちょっとジュース運ぶの、手伝ってもらえませんか?」と台所に呼び出した。


「待ってくださいね……常温のがあるので、氷も出せば……」


 姫ヶ崎さんは今、棚を漁るふりをする私の後ろに立っている。


 ジュースを切らしていることにして、このまま姫ヶ崎さんが兄と一緒にジュースを買って貰えるようにする算段だ。


 あとはリビングで「ジュース無かったんだけど、お兄ちゃん買ってきてくれない? ついでに私のアイスも!」と兄におねだりする我儘な妹を演じるだけでいい。「私今年受験だし、勉強あるから!」とゴリ押しで行こう。


「姫ヶ崎さん、すみません、ジュースないみたいで。ちょっと待っててください、お兄ちゃん呼んできますから!」


 そう言って、兄の部屋に向かおうとしたときだった。ふいに姫ヶ崎さんに腕を掴まれる。


「姫ヶ崎さん?」

「わたし、わたしね、舞ちゃんのお兄さん、ううん、誠くんに告白しようと思うの」


 姫ヶ崎さんの言葉に自然と胸が苦しくなった。願ってもない機会だ。でも不思議なくらい心臓が痛い。私は動揺を悟られないように頷いた。


「頑張ってくださ……」

「応援してくれる?」


 言い終える前に切迫した様子の姫ヶ崎さんに問いかけられ、「勿論!」と念を押す。


 このまま上手くいってくれればいい。上手くいってくれれば。惨劇は起きないはずだし、兄は死なずに済む。だけど不思議と苦しい。


「お兄ちゃん、呼んできますね。ジュース、買ってきてもらわなきゃ」


 今、私はちゃんと言葉を話せているだろうか。良く分からない。足元がぐにゃぐにゃと歪んでいく気がしながら、私は兄の元へと向かったのだった。





 姫ヶ崎さんの告白宣言から数時間後のこと、私はベッドに転がり謎の苦しさに戸惑っていた。二人があの後どうなったかはわからない。兄と姫ヶ崎さんが家を出てから、私は自分の部屋に戻ってしまった。それから驚き提供のためにラジコンを改造したり、はとこから譲り受けた手押し車に取り付けていたモーターをさらに強くして過ごしていたけど、夕食を食べる気にもなれず引きこもっている。


 なんだろうこれ、罪悪感かな。クラスの花である姫ヶ崎さんを我が兄黒辺くんとくっつけてしまう罪悪感。


 いや本当に痛い、病気かもしれない。何か泣けてきたしすごく嫌だ。お腹も痛い。


 いい加減にしてほしい。ベッドでごろごろ転がっていると不意にノックの音が響いた。この規則正しい音は兄のものだ。返事もせずそのままベッドに潜っていると、扉が開く音がした。


 勝手に、入って来てる。


 もういいや寝てるふりだ。私は寝てる。ふて寝だ。


 ……いや何でふて寝なんてしなきゃいけないんだ。これは何寝だろう……?


 いいやとにかく私は寝てる。起こさないでほしい。


 じっとしていると兄の足音はやがて私の前で止まった。そのまま彼はブランケットの上から私の肩を掴んだようで、ぎゅっとした感触がする。


「舞、寝たふりしてても分かってるよ。呼吸の感じが違うから」


 ブランケット越しだから、くぐもって聞こえる兄の声。だからなのかいつもと違うように聞こえる。


「何の用?」

「今日、姫ヶ崎に告白された」

「で?」


 別に嬉しいことだしいいことなのに、刺々しい口調になってしまう。


「……どう思う?」

「別に」

「聞こえない」


 言い返すと、どすっと背中に衝撃を感じた。慌ててブランケットを抜け出そうとすると兄が上にのっかっていて、顔が間近にあった。


「は? なに?」

「聞こえないから、傍に行こうと思って」

「意味わかんないよ。重いよどいてよ」

「まだ答えもらってないけど」

「ンアアアアア!」


 大声を上げるとさすがの兄も鼓膜に効いたのか、「うるさ……」と体を離してきた。すかさず起き上がると兄はこちらを睨み付けている。


「なんで睨まれなきゃいけないの」

「舞が人の気持ち分からないからだよ」

「はぁ?」


 何で兄に人の気持ちがわからないなんて言われなきゃいけないんだ。分からないのは兄のほうだ。百人にアンケートとっても百とゼロで私が勝てる自信がある。


「もう意味分かんないし頭痛いから出てって、勉強あるし」

「教えるよ」

「いーい!」


 私は立ち上がり、兄を追い出す。まだ何か言おうとしていたけれど威嚇した。下からお母さんの怒る声が聞こえてきて、「知らない!」と八つ当たりしながら扉を閉じたのだった。





本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


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RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




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