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遭遇


 とりあえずこの森を出て人里を目指してみようかと考え行動を開始する。

 魔力も回復して空を飛び適当に方向を決めてそこをまっすぐ目指して進む。


 森の爽やかな空気と木漏れ日が心地よくてつい鼻歌を歌ってしまう。

 自由が自分の心を満たしていた。


 それからはひたすら飛び続け、お腹が空けば果物を食べて、眠くなれば寝るという生活を数日過ごしてた。


「だいぶ進んできたけど森の出口まだかな?」


 いつも同じ景色に若干の飽きを感じて早く森を出たいという気持ちが募る。

 無心で跳んでると、前方から声が聞こえてきた。


『久し振りに肉食いたいよな』『だな!この前のボアの子供は美味かった』『おい早く食料集めようぜ!ボスが怒るぞ』


 と話している。

 初めて知性ある存在に出会いワクワクとした気持ちでそこへ向かうと、緑色の体で全身は汚れていて、耳が大きく、鼻が黒い色をした醜い顔の生き物が3匹集まって話していた。


 これは俗に言うモンスターか?と思って観察していると、その中の一匹が俺の方を向いてスンスンと鼻を鳴らす。


『あっちの方でなんかいい匂いしないか?』


『う~んわからん』


『本当にするんだって!

こっちだ!』


 一匹が前を歩きその後ろを二匹が面倒くさそうについていく。

 いい匂いってなんだろうと気になって辺りを見回していると、三匹は草を掻き分け近くまで来た。


『この辺り匂いが強いぞ』


『確かに美味そうな匂いだ』


『う~ん……わからん』


 三匹は匂いの元を探して彷徨い確実に近づいてくる。


 パタパタと飛び、大きな木の葉っぱの上で三匹の様子を見ていると、僕のいる木のところで止まって何かを探し始める。


 しばらく探していたが何も見つかってない様子で仲間同士で喧嘩を始めてしまっていた。


『本当に美味いもんあるのかよ!

早く見つけて帰んないとボスが怒るぞ!』


『ここら辺から確かに匂いしてんだよ!

早く探せ!』


『しらねぇよ!匂いするって言ったのでお前だろ!

早く見つけろよ!』


『探してるだろ!

とにかくここら辺だからお前もさっさと探せ!』


 そんな言い争いをしながらも必死に探す三匹。

 なかなか見つけられないので飽きてきて、無視して進もうと飛び立つと、一匹が俺を見つける。


『おいあれ。

うまそうじゃないか?』


『確かに。

体は小さいけど肉が柔らかそうだ』


『もしかしてあれがお前らが言ってる美味そうな匂いってやつじゃね~のか?』


 僕を見て不穏なことを言う三匹。


 あ、自分餌ですか……。

 幼気な妖精を美味そうだなんてけしからん!

 とにかく逃げなくては!


 三匹には届かない空を飛び急いで離れると、三匹は躍起になって追っかけて来た。

 石を拾っては投げてきてかなり怖い。


「うおおおおおおお!こっち来るなああああ!!」


 追いかけっ子を初めてしばらく、あいつ等は諦める様子はなく石を拾っては投げてきて、撒いてやろうと隠れては匂いで探り当ててくる。

 あまりのしつこさに辟易していると逃げ飛んでいた先に人間が居た。

 こっちも3人組で若い男達だ。

 それぞれが武装していて剣を持っていて簡素な皮鎧も着ている。


 前世の人間だった頃のせいで人間だったら助けてくれるかもと安易に考えて3人に助けを求めた。


「助けて~~!!

変なのに追われてるんです~~!!」


 突然出てきた僕に心底驚いている若い男たち。

 僕は男達を飛び越えその背に隠れる。


 その後に三匹が現れ人間と鉢合わせる。


「ゴブリンだ!倒すぞ!」


 男はゴブリンと言ったそれに斬りかかり、他の二人も応戦する。

 ゴブリンはあっという間に斬り伏せられ一方的に戦いは終わった。


 安心で僕は三人にお礼を言う。


「ありがとうございます~!

このゴブリン?っていうのにしつこく追い掛け回されて……」


 男達は目を珍しいものを見たといった様子で僕を見て何やらコソコソと話している。


「あの、助けてもらったお礼をしたいのですが……、良かったらこれをどうぞ……」


 無限倉庫から美味しい果物を出す。

 何もない所から果物が落ちてきた事に男達は驚き、そして、受けっとった果物を見て更に驚いている。


「こ、これアプの実じゃないか!

高級品だ!」


「うめぇ!!

こんな美味いの今まで食ったことねぇよ!!」


「……」


 最後の一人は無言無心でアプの実と言ったそれを食べている。

 三人とも食べ終わるとリーダーっぽい人が話し掛けてくれた。


「妖精族だろ。

さっきのアプの実のお礼に言っとくが不用意に姿を表すと危険だぞ。

特に強欲な貴族になんか見られたら捕らえられて死ぬまでペットにさせられる」


 マジか……。

 元は人間だから人間と一緒に自由気ままに生きていこうと思ったのに……。


 安易に姿を表すのは危険と言われてどうするか悩む。


「俺達は妖精を捕まえて売り捌こうなんて考えてないから安心してくれ。

なぁ?」


「ん?そうだな。

冒険者駆け出しの俺達が捕まえて売っても買い叩かれるだけだしな。

それに俺達は英雄を目指してるからそんな事やってられねぇ~よ」


 英雄かぁ~、若いねぇ~と微笑ましくなる。

 それと、冒険者というフレーズに興味を持つ。


「冒険者って僕でも出来ますかね?」


 僕の質問三人は「え?」と声を出し驚いた顔をする。


「えっと、俺の話聞いてたかな……?

不用意に人間に姿を晒すとダメだよって話したと思うんだけど」


「聞いたけどやっぱり僕は人間と一緒に暮らしたいなぁ。

荷物持ちくらいは出来るしその代わり僕を守ってもらうって条件でどうかな?

人間の友達も欲しいんだよね~」


 そう言うと三人は顔を近づけて何かコソコソ話しだす。


 結論が出たのか金髪の幼い顔立ちの男が俺を街へ連れてってくれると言う。

 なんでそんな結論になったかと言うと、他の危ない奴に捕まるよりは自分達でちゃんと連れてってあげよう事らしい。

 それから、街道に出て人が見えてきたら必ず鞄の中に隠れる事とキツく言われた。


 俺を街に連れてってくれるこの三人はとある村から出てきた仲のいい三人組で、一緒に冒険者になって英雄クラスとなるSランクを目指しているのだという。

 ランクとは冒険者の格付けで、F~Aと頂点のSの系7つのクラスに分かれていて、現在Sクラスは10人しか居ないという。


 金髪童顔の男がレイトと言い、年齢は16歳。

 茶髪の無邪気な感じが少し残る日焼け色の肌の気の強そうな男がダジ、年齢は16歳。

 焦げ茶色の髪でこの中で一番身長が低いく、眠そうな目で口数少ないのがダレス、年齢は15歳。


 この世界では15歳で成人という扱いらしい。

 だからダレスは成人になったばかりで、村から出られるようになったから三人で村を出てきて冒険者をやっているという。


 俺はシローと名乗り、年齢は生まれたばかりとだけ言っといた。

 あとは俺が遠くの物を見る事が出来るのと荷物をたくさん運べると言う事を教えて俺達は街へと向かった。



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