転生準備
猫の自由な生き方は好きだ。
常日ごろ生まれ変わるなら猫になりたいと思っていた僕こと時田 士郎(27歳会社員)は仕事の休みの日に猫カフェに行って猫と戯れ癒やされようと出掛けていたら、理想のスリムな黒猫を見つけついつい追いかけてしまう。
黒猫を追いかけあっちに行ったりこっちに行ったり、目的を感じない黒猫のふらふら自由な散歩を俺は小さな旅気分で付いて行った。
狭い路地に入ったり塀に登ってスタスタ歩いたり、暖かい日向に寝そべって昼寝をしたりそんな事を観察して充実した気持ちになる。
夢中になって黒猫の進む道を追い掛けてい記憶が途切れ、次の瞬間にハッと目が覚める。
「あれ?
夢だった?」
嫌でも……はっきりと黒猫を追いかけていたのは覚えてる……。
途中から記憶が途絶えて目が覚めたけど……。
記憶の乱れに混乱していると急に目の前が明るくなる。
「お目覚めになりましたね」
目の前に非常に輝かしい後光を放つ人が現れた。
眩しさに目を細め手で光を遮ると、後光が弱まりはっきりとその人物が見えてきた。
目の前に居たのは半透明の羽衣がひらひらと舞う神々しいく美しい女性が穏和な表情で俺を見ている。
俺は目の前に居る人に見惚れてしまっていた。
「時田士郎さん、貴方は地球の輪廻で転生する筈なのですがとある世界の神が地球の魂をいくつか欲していまして、我々地球の友好ある日本を担当する天の神柱の一柱に相談を持ちかけられました。
我々は神議りを行った結果、10の魂までならと決まり、天命を終えた魂にお声がけをしているのですが、異世界に興味はありませんか?」
ちゃんと話を聞いて考えるまでも無く心に思うは興味ある!!だ。
聞くと僕は次の輪廻転生も人間に生まれ変わるという事で、日々追われる地獄の労働とストレスが待っているのかと絶望しますます異世界に興味を持つ。
俺の思考を読み取ったのか目の前の女神は若干苦笑いを浮かべる。
「わかりました。
それでは地球の輪廻の輪から外れ異世界の輪廻に送られます。
本来なら記憶をまっさらにして輪廻の輪に戻るのですが異世界の神の要望で記憶はこのままにお送り致します。
第二の人生を楽しんで下さい。
これは私達神々からの餞別です。
受け取ってください」
女神の胸の辺りから小さな光がポワッと出てきて俺に吸い込まれる。
「あ、あの、これは……?」
「あちらの世界に行けば分かります。
お楽しみと言うことであちらの世界へ行って確かめて下さい。
その方法はあちらの神が教えてくれるでしょう」
「は、はぁ……」
いったいどんな世界に行ってしまうのか不安になってきたけどもう後戻りは出来なさそうだし大人しくしとこう。
女神は祈り始めると俺の体が浮遊感に包まれる。
「それでは幸せな人生である事を祈っています」
女神がそう言った瞬間、また目が覚める。
本当に一瞬のように感じる不思議な感覚だ。
「目が覚めたね。
ようこそ世界ラズールへ。
僕はこの世界を管理している神の一人、アマルと言う。
よく来てくれたね」
アマルと名乗る男神が居た。
西洋風の豪華な服装で金髪のイケメンだ。
「君達地球の魂をこの世界に呼んだ目的はただ一つ、世界の発展に協力して欲しいからだ。
貴方の有する知識で世界を活性化して欲しい。
我々は直接下界に干渉できないから君が下界へ転生するまでの間、僕が全力でサポートさせてもらうよ。
願いがあったら何でも言ってほしい」
「あの、僕はその下界でどんな事をすれば……。
知識を求めてるといわれても何をどうすれば……」
「それは自由だ。
我々は君達に願う事しか出来ない。
下界で自由に生きて触れ合い、君が知る知識で変革をもたらし活性化して欲しい」
まあなるようになるか……。
自由気ままなセカンドライフを楽しもう。
「アマル様、僕がこれから行く世界はどんな世界なのでしょうか?」
「世界ラズールは多種多様な種族が生きていて魔物という存在も居ます。
そうですね……、貴方達の世界で言う剣と魔法のファンタジー世界だと思ってください」
あぁ、なるほど。
理解した。
友達に勧められて読んだラノベにそんなのあったな確か。
それなら……。
「猫が擬人化した種族は居ますか!?」
「キャットピープルの事ですね?
もちろん居ますよ」
マジか!!
猫人転生で自由ライフ!!
あぁ……猫になってひなたぼっこできる日が来るとは……。
「あの……、非常に申し上げ難いのですが、転生する先の種族は完全に運命に委ねられますので過度な期待はしない方が良いと思います」
苦笑いを浮かべたアマル様はそう言う。
たとえランダムだとしてもそれを引き当てるのが僕だ!
待ってろ猫人族!!
僕はニャンニャンするんだあああああ!!
僕の心を見たアマルは笑顔を引き攣らせる。
「世界には特異な姿や力で魔族とひと括りされている種族たちが居ますが殆どは害はありません。
ですが邪神に魅入られた凶悪な魔族が居るのでお気をついけください。
その殆どは魔王を頂点とした組織に属しています」
魔王居るのね……。
なら勇者も居るんだろうなぁ~。
まぁ僕には関係ないか。
「それでは次に能力の話しをしましょうか。
ソウルタブオープンと唱えてください」
言われるがままに唱えると、目の前に色々なものが書かれた半透明な板が出てくる。
____________________
No name 0歳 男 ■■族 Lv1
職業:無職Lv1
称号:渡来者
HP00/00 MP00/00
力:
体:
知:
心:
運:
固有スキル
スキル
無限収納MAX
全言語理解MAX
____________________
「出ましたね。
では名前とスキルだけ決めていきましょう」
「え?他の項目は?」
「他のは転生後に自動で入力されます。
転生後にご確認ください」
なんと言うか運が試されるな……。
まあ地球にいた頃は割と運良かった方だと思うし何とかなるか。
名前はあまり凝ったのとか考えるの面倒くさいしシローで良いか。
「スキルを決めるって事ですがどうやって決めれば良いんですか?
あと既にあるスキル?」
「先に既にあるスキルのご説明します。
それは地球の神の贈り物でしょう。
無限収納は生き物以外は何でも無限に入れられるみたいですね。
この世界のインベントリの完全上位互換です。
全言語理解は言葉の意味そのままに全ての言語を理解する事が出きるって事でしょう。
神級スキルです」
なるほどチートだ。
地球の神様たち……ありがとうございますと心でお礼し祈る。
「それでは次に、こちらの世界へ来てくれたお礼としてスキルを一つ何でも与えます。
希望を言ってください」
何でもということでパッと思いついたのが一つある。
魔物が居ると言っていたし気ままに旅をしたいから自分を守る術を持つべきだと。
痛いのやだし。
と言うことで。
「結界とか作れる魔法ってありませんか?」
「わかりました。
では結界魔法を授けます」
アマル様の胸から小さな光が現れ、自分に吸い込まれる。
ステータスを見ると結界魔法MAXとあった。
いいのかこれで?
「さあこれで準備は整いました!
下界へ送ります。
どうか貴方の力が世界の為になる事を祈ります」
僕は意識が薄れていった……。