○249日前
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
漫画では七月二十八日に殺され、ミキサーにかけられた感じになって出てくる役割が与えられた黒辺舞。だから私はトラックに跳ね飛ばされたとしても、その役割を全うできるよう無傷だったのかもしれない。
そう疑わざるをえないほど、私はお医者さんもびっくりするほど異常なしの検査結果を出して退院した。お母さん的には心配だからもっと入院してほしかったようだけど、骨折もなければ脳に異常はない人間をずっと病院に置いておくわけにもいかず、私は事故から三日後の昼に退院の運びとなった。
「舞、学校は一応来週いっぱいお休みしておきなさい。退院したからと言って、家に帰って暴れないこと」
車を運転するお母さんがこちらに振り帰る。今日は土曜日だから、来週の月曜日から金曜日までまるまるお休みだ。一昨日ゆかりちゃんや岩井が来てくれて、その時に休んだ分のノートを見せてくれたから授業に不安はないけど、兄には大きな不安がある。
お母さん曰く私の目が覚めるまでは病室にいたらしいけど、目が覚めてからは安心して受験勉強に励んでいるらしいから、お兄ちゃんと最後に会話したのは事故に遭う直前。この一週間驚きの提供はできていない。
まぁ、猫の死は阻止した。そしてその代わりにトラックにふっ飛ばされた私は奇跡の生還。血も出ていないしこれは驚きとしか言えないはずだ。
九死に一生の経験をしたわけだし、三十八人殺すタイプの人間が救うタイプの人間に変わっていてもおかしくないはず。
兄との再会を楽しみにしていると、やがて車の車窓にはいつもの見慣れた景色が映り始めた。暫くして、車のスピードは徐々に落ち、とうとう止まった。
「着いたわ。荷物の片づけはお母さんが全部するから、先に家に入ってなさい」
「はーい!」
私はお母さんから鍵を受け取って、家の扉を開けた。このまま「お兄ちゃんただいま」と大きな声を出してもつまらないだろうから、チャイムを連打して。
「お兄ちゃん! ただいま! ただいまただいまただいまー!!」
私の声がチャイムにかき消されたか、その逆か。近所迷惑にならないよう気にしつつ兄を呼ぶと、とん、とん、と規則的に階段を下りる音が聞こえてきた。
二階の踊り場のあたりから、すらっとした兄の足が見えてくる。やがて俯きがちの兄がこちらへとやってきた。
「検査どこも異常なしだって! 無事! 何事もなく帰ってきまし……」
顔を上げた兄の顔を見て、呼吸が止まりそうになった。まっすぐ流された前髪の隙間からのぞく瞳は、ぞっとするほど表情の感じられない。漫画でも見たことのない目つきに背筋が凍りついた。
「……どうして」
無機質な声が玄関に響く。そんなに声を大きく出していないはずなのに、やけに鼓膜に残った。「何が」と問いかけると同時か、お兄ちゃんが私の手首を掴んだ。
「どうして笑ってる……?」
巣食われ蝕まれそうな真っ暗な瞳は、確かに私を捕らえている。瞬間的に察した。今まで兄は私を景色同然で認識していた。でも今は私を認識している。殺そうとしているのか、一瞬でも死に近くなったからか、どちらなのかは分からない。
「……お兄ちゃん」
私の手首を掴む手に触れ、恐る恐る呼びかけると兄ははっとした。眉間に皺を寄せ、私を恐れるみたいに後ずさる。
「お兄ちゃん?」
「……何でもない。もう寝な。退院したって言ったって、車には轢かれたんだから」
兄の顔はいつも通りのなんの興味もなさそうな顔に戻っていく。そして踵を返し去って行った。
今のは完全に何かしらの変化があったのではないだろうか。でも、明るい変化では無かったような……。
私はそのまま、車から荷物を運んできたお母さんが声をかけてくるまで、家の中に入ることもできず玄関に立ち尽くしていたのだった。
その夜、漠然と感じていた嫌な予感は的中した。今まで兄は虫コレクションをどうにかするとき絶対に足音を立てないよう注意していたはずなのに、下手したらお母さんやお父さんが起きるくらい足早に、音を隠すことなく庭に向かっていったのだ。
だから私は窓に張り付くようにして兄の様子を窺っているけれど、一階と二階の距離は思った以上に開いていて、何をしているかは分からない。
じっと縁側で蹲り、時折腕を動かしているようにも見える。目を凝らしている間に兄は立ち上がってまた家へと戻った。一体、何をしているのか……。
兄が部屋に戻るのを待ち、念のため時間を置いた私は確認のために一階に降りた。今までだったら、兄は絶対両親に自分の趣味がばれないよう、足音を殺していた。
でも今日は階段を下りる音も露骨に聞こえていたし、庭につながる窓の開閉だって響いてきたくらいだ。不思議に思って縁側に向かい、兄のコレクションへと手を伸ばす。
最近……といっても事故が起きるまでの間は、猫が轢かれる日が近いと言うこともありほぼ毎日兄のコレクションの様子を見ていた。その時と比べて、減っていたらいいなと思っていたけどあの様子だと増えている可能性もある……。
「……よっと」
私は意を決して箱を開き――、まったく想像していなかった光景に、頭が真っ白になった。
先週までは、均等に死体が並べられていた。殺したことを記録するみたいに、そして兄の神経質さを表すみたいに。
なのに、今は。
生き物たちは全部の憎しみを受ける如く、箱ごとぐちゃぐちゃに潰されていたのだった。
本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。
『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』
KADOKAWA フロースコミック様にて
漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生
コミカライズ2025/08/29日より開始です。
デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。
そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)
RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。
 




