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○256日前



本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




 過去におじいちゃんに驚かされたやり方を真似してみたけれど駄目だった私は、次の作戦を決行することにした。


 時刻は夜十時。お母さんやお父さんはぐっすり眠っているけど、兄はおそらく起きているはずだ。


 私はそっと寝室から抜け出して、ホームセンターで購入したあるものを取り出す。そして兄のいる部屋の縁側に立った。障子を少しずつ開けてると、電気は消されているけど兄はスマホを眺めているところだった。


「チャチャチャオニイチャーン」


 高い声で呼びかけても、兄は一切動じない。


「どうしたの? 眠れない?」

「ううん、いいもの見せてあげようと思って」


 外気が入り込んで寒いだろうから、おじいちゃんに借りた毛布を寝ている兄の布団にかける。そして庭に戻って、用意したものをセッティングした。借りていたマッチ棒で着火すると、用意していたもの――ロケット花火は一斉に空へと打ちあがる。


「……なに?」


 ぱん、ぱんと音を響かせ花火はどんどん空に昇る。雪と花火なんて見たことがないだろうと思った私は、ホームセンターに連れて行ってもらい花火を購入した。


 家では近所の人に迷惑がかかるからできないけれど、この辺りは家同士の距離がかなり離れている。ここでしか出来ないし、兄はたぶん花火より人の死体のほうに美を感じるだろうけど、何か燃えてる瞬間は好きだろう。


「花火だよ! ほら、いっぱい!」


 私は次々と花火を点火した。色を変えた光が雨みたいに降り注いで輝いていく。降り積もる雪に火花が落ちる光景はとてもきれいだ。兄は物が燃えてる様子に惹かれてか、毛布を肩にかけながら縁側に立った。これはいい反応かもしれない。


「すごいね、綺麗だ」

「たくさん燃えてるでしょ!」

「燃えてるって……」


 兄は苦笑しているけれど、悪くない反応だ。少し体験してもらうのもいいかもしれない。私は駄目押しのつもりですすき花火を一つ手に取り、兄に渡した。


「お兄ちゃんもやってみなよ」

「俺も?」

「うん! ほら、点けるよ!」


 兄は弾けていく花火をじっと見つめているし、興味は無さそう……でもない? 微妙な感じだ。でも今までの反応と比べればましだと思う。


「ふふふ」

「なに笑ってるの?」

「さて、どうしてでしょう」


 そう言って笑うと兄はこちらに花火を向けてきた。


「ちょっと! あぶな!? 嘘でしょ? は? 正気!?」


 絶対にやっちゃいけない行為だ。花火の説明書にだって書いてある。抗議すると「あてはしないよ」と兄は笑った。絶対あてる気だったと思う。駄目だ兄にすすき花火なんて渡したら。火葬込みでやられてしまう。


「放火魔はみんなそう言うよ。こわ、狂ってるよ。もう駄目、すすき花火禁止。線香花火ね」


 殺傷性の少なそうな線香花火をとって、私は兄に差し出した。小さな提灯みたいな炎がちりちりと音を立てて弾けている。見ているうちにやりたくなった私は、ロケット花火に着火するのを中断して私も線香花火を手に取った。


「ねぇ、どっちが先に落ちるか競争しようよ」

「無理がない? 俺もうすぐ落ちるけど」


 そう言いつつも満更でもなさそうだ。「落ちた方が何でも言うこと一回聞くってことで!」との私の言葉に渋々頷いている。


「お兄ちゃん勝ったらなにお願いするの?」

「なんだろう。池に飛び込まない……かな」

「最近は飛び込んでないじゃん」


 冬で池が凍ったこともあって池には物理的に飛び込めないのもあるけど、兄は飽きている。池飛び込みはそのあと身体を洗ったりして時間がとられるし、効率が悪いからは最近は全くしていない。


「じゃあ舞が勝ったらどうするの」

「お兄ちゃんを一日自由にする券をもらう」


 そして兄をデスゲーム開催の日にどこかに連れていくかする。端的に言えば誘拐だ。あんまり暴力的な手段は使いたくないけど、でもいざとなったらする。


「それずるくない?」

「ずるくないよ、あっうそっ」


 返事をしている間にぽとりと私の花火が落ちてしまった。明らかに兄のほうが先に着火していたはずなのに。呆然としていると兄がこちらをしたり顔で見てきた。


「何にしようかな、お願い」

「私に出来ることにして。お金せびるとかはなしだからね」

「わかってるよ。何しようかなぁ」


 兄はそう言って考え込むそぶりを見せる。たぶんだけど私に期待をしないし、そもそも人を思い通りにすることはライフワークみたいな人だからぱっと思いつくものはないのだろう。そう考えると寂しい気もするけれど……。


「まぁ、思いついたらでいいよ。有効期限は来年でも再来年でもいいから」

「そう?」


 兄は私の言葉に「なら思いついたらにするね」とほほ笑んだ。その笑みは相変わらず底知れないものを感じる。


 でもなんとか驚きを与え兄を変えて、私は兄と来年や再来年を迎えたい。おじいちゃんを安心させるためにも。固く決意をしながら、私は兄とともに夜空を見上げたのだった。





本作のコミカライズを担当してくださったぺぷ先生と新しいコミカライズがスタートしますのでご連絡です。

『愛され聖女は闇落ち悪役を救いたい』

KADOKAWA フロースコミック様にて

漫画/ぺぷ先生 キャラクター原案/春野薫久先生

コミカライズ2025/08/29日より開始です。




デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した。小説版にはない二人のその後も収録したコミック最終巻⑥巻が発売中です。


そして本作が韓国のRIDIさん(電子ストアサイトです。国内でいうシーモアさんやピッコマさんです)

RIDIAWARD2024(2024年のお祭り)の次に来るマンガ賞を受賞しました。ありがとうございます。




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