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○156日前



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




 黒辺誠という人間は、おおむね万物を見下していると言っていい。生まれた時から漠然と他人と自分に大きな隔たりがあると感じ、感情が薄く仕方なく周囲に合わせて感情表現をして、優等生に擬態している。


 だから彼は人に友情でも家族愛でも、ましてや恋愛感情なんて抱かないし、損得以外で人と仲良くする動機はない。家族愛も同じで妹である黒辺舞と仲良くするのは、そうすることで「優しいお兄ちゃん」と思われるからだ。なのに、


「舞、卒業式のスピーチ、これでいいかな」


 卒業式の予行練習真っ只中。休憩時間に兄はわざわざ二年生の座席までやってきて、私にスピーチへの意見を聞いてきた。


「いいんじゃない」

「本当に? なんかすごく適当な返事じゃない?」


 兄はそう言って私の顔を覗き込んだ。左手にはスピーチの台本を、右手には私の腕をつかんでいる。周囲の反応はといえば、ゆかりちゃんや岩井は怪訝な目でこちらを見るものの、他の二年生や三年生は「またやってる」といった風だ。


 私が事故に遭ってもう三か月が経つけれど、事故に遭ってからというもの、兄は私を露骨に監視するようになった。


 もともと兄は私が池に八度飛び込んだことで両親から依頼され、私をよく見るよう言われていた。でも基本的に両親のいないところでは完全放置だった。


 しかし、本当に事故以降どこにいても私の腕を掴むようになったのだ。


 小さい子がお母さんにしがみつく……とかならわかるけど、相手は中三だし年上だし兄だ。どことなく緊張するし複雑な気分になる。


「適当な返事じゃないよ。ちゃんとスピーチ原稿も読んだし」

「本当? 舞最近変だよ」


 私の言葉に兄は怪訝な顔で私を見た。


 変なのは兄だと言ってしまいたい。それに異常行動はこれだけじゃない。最近は学校だって、今まで一緒に帰るときは適当に待ち合わせていたのに教室に迎えに来るようになった。休日だって私が兄に過ごし方を聞いて合わせる形が、兄が金曜日に「買い物ある?」「ないよ」「そう」など予定を確認してくる。


 もしかしたら、猫が轢かれるどころか人間が轢かれるところを見せてしまって、兄の性癖を悪化させてしまったかもしれない。


 でも、兄はもうすぐ卒業だからもちろんのこと、在校生である私も学期が終わるから先週から午前授業が始まり、お弁当作りが出来ない。挙句の果てに兄はささっとデスゲーム開催高校に合格した。


 こうなったらデスゲーム開催期間中、兄を監禁するしかないのかもしれない。それに、卒業式の日は兄から目を離さないようにしないと。事故後の兄のこの状態は、出血ゼロとはいえど人が跳ね飛ばされた瞬間を見た興奮から来るかもしれないし、漫画のシナリオより性癖が悪化している可能性がある。


「ちょっと、また舞ぼーっとしてない?」


 不満げな声がして振り返ると、ほっぺたを突かれた。兄が人差し指で私の頬を刺している。見上げるとこちらを何とも言えないような目で、とっさに指を齧ろうとしたが即座に躱された。


「人の頬刺しといてなんで避けるの」

「だって舞が俺の話、聞いてくれないから」


 拗ねたように言われ、兄を見返す。


 暫く兄に一方的に構われているとやがてチャイムが鳴った。卒業生の座席は出席番号順で私は岩井とゆかりちゃんに挟まる形だ。兄を見送ってから席に戻ると、隣に座る岩井が私を肘でつついてきた。


「なに」

「お前が事故に遭ってから、なんか態度変わってないか。あのひと」

「まぁ……」


 岩井は兄の変化に興味津々だ。でも周囲は違う。彼やゆかりちゃん以外は、驚くほど兄の変化に気付いていなかった。


 車に撥ねられて入院する人なんて早々いないし、だからこそそんな人にどう接するかの最適解を知ってる人が殆どいないことも原因としてある。私の担任の先生もクラスメイト達も、兄が私を教室まで迎えにきたり、行き帰りの道で腕を掴んで歩いているところを見ても疑問に思う素振りすら見せなかった。


 さっきだって、兄がわざわざ二年のところに来るなんてこと三か月前まではなかったのに、「あ、お兄ちゃん来てるよー」と当然のように呼びかけられたくらいだ。怖い。


 兄は一体何がしたいのだろう。事故に遭ってから、私に対して好意的に接するようになった……気がする。いや別に前から深層心理はともかくとして普通に優しくしてはくれてたけど、今は必要以上に接してくる気がしてならない。


「なんかあったのか、あの人」


 岩井が怪訝な顔をする。私は「知らない」とだけ答えて、前を見据えたのだった。




本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

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