●253日前
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
妹が危険を冒すたびに、次は死んでいくところが見られるかもしれないと思っていた。ただベランダから命綱をつけて飛ぶだけの行為が何かしら回転を帯びていたり、歌に合わせていたりして過激になっていく様を見て、期待をしていた。
次こそ綱が切れて人の頭が潰れるところが見られるかもしれないと。
空気入れで風船を何十個も膨らまし風船を背中にくくりつけ、腕を筋肉痛で腫らしながら落ちる姿を見て、腕が折れる姿を想像した。
ペットボトルでロケットを作り、それを背につけ川向こうへ飛ぼうとした時は、川に落ちれば死んでも特にぱっとしないだろうと興味を抱けなかった。
別に死んでほしくはないけど、死ぬ姿が見られるのなら見せてほしい。そんな感情で妹の生死を考えていたけど、どうやら違ったようだ。
『今日舞のこと見てくれてありがとう。お兄ちゃんもしっかり休まなきゃだめだよ』
母親から送られてきたメッセージを見てため息を吐く。舞がトラックに轢かれてもう二日も経つ。怪我も殆どないかすり傷程度だったのに、舞は一向に目を覚ます気配がなかった。
普段なら気の利いた言葉を返す。義理といえど母親に適度に好かれてデメリットはない。でもなんとなく『わかった』とだけ打ってスマホをベッドに放り投げた。
窓の外はもう暗く、時計は深夜の時間をさしている。父親は仕事で、母親は病院に入院する舞の付き添いをしている。俺は父親が帰るのを待つより動いたほうが早いと考え、一階へと降りていった。
事件の日も俺は期待していた。目の前を白猫が横切り交差点を通過しようとしたとき、潰れてぐちゃぐちゃになる瞬間が見られるだろうと浮き立つ思いだった。
きっと体液が溢れ出て、その毛を一気に染め上げるだろう。白地に鮮明な赤はとても映えるはずだ。腹の底がふつふつと湧き上がるような静かな興奮を覚えていて、ただただ猫の存在が失われることを喜んでいた。
なのに轢かれたのは舞だった。
もうそれから三日が経ち、今はこうして家の中の階段を降りているというのに、頭の中からあの時の光景が消えていかない。
交差点の中央へまっすぐ進む背中。舞へと延ばした手が空を切る。トラックに撥ねられ宙を舞う身体。呼びかけても答えず、額ににじむ赤。
こうして階段を下りる間にも思い出して、俺の足は止まった。意味なんてないのに首を横に振って俺は玄関を出る。
舞の行動が理解できなかった。でも今は、俺自身すら理解できていない。それが酷く恐ろしいことのように思えて、俺は庭を目指す足を早める。
舞が車に撥ねられた時どうしようもなく不快だった。舞が轢かれて嫌だと思った。
嫌なのは舞が死ぬことなのか、轢かれることなのかよく分からない。初めて感じた精神的な痛みが酷く恐ろしい。自分がどうしようもなく変質した気がして、痛くて、痛くて、気持ち悪い。
俺は必死に縁側の下に隠しているコレクションに手を伸ばす。いっそ一思いにすべて殺せば胸はすっとするだろう。
そう考えて箱を開ける。箱の中では、釘を刺されながらもかろうじて生きているものや、互いを食らって飢えを凌ごうとするもの、沢山の虫が生だけを求め、ひしめいていた。
今までは箱の中身を見ると倦怠感も薄れ、面倒なことへの疲労も薄れていっていた。なのに今全く落ち着かない。痛みも止まらない。
舞はトラックに跳ね飛ばされる直前こちらを向いた。あのあどけない、何も分かっていない顔が瞼にこびりついて離れない。
落下したあと、顔は真っ青なのに、額に滲んだ鮮明な赤がいつまでも残っている。
大きなクラクションと、舞を撥ねたときの鈍くて身体の肉や骨を壊してしまうような、あの音だけが繰り返されて、身体の中を侵食されていくようだ。
そんな思考を散らしたくて、箱に向かって拳を叩きつけていく。手がどんどん濡れていき、生き物たちが潰れていく。いつもなら興奮を覚えていたはずなのに、原型を失っていくたびに身体が冷えて、舞が轢かれた時の記憶が鮮明になっていく錯覚すら覚えた。
今までこんなことはなかった。理解できない。気持ちが悪い。心臓が痛い。気が済むまで潰せばこの痛みは消えるのだろうか。分からない。気が済むのがいつなのかも、どうしてこうも胸が痛むのかも分からない。そのまま俺は何度も何度も拳を振り下ろしていた。
それから翌日のことだ。舞はあっさりと帰ってきた。帰ってきた舞は元気そうに笑っていて、優しく労わることが最適解にも関わらず、俺は得体の知れない不快さに初めて舞を怒鳴った。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




