●126日前
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
水曜日の夜、母親のほうは実家の祖父の介護に行き、父親は仕事でいない。だから毎晩早めに夕食を取り風呂に入って、そのあとは舞との勉強の時間だ。
「歴史さぁ、なんか上手く覚える方法ない?」
「ないよ。でも出題はパターン化されてるから、下手に全部覚えようとするより問題解いてくほうが効率的だと思う」
俺と机を挟んで向かい側に座る舞は、「うえええ」と嫌そうな顔をした。風呂上りだから髪は僅かに濡れていて、頬も僅かに紅潮している。
俺が異常だから妹と呼ばれる存在に対して欲を持ったのか。女として見ているからなのか。それも区別は出来ていないし、舞の何がそこまで俺を惹きつけるのか分からないままだ。
「所々古文と繋がってるから、きついなら導入代わりに古文からする?」
「そうして……」
舞がそばに置いていた教科書の中から古文の資料集を取り出した。顔を盗み見るけど、特に何も思わない。
一般的に見れば可愛らしい顔立ちをしているのだろう。周囲の人間はそう評価しているし。でも俺には人の顔なんて個体を区別する識別番号にしか見えないから、そこに惹かれていないと思う。潰れた顔を想像するけど、執着は変わらない。
なら、どこかこの存在に有益さを感じているのだろうか。自分の気持ちのはずだ。自分の考えのはずだ。それなのに舞への執着と欲に至る何かを探そうとすると、途端に迷い分からなくなる。
「なんだろ、こんなにも歴史に飽きるのって参考書がいけないのかな」
「いや舞が悪いよ。あんまり歴史好きじゃないでしょ」
「うん……数学とか科学やってるほうが楽しい……歴史の代わりに受験家庭科とかになってくんないかなぁ……」
舞は未だ奇行を続けている。突然家のフライパンで火柱をあげたり、自分でも無意味だと理解しているようなことをしたり、食べ物の着ぐるみを着たりする。
一瞬俺が舞に抱くこの欲は舞の奇行故かと思ったけど、舞がただ普通に過ごしていても気になった。
俺は舞と性的な繋がりを求めているのだろうか。ただ人間の本能として。
「お兄ちゃんってどうやって歴史覚えてるの?」
「反復練習しかないよ。舞が数学の問題解けるまでやるみたいな、覚えるまで繰り返すしかない」
そう言って、何かいい問題はないかと俺は参考書をめくった。その瞬間ぴりっと指先に何かが走る。一筋の赤が入り血が滴ったことで、ようやく紙で指を切ったのだと理解した。
「うわ、めっちゃ切れてるじゃん! 大変!」
舞が叫ぶ。
怪我をしたのはいつぶりだろう。転ぶなんてこと今までなかったし、試しに針を刺して以降、自分の皮膚から血が出たところなんて見たことがない。
「なにぼーっとしてるのお兄ちゃん! 血が出てるよ!」
いつの間にか舞が救急箱片手に目の前に来ていた。そのまま俺の指にティッシュを当てて、絆創膏をはりつける。
その顔は切なげで、悲しそうだ。
自分が痛いわけじゃないのに、まるで自分が痛いような顔をする舞。どうすれば自分が痛くないのにそんな顔が出来るのか、俺は一切理解できない。俺は舞が指を切ってもそんな感情は抱けない。
前までは舞の感情表現に軽蔑すら抱いていたけど、今はただ漠然と疑念を感じる。しばらく観察していると、舞は手当てを終えて俺から手を離した。
「早く良くなりますように」
舞は笑う。怪我に笑顔を向ける行為に意味なんてない。
笑ったところで傷の治りが早くなる訳がない。無駄な行為。意味の無い行為。ただの自己満足。理解が出来ない。
それなのに、ただ好きだと思った。
ずっと腹の中で巣食っていた感情に、綺麗に名前がついていく。鮮やかに、色が付く。
俺は舞のことを好きだ。たぶん、俺が舞に向けている執着と欲の核に恋情がある。漠然とそう気付いた。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




