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●67日前

 姫ヶ崎はあっと言う間に俺への好意を包み隠さなくなった。頃合いを見計らって勉強会を開き、奴を含めたクラスメイトを家に呼んだ。


 俺と姫ヶ崎が一緒に居るところを舞に見せ、兄が他の人間や自分ではない異性と親しくしているところを認識させる。兄は紛れもない男であると見せて教え込む。


 でもクラスメイトに対しては、俺が姫ヶ崎に好意があるという認識にならないよう注意した。奴が邪魔になった時消すには、その印象が不要になるからだ。


 一方姫ヶ崎には、舞と俺が血が繋がっていないことを強調し、舞への嫉妬を煽り競争意識を高めた。


 結果、姫ヶ崎は餌としてよく機能した。勉強会で他のクラスメイトの前だろうが関係なく、俺に対して態度や発言、あらゆる手で好意を示す。


 勿論、舞の前でも。


 しかし舞がそれを認識しなくては意味が無い。菓子や食器を舞に頼み、接触の機会を設けたがむしろ舞は俺と姫ヶ崎の応援をするようだった。


 俺が姫ヶ崎と共に飲み物を買うよう仕向けてきたり、二人で話す機会を作ってきたり、本人はさりげなくやっているらしいが俺には丸わかりだった。計画は失敗した。


 それに家に来たクラスメイトたちは、舞を可愛い可愛いと言いもてはやす。


 連絡先を俺に尋ねてくる人間もいたし、中には内密に舞に連絡を取ろうとする人間もいた。


 舞を外出に誘う人間も出て来た。以前ならこんな失敗はしなかったはずだ。考えてもみれば舞の発想は独特なもの、一方の俺は一般的な思考パターンを当て嵌めて計画を練った。失敗するのも無理はない。そのことに失敗をしてから気付いた。どこまで俺は愚かになったのだろうと思う。


 昔であったなら、舞を好きになる前であったなら、自分の滑稽さを嗤っていたかもしれない。


「俺、黒辺の妹ちゃんのこと貰っていい?」


 退屈な授業が終わり、教師に言われたノートを回収していくと、同じクラスの長谷が軽い口調で話しかけてきた。


「……どういう意味?」

「いや、なんつうかさぁ。妹ちゃん可愛いなーって思って。でも友達の妹じゃん? 一応断りは貰っておこうかなって」


 高校に入って、早退や妹の挙動を気にしても不審がられないよう、重度の虚弱体質であると周りに印象付けていた。念のため舞が高校に入って低い評価を受けないよう、家にいることが多かったから落ち着きがないことも多々あるとも重ねて。


「妹ちゃん、可愛いし。守ってやりたいっていうか」


 そう、惚けた様に笑う顔を見て、一気に身体が凍り付く感覚がした。


 顔の事なのか、挙動のことなのか分からない。年下が好きなのかもしれない。でも、人間が生まれて間もない赤子に言うような「可愛い」とは確実に系統が異なることはよくわかった。


 でもどんな意図であれ関係ない。消そうと思った。



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