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オークの子供


 ホーンラビットやスライム、たまにゴブリンなんかと遭遇するけど全て草原を突き抜けて森に入る。

 もちろん素材は無駄には出来ないから全部回収している。


 ほんの少しだけ寄り道にったけど夕方には森の入り口に到着した。


「よし、今日はこの辺りで野営して明日朝一番に森に入ろう。

シロー君道具を」


 僕は無限収納から預かっていた野営に必要な道具を取り出す。


「身軽に動けて必要な物はちゃんと持ってこれる。

ボックス持ちは便利ねぇ~」


「そうだね。

シロー君には感謝しないと」


「アハハ……、今出来るのはこういうことしかないから……。

助けになってるなら嬉しいよ」


 皆はテキパキと準備を終え、焚き火をし料理の準備を始める。


「シロー君、昼間捕まえたホーンラビットを貰えるかな」


「どうぞ~」


 無限収納から狩った4匹を取り出すと、エルマンさえとリナさんは手際よく皮をはぎ解体していく。

 それを焚き火で焼いていくと香ばしい匂いが辺りに広がった。


 僕はその匂いを嗅いでお腹が鳴る。

 セレナさんは近くでその音を聞いてクスクス笑う。


「もうすぐ焼けますから待っててくださいね」


 母性溢れる雰囲気で肉の焼き加減を見ている。


 そして、焼き上がった肉を各々食べはじめ、僕は洗った葉っぱの上に乗せて肉を頬張る。


「おいしい!!

もっと獣みたいな臭味があるかと思ったけど全然そんなことないんだね」


 そう言って皆を見るとエルマンは肉を食いながら、セレナさんとリナさんは興味津々といった様子で俺を見ていた。


「「かわいい!!」」


 女性二人が何やら騒ぎ始める。

 キャイキャイと俺の食べる姿を見て楽しんでいるが楽しいもんだろうか?

 僕とエルマンは不思議に思い首を傾げる。


 お腹いっぱいまで食べてぽっこりしたお腹を擦る。


「ゲプッ」


 殆ど9割残っている肉の横で座っていると、僕の食べ終えた肉をエルマンさんが摘み上げ口に運んだ。


「せっかく頂いた肉ですからね。

ホーンラビットに感謝としてしっかり食べてあげないと」


 そりゃそうだ、と頷く。

 皆は生活魔法が使えるから各々自分にクリーンをかけて寛いでいると、森の方からガサガサと葉が揺れる音がした。

 三人は焚き火で照らされているお互いの顔を見て静かに頷き武器を取る。


 草を掻き分け出て来たのはオークだ。

 それも子供のようで体が小さい。


 オークの子供は僕達に気がついているようで、よろよろと近づいてくる。


「様子がおかしいな」


 エルマンさんはそう言って注意深く観察するが剣は鞘から抜いたままオークの子供に向けている。


 リナさんは短剣を抜き同じく向けている。


『た……助けて……

トロールが……襲ってきた……』


「え!?」


 オークの子供の言葉に驚いてしまった。


 今でも倒れそうなその子は繰り返し俺達に助けを求めている。


 エルマンさん達はその様子に怪訝な顔をしている。


「鳴いてるだけで襲って来ることも逃げる素振りもないな……」


「そうだね……」


 困惑する三人に僕はオークの子供が言っていた事を教える。


「トロールが出てオークの村が襲われたみたいです。

その子か助けを求めてるけど……」


「「「え!?」」」


 三人は驚いた顔をして僕を見る。


「あのオークの言ってる事が分かるんですか!?」


「え?……うん。

確かにそう言ってたけど……」


 三人は困惑した顔でお互いのかを見合わせる。


 僕は傷だらけで必死に逃げてきて疲労が溜まっているだろう、今にも倒れそうなオークの子供にヒールをかけた。


 僕の行動に再度三人は驚き更に困惑している。


「な、何をしてるのかな?シロー君……」


「助けてって言ってたからとりあえず話を聞こうかなって思って……」


 子供のオークは僕が傷を治したもんだから僕の方に近寄り必死に助けてと訴えてくる。


「し、シロー君、そのオークの子供はなんて言ってるんですか?」


「え~っと、さっき皆でご飯を食べていたらいきなり大きな音がして、外を見に行ったらトロールが三体居て、村に入ってきて暴れ始めた、て言ってますね」


 にわかには信じられないって表情でエルマンさんは子オークを見る。


「ほ、本当なんですか?」


 エルマンさんが子オークに尋ねるが、子オークは何を言ってるからわからないといった感じで首を傾げている。


「本当なのか?って聞いてるんだよ」


 そう教えると首をブンブンと上下に振る。

 どうやら僕の言う事は理解出来るみたいだ。


 三人は本当に困惑していて、集まってコソコソと話し始める。

 僕はとりあえずトロールがどんな姿をしているのかを子オークに聞いて千里眼を試してみる。


目を瞑り集中して目に魔力を集め、教えてもらったトロールのイメージをすると、脳に映しだされる景色がぐんぐん変わる。


 見えてきた!


 脳内にトロールが三体、暴れながら森の外に向かって移動するのが見えてきた。

 しかも運の悪い事にちょうど僕達のいる方へだ。


「やばいいいい!!

トロールこっちに来ちゃってるよ~!!」


 僕の言葉に三人と子オークは動きを止めて僕の方を向く。


「え、……な、何を言ってるの?」


 エルマンさんがもう疲れているような顔で僕に聞く。

 僕が答える前に森の方からドン、バーン、バキッなど怪音が響いてどんどん大きくなっている。


 僕の言ってる事が本当だとわかると三人は直ぐ様フォーメーションを整え緊張した面持ちで現れるのを待つ。


 音はどんどんと近づき、遂にその姿を表す。


 醜い顔にでっぷりとした体で、丸太を掴んで僕達を見下ろしていた。


『ウマそうな餌だ』


『さっき居た豚美味かったなぁ~』


『早く食っちまおう!

腹が減った!!』


 三体のオークは僕達を餌として襲いかかってきた。


 丸太を叩きつけようと振りかぶる。


「ッ!!」


 エルマンは剣で丸太を受け止め、リナは得意な高速機動で二匹を引き付ける。


 僕は両手を前に出し魔法を発動する。


「う、ウインドボール!!」


 風の塊がエルマンと戦うトロールに向かい当たるが肌に当たって弾け、トロールは無傷だ。


 なんとかしなきゃと焦り、トロールの顔めがけてウインドボールを乱射する。


『な!?なんだ!?

邪魔だこの野郎!!』


 エルマンさんと戦うトロールそれを鬱陶しそうにし、先に僕を始末しようと動き出した所で隙が生まれ、エルマンさんはトロールの体を足場にし駆け上がり、首を滅多刺しにする。

 本当に一瞬の出来事で、トロールは抵抗も出来ずに倒れた。


 首から血を流してピクピク痙攣している。


 仲間が倒された事で他の二体は怒り狂い持っている丸太を我武者羅に振り回す。

 これにはエルマンさん達は近づけない。


 仕方なく後退する。


「ウインドスラッシュ!!」


 プチパニックで逃げ惑う俺を余所に、エルマンさんは冷静に魔法の攻撃をしてトロールを崩そうとしている。


『ちょこまかと動きやがって……』


『魔法が鬱陶しい!!』


 トロールは大してダメージを受けていないが相当イライラしているようだ。


 それなら……。


「リーフカッター!!」


 無数の葉っぱが空に舞、トロールに向かって行き切り込む。


 一体のトロールが注意力散漫になり、隙が生まれた所でリナさんが気配を消してトロールの背後に忍び寄る。


 払っても払っても鬱陶しく舞う葉っぱに気を取られ、前と背で挟み撃ちにされているのに気が付かないトロールと、未だ暴走し丸太を振り回して周りが見えなくなっているトロール。


 エルマンさんとリナさんの挟撃であっという間にもう一体が倒された。


 残りのトロールも二人によって難なく倒された。


「お、終わった~……、はぁ……」


「シロー君お疲れ様。

結構助かったよ」


 取り敢えず倒されたトロールは回収して野営地に戻る。

 だいぶ散らかっちゃったけど焚き火はなんとか無事だ。


「それで、そのオークはどうする?」


 リナさんが俺の後ろにいた子オークを指差す。

 エルマンさんとセレナさんは困った顔で子オークを見る。


『み、皆どうなっちゃったのかなぁ……』


 危機が去り幾分か冷静になった子オークは不安になり涙を浮かべる。

 僕は目を瞑りこの子オークが大きくなったのをイメージして千里眼でオークを探してみる。


 魔力をだいぶ使ったから見れる範囲が狭まったけどそれでも何匹かは把握できた。

 生きているのは見つからず、見つけた全員は死んでいた。


「……とりあえずこの子は朝になったら彼の村に送ろう。

どういう状況だたから把握してギルドに報告出来るし、もしかしたらトロールはあの三匹だけじゃないかもしれない。

それになんでトロールがこんな森の浅い所に居たのか気になる。

明日はそれも調べてみよう」


 パーティーリーダーのエルマンさんがそう決めると、セレナさんとリナさんは頷く。


 僕はその旨を子オークに伝えると小オークは小さく頷いた。


 散らばった荷物を集めて野営地を整えて交代で休み始めた。


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