○140日前
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
トン、トンと規則正しく朝食用のトマトを切っていく。テーブルにはトーストや焼いたベーコン、スクランブルエッグが並び、後はサラダの上にこの飾り用トマトをのせるだけでいい。
あれから一夜明けた私はろくに眠ることも出来ず、さらに兄にどんな朝食を作っていいかわからず、なんの驚きもないご飯を作ってしまった。
休みの日はお弁当が作れないから、朝食を作らせてほしいと両親に言って、兄の分だけは驚きを意識したものだったけど今日は全員同じ朝食だ。
昨日まではおかしなものを作っていたし、今日普通の朝ご飯を作ったことで驚かせることが出来るかもしれない。でも、果たして意味があるのかと思ってもしまう。
ぼんやりと切り終わったトマトを見つめていると、包丁を握る私の手の上に自分ではない手が重なった。顔を上げると兄がじっと私を見ている。
「おはよ。何かあった?」
兄は、私が轢かれてからよく触れてくるようになった。手首の脈のあたりだったり、頬だったり。生存を確認されている手つきは、将来殺すという予告なのか、愛情表現なのか。
「別に何もないよ」
「言いなよ、言うまでここ動かないから」
深淵のような兄の瞳がほんの少しだけ揺れているようにも見える。言うまでここを動かないと言う兄の言葉はきっと本当だ。冗談の雰囲気でもないし。
「……昨日の、夜」
「ん?」
「何か捨ててた、ね」
恐る恐る、昨夜の兄の行動について触れる。手紙と言うのは何となく憚られた。私の指摘に兄が動じている様子はない。それどころか少しだけ拍子抜けしたような素振りを見せる。
「ああ、卒業式の? もらったんだけどなんか怖くない? 最後だからって悪口とか書かれたら嫌だなって思って、怖くて捨てちゃった」
「怖い?」
「うん。会長なんてしてたし、上から目線でうざいとか思われてそうだしね」
僅かに馬鹿にした声色で兄は笑う。決してあの時の目つきは中傷に怯えている目つきじゃなかった。怯えさせる目つきだった。それに兄にそんな悪意を持ったような行動をする人はいないと思うし、どちらかというと……逆では。
「そんな悪いことする人、いないと思うよ」
「舞にとってはそうじゃない? ……今日の朝ごはんなに?」
「爆発する、だから離れてて」
あえて神妙な面持ちで伝えると、兄は目を細めながら私の頭に手を伸ばした。
「……いつもありがとうね、舞」
頭から髪に触れて、まるで慈しむように笑うと兄はこちらに背を向けソファへ座ろうとする。その背中はいつも見慣れた兄そのものだ。血に染まってもいないし、ナイフも何も持ってない。
……今は。
私はポケットにしまっていたシュシュを取り出し、結んでいた髪につけた。
「シュシュ!」
兄に呼びかける。さして驚く様子もなく振り向いた彼の目は、相変わらず深い闇を感じる目つきだ。
でもじっと見ていると心なしか前より光があるような気も、しなくはない。
「つけた! ありがと!」
兄にシュシュを見せるように首を曲げると、兄は無言でこちらに近づいてきた。とっさに身構えると肩に手を置かれる。
「え、なに」
「ちょっと曲がってる」
いつの間にか、視界いっぱいに兄の顔が広がった。真っ暗な瞳にほんの少しだけ私の間抜け顔が映り込む。
「出来た」
兄の手が髪から離れる。その瞬間ふわりと兄の石鹸のような清潔な匂いを感じて心臓が跳ねた。
「朝ごはん、楽しみにしてるね」
「ま、任された」
兄は私からさっと体を離しソファに座る。私は目を瞬いてからまな板に向かった。
もしも私が兄に怯え予想外の提供をやめてしまったら、本当に恐ろしい惨劇を迎えることになる。
もとよりクラスメイト同士の殺し合いを見たくて、そして実行してしまう人だ。
簡単に考えを改めることはしない。まだ時間はある。足を止めてる暇はない。私は兄の惨劇を回避する義務がある。そして、兄の命を救う。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
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漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
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