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異世界に来たけどモンスターが美しすぎて倒せない  作者: 隙間好き真人間
―ゴブリンの町へようこそ。そして旅立ちへ―
5/7

5話

書き出したばかりでこの有様。大変申し訳ございません。

就職いたしまして、只今大変多忙にございます。これからしばらく不定期更新となるでしょうが、最後まで書ききれるよう頑張っていきたいと思います。まだ読んでくださっている方々。そして読み始めてくださっている方々。どうぞよろしくお願いします。

『そ、それよりですね、まずはこの方を町まで連れていきましょう』

『…そう』


ひとまず追及をやめてくれるミエラさん。きっとこの襲撃者を放置する方が危険だと思ったのだろう。

村長は出かけているようだが、ミエラさんのような村長のボディーガード的な存在や警察とまではいかないものの自警団のようなものも存在するのだ。さっさと引き渡そう。

襲撃者を抱えようとすると、それよりも先にミエラさんが襲撃者の襟首を掴んだ。


『待って、て。すぐ、戻、る』


大の男、さらに襲撃者は筋骨隆々のむっきむきである。そんな男を担げるわげがない。

そう思って止めようと、声を出そうとしが遅かったご様子。

襲撃者である男はまるでキャリーバッグのように後ろでにひっつかまれて引きずられていった。その勢いは地面についた跡、まるで擦過跡のような痕跡からも窺い知れる。

まぁこの勢いならばそう遅くなることも無く、出発できそうで一安心だ。


『お待た、せ』

『はやっ、はやいですね!』


早すぎる。少なくとも男を抱えた幼女がだしていいタイムだと言っていい。引き渡しの際の説明や移動時間も含めて軽く30分はかかると思っていたが、いざ蓋をあけてみるとびっくりのスピード。


『行こ。時間、無駄に、した。あの、害虫、のせい』


帰ってきたと思うとご立腹のご様子。

だってミエラさん、目を逆三角にしながら、ほっぺを膨らませているんだもの。なにこれ怒っているのに可愛すぎる。

両ほっぺたを抑えて空気が抜けるように揉みしだきたい。抜けたら膨らむまで待機して膨らんだあもう一度揉みしだくのだ。

なにかあったのだろう。害虫とまで言われるのだ。きっと引き渡した襲撃者がなにか暴言を吐いたか、それとも引き渡しの際に前科が分かったのか。

俺が予想できるのはこんなところだが何があったのか根掘り葉掘り聞き嫌な思いを再度味わわせるのも気が引ける。ここは何も聞かないでおくのが吉だろう。


『はい、そうですね。次の予定地等を決めながら暖かい方にでも行きましょうか。なにせ気ままな旅ですから』


そんな俺のお気楽な言葉に、少しだけ頷くミエラさん。なにやら先程までのピリピリした雰囲気も軟らんだご様子。

ゆっくりと歩み始める自分、その後ろをちょこちょこと慌てた様子のミエラさんが追いかけてきて、横に並んだ。




    ・・・





『次の予定地としては、人種が住む場所よりはまだ親しみがもてそうな別の種族の場所に向かいたいのですが、どこか楽しそうな場所はありますか?』


できるなら美人がいっぱいいるところに行きたい。

それとミエラさんが親しみをもってる種族の所なら安全だろうという心づもりもある。


『スケル、トン種、かわい』


ほほう。スケルトンと来ましたか。美人が多そうかというとあまり多くない、というか絶無という予感しかしないが大丈夫なのだろうか。ミエラさんの言葉でも流石にスケルトンが可愛いというのはどうなのだろう。


いや、諦めるな。隣にいるミエラさんを見ろ。この可愛らしい子の種族を忘れたのか。これでもゴブリンなのだぞ。


もしかしたらスケルトンだって可愛いかもしれないじゃないか。


『それは興味深いですね。ではそちらに向かいましょう』

『…かわい。かわい。スケル、トン種』


思い出しているのだろうか。ふわふわしているミエラさん。かわい。


ゴブリンの町から出た直後は景色が良く始まりの草原を見下ろすこともできていたが、今周りはごつごつの岩肌のみ。下り道しかなかった道も今では平坦な道に変わり、道幅もゴブリンの町付近よりも広くなっている。


道なりに歩いていると、さっそく分かれ道。異世界にきたばかりの俺に判断できるわけもなくミエラさんに委ねる。おねしゃす。


『どちらに行けばよろしいのでしょう』

『こっち』


迷うことなく先導するミエラさん。スケルトン種に会いに行くことが決まって余程嬉しいのだろう。軽く小走りになってらっしゃる。


急いで歩いているお陰か、前方には木々の匂いとともに深い森が見える。

岩肌ばかりの見飽きた光景はまるで線引きしているかのように、ある一定の距離以降は見る影もなく森林の道になっていた。


かなり歩いている筈だが、疲れた様子も無く歩き続けるミエラさん。正直俺は歩き疲れている。休憩したい。現代人なめるなよ。移動手段が豊富にあるせいで歩くという行為はあまり行っていない現代人なめるなよ。


だが、それを言うことはない。ミエラさんがるんるん気分だからだ。いやはや、こんなに嬉しそうなミエラさんは初めてのように思える。

スケルトン、そんなに可愛いのだろうか。それとも骨フェチ?


骨フェチだったらどうしよう。俺ぽっちゃり系だから骨はあまり感じられない体なんだけど大丈夫かな。

そんな下らないことを考えながらミエラさんんお後ろを歩いていると、森林の道に入る直前、背後から何やら地面を削るような音が聞こえてくる。


振り返る。

狼系犬耳女子が何人も四つん這いになり地面を滑るように駆けている姿が見えた。


いやいやいやいや、なんだこれ。あれか、幻覚か。俺と言うブサメン系童貞主人公が拗らせすぎて幻覚を見ているのか。


『…あー、俺ってマジブサメン』


心までブサイクになってしまったら終わりだろうに。ダメダメ、ブサメンだーめ。


こちらに掛けてくる狼系犬耳女子はどの子も素晴らしく可愛い。合計10人はいるだろう。どの子も衣服の面積はかなり小さい。動きやすさ重視だろうか、素晴らしい。


めっちゃ短いタンクトップみたいな服と股関節をギリギリ隠しているような短パン。腰の括れや臍、健康的でパンパンな太ももがその激しい動きで躍動する。

素晴らしく興奮する。

もっと見たい。この光景を脳内に永久保存するのだ。


眼を血走らせながらガン見していると、襟首をがっしと掴まれ息が詰まる感覚。

直後に股間がふわっとした。まるでジェットコースターに乗っている時の感覚のよう。


どうやらミエラさんが俺の襟首を掴み、背後に移動させた様子。狼女子達も立ち止まりこちらに向けて喉を鳴らし威嚇行為している。


『げほっげほっ』


咳き込みながら両者を見守る無力さ全開な俺。凄まじくかっこ悪い。

この状況、どうしたものか、と思いながら眺める。


するとどうしたことだろうか。またもや背後から気配。今度はガチャガチャとした金属同士が擦れ合うような音が響いている。

デジャヴを感じながら振り返ると、そこにいるのは骸骨。銀の鎧を着た骸骨。


その中でも派手な赤色の鎧を着た骸骨が剣を横に振る。骸骨達が一斉に立ち止まる。赤鎧の骸骨は止まらず、他の骸骨よりも数歩進む。

そして息を吸い込むような動作をしたと思うと、辺りに響くような大声で叫んだ。


『またもや我々が住まう森を荒らしに来たか薄汚き野獣ども!!』


骸骨なのに声帯あるの? 骸骨なのに息をするの? なんていう疑問は叫ぶ直前まで浮かんでいたが、それは消し飛んだ。

この骸骨、とんでもない。

とんでもなく、声が可愛い。まるで脳がとろけるチーズだ。中毒性が半端ない。

例えるならあれだ、あの声優さんの名前を叫びたい感じ。ほら、あの人、あの声がめちゃんこ可愛い人。

もうめっちゃ叫びたい。


『く〇ゅううううううううううううううううううううううううう』


遅かったわ。叫んじゃったわ。


しょうがないわ。大ファンだもの。


今にも叫び返そうとする狼女子。そして返事を待っていたであろう赤鎧骸骨。ついでに

背後で俺を守るように立つミエラさん。

その全員がビクッと肩を震わせてこちらを見つめてくる。


狼女子もミエラさん可愛いし赤鎧骸骨は声が可愛いんだ。そんなに見つめないでくれ。照れる。


これはいかん。恥ずかしい。忘れてもらおう。さっきまでのやり取りを続けてもらおう。


『いや、すみません。あまりにもそちらの赤い鎧を着た方の声が可愛らしく、衝動的に叫んでしまったようです。どうぞ、続けてください。私のことは忘れてもらって大丈夫ですので』

『き、きききき、貴様ぁあああああ。わわわ、我の声が可愛い!? 可愛いだと!?

そんなことを言うでないわ!いや、やっぱりもっと言っても良いぞ!嬉しいから!

やっぱり嘘だ!言うでない!照れる! ふなぁあああ、どうすれば良いのだ!!』


なにこの骸骨。骸骨のくせに可愛すぎるやつか。

嘘つけない素直に口からでちゃう系骸骨だわ。


もう一言二言程言って照れさせたいが、我慢の限界がきたのか狼女子が声を上げる。


『無視するなわん!うちらは食料が欲しいだけだわん!スケルトンは独占せずに私達にも食料を分けるわん!』

『それは叶わぬ!! そなたらは森のことを考えぬ、そなたらが好きなように食い漁れば森に住まう動植物は死に絶えることになりかねん!森との共存を全く考えぬそなたらに森に入る資格等ない! 忘れたとは言わせぬぞ、過去にそなたらが森の資源を食い尽くしどれほどの被害を与えたか!』

『弱肉強食!弱いのならば食われても仕方ないことだわん!それが自然の摂理わん!』

『ならばここで止めて見せよう!そなたらに打ち勝ちこの森に入る資格無しと分からせることも吝かではなし、覚悟するとよい!!』


真剣な話し合いを俺らを挟み続ける両種族、だが、俺はそんな話等初めから聞いていなかった。聞いているのは唯一つ。狼女子の語尾だけだ。


マジもんだ。語尾にわんが付いてる。マジもんの狼女子だ。


ピリピリとした緊張感のなか、今にも両種族が衝突し戦いへと発展しそうな空気のなか、それを全く気にせず口を開く。


『すみません。私は黒と申します。私の名前を呼んでもらってもよろしいですか?』

『?? 黒わん?』


黒……わん。


『わおおおおおおおおおおん!!!』


黒わんいただきましたあああああ!


『な、なんだわん!!』

『いえ、いえいえいえ、なんと可愛らしい語尾かと思いまして。私の名前は平凡なものですが貴方が呼ぶというだけでなんと神々しく聞こえることか、と思いまして』

『だ、だだだ、騙されるなあああああわん!!! こいつ人種わん!! きっとうちらを騙す気わん!!』

『な、なに!! 人種だと!! なんと卑劣な! 最初から我を騙す気だったというのか!』


ざわざわと騒ぎだす周囲。やはり人種とは他種族にとっては信用のならないものらしい。


だが諦めてはならない。

モフモフしたい。録音したい。そんな気持ちが俺には芽生えてしまったのだから。そう思ってしまったのなら、それは二種族が争う、またはどちらか一種族が傷つくことでもその願いは叶うことは無いのだから。


繋げ。その希望を。どちらも叶える術が必ずあるはずだ。


隣のミエラさんも頼るんじゃない。彼女はスケルトンという種族が好きな筈だ。別にそれは良いことなのだが、彼女に全てを任せるとなるとそれは狼女子達への敵対へとつながる可能性がある。それは避けなければならない。


『騙す気などありません。私は本気で、本気で貴方達の声に、語尾に心ときめいております。確かに私は人種、あなた様方にとっては信用のならないことでしょう。それはこれまで人種の行ってきたことを思えば当然のことと思えます。ですから、私は貴方達の信用をえる為にどのようなことでもできる覚悟があります。

ですから、私が貴方達の信用を得る為になにをすれば良いか教えていただけませんでしょうか』


全力で遂行してみせよう。耳元で甘美な声を聴くためならば、ケモミミをモフモフするためならば。


覚悟はできている。なんでもしてやろう。という意気込みでお願いすると、周りはまたも不思議な空気が漂いはじめる。


『こ奴、本当に人種なのか? これ程までに他種族に対し丁寧な対応をする人種を我はいまだかつて見たことが無い』

『確かに見たことが無いわん。でも匂い、そして身体的特徴からして人種以外には思えないわん』

『…そうか、やはり人種で間違いは無いようだな。では、我々に対し本当に敵意が無いか我が確かめてみるとしよう』

『いや、うちが確かめてみるわん。うちらにはこういった時に信用に値するか確かめる方法があるわん』

『なにを言う!我々にも信用に足るか確かめる儀式がある!我々がそれを行い確かめると言っているのだ!』

『うちらが確かめるわん!』

『我々が確かめると言っている!』


喧嘩をしはじめる両種族。

なんか俺のことで争ってもらえてるみたいで興奮する。


だがこのまま喧嘩していても埒があかない。ここは一つ『俺の為に争わないで!』と話しに割り込み仲裁してみよう


『どうせたいしたことない儀式だわん!うちらの儀式はそれはもう相手に恥辱を与える素晴らしい方法だわん!』

『そなたらの恥辱などあてになるか!我々の儀式がどれほどの困難な儀式か知り恐怖に慄くがよい!それは…!』


仲裁に入ろうと口を開こうとするが、なにやら話が怪しくなってきた。なんだ恥辱って。そんなに酷いことをするつもりなのか。

鞭やらびんたやら蝋燭攻めなら吝かではないどころか大歓迎だが、流石に行き過ぎたSは看過できないぞ。爪剥ぎや歯抜きやら人体に欠損ができるような行為には興奮できない。


『性別の見極めだ…!!』

『…?』


頭を飛び交う疑問符。


性別の見極め? それはどちらのでしょうか。俺か? 俺は男以外のなにものでも無いのだが。スケルトンには分かりにくかったか。ちんちん見せようか。ていうか見てくれ。

それとも逆にスケルトンの性別の見極めなのか? あんたら性別とかあるの?

骨だよね。全身骨だよね。骨の優美さや形によって性別が見極められたりするのだろうか。


『我々はこのように一見骨にしか見えないだろう。だがこれでもこの世界に住まう生物だ。当然繁殖行為を行う。だからこそ性別もはっきりと分かれているのだ。

だがしかし、他種族からすると見分けるのは困難を極めるらしい。だからこそ、我々スケルトン種は友好的な種族かどうかを見極めるためにこの方法をとる。

どうだ、困難であろう獣耳種よ』


ぐるるると喉をならす狼少女。

その気持ちは分かる。確かにこれは難しい。だって俺からすると性別もなにもスケルトン種は皆平等に骨でしかないもの。


どうにかして見極められる手段はないだろうか。なんとしてもお近づきになりたいのだ。


狼少女と一緒にうぬぬと頭を悩ませる。なにやら連帯感があり嬉しい。


『そ、んなの、簡、単』


悩んでいるとようやく警戒が少し薄れたのか、久しぶりに声をあげるミエラさん。

おもむろにスケルトン種に近づくと、鎧の隙間から勢いよく手を突っ込んだ。なにをやっているのか、もしも手があばら骨の間に引っかかって折れてしまったらどうする。


『こう、やって、触れ、ば。分かる。女の、子、柔ら、かい』


鎧の下でもぞもぞと手を動かしているミエラさん。確かに、なにやら掴んでいる感じがする。柔らかそうななにかを。


『や…っん。さ、触るのは禁止だ! ミエラ貴様! このようなところでなにをやっているのかと疑問には思っていたが近づいてきたとたんに胸を触るのをやめるようあれ程言ってきたではないか! 触るでないわ!』


びしっ、と手を振り払うスケルトン種。ミエラさんは仕方なさげ胸を揉むのを諦めた様子。

ていうか、胸?


『ミエラさん、お知り合いですか?』

『ん、スケル、トン種、の、友、達。たま、に、遊びに、行って、た』

『なるほど…』


どうやらスケルトン種に会いに行きたかったのは昔から付き合いがあったからだったようだ。

そんな真面目なことを考えていながらも、俺の視線はある一点から外すことができなかった。


スケルトンに胸がある? いやいや、どうみても骨しか無いじゃないか。

でもミエラさんの手の動き、それは確かに見慣れた参考ビデオと同様に柔らかそうな何かを揉む動きだった。

当然俺は揉んだことはない。でも、揉んだことがないブサメンだからこそ、女性のことに関して真偽を見極めることには自信がある。

経験がないからこそ、予習復習に関しては経験者よりも多く積み重ねてきたという自負があるのだ。


その俺から見て、ミエラさんの行為には揉む真似、という偽りは無かったように見えたのだ。


『…まさか、本当に? そこには胸が、あるというのか?』


胸があるとして、それを俺は見ることができないというのか? いや、胸は鎧があるから見えない。でも、骸骨の鎧は骨露出度が高い。胸が見えなかったとしても、あの鎧の範囲からして、へそ、そして太ももの半分以上が見える可能性があるというか絶対見えてしまうぐらいの範囲しか鎧が存在していない。


そんな、夢のような光景を、俺は見ることができないというのか。

そんな残酷なことがあって良いというのか。


『異論は無いようだな、獣耳種よ。では、気を取り直して儀式を行おう。我の部下、この10人の中で雄は何人か、そして雌は何人かを当てるが良い。もし、見極められたのならば、我々スケルトン種は人種を、いや、貴様を全面的に信用することを約束しよう。

所要時間に制限は設けぬ、分かった時に、好きなように答えるが良い、人種』


好きなように、と言われても分からないものは分からない。男女があるとして身体的特徴の違いは分からない。全身骨なのだから。

ならば鎧のデザインの差、と考え見てみるが、これも違いが分からない。普通であれば女性らしいデザインや男性らしいデザインがあるものだが、スケルトン種が着ている鎧には、この儀式を行う慣習があるからか違いが無いように見える。

身体的特徴、男女の差が鎧と肌?の部分から分かるかと思うだろうが、全員が胸の部分が膨らんでいるように見える。全員が女性なのだろうか。


『ヒントとしても触ってもよろしいですか?』

『ダ、ダメに決まっているだろう!!』

『ではtouchしてもよろしいでしょうか?』

『表現を変えてもダメなものはダメなのだが!?』


ダメらしい。

ならどうする。どうすればいい。今のところ分からない。

だが、それがどうした。分からない? そんな筈がない。俺を誰だと思っている。俺は童貞だ。絶妙なブサメンだ。フツメンとブサメンの微妙なラインでいつも負け続けたブサメンだ。

女性に相手にされたことなど、おぎゃーと生を受けた時から今まで一度としてないブサメンだ。

だからこそ。だからこそ俺達ブサメンは女性を求め抗ってきた。女性を見る目を養い、俺達は手に入れた。真実の女性を見極める目を。

女性の胸のサイズなど一目見ただけでミリまで理解できる。下着の色、形などもYシャツ越しなら8割を超える正解率を誇る。上着越しでも5割を超える。


そんな異能の力を持つ俺が、こんな見えないだけの、露出の多いおっぱいごときに負ける等、ありえない。



【あ、あああああああああああああああああああああああああああああ】



今こそ、見せる時だろう。今まで女性に相手されなかったことで生まれた、この異能の力を。

体中の筋力を精神力を生命力を、全て眼球に集める。喉から漏れるのは極度の集中を表す原始的な叫び。


眼から漏れるのは、赤い、紅い血。

今まではこんな、眼から血が流れるようなことにはなりはしなかった。

何故このようなことになったのかは、一目瞭然だった。

当たり前だ、スケルトン種の中には、男性もいたのだから。こんな身体的特徴を全て丸裸にする技を使用すれば、それは男性の口には出せない汚物をも見極めることに他ならないのだから。

通常時だけではない、この力を使えば、膨張時の大きさすら見極めることができる。そんな物を目にすれば、性的に未成熟、知識面だけ熟成し切り最早発酵している童貞は一たまりもない。


周りは急に変わる雰囲気に戸惑いを隠せず、息をのみこちらを見つめる。


【見せてやるよ、俺の本気を。お前らの性別? そんな物は俺の本気をもってすれば簡単に見極めることができる。それどころか、お前らの身体の細かい所まで、すべて見通してやる、全てを!!!!!】


言葉遣い?そんなものを気にしている余裕などない。

喉の奥からこみあげてくる熱いものが、口の端から溢れ出る。

拭う動作すら今はもどかしい。


『やめ、て! 血が! 血が!!!』


横からミエラさんの慌てる声が聞こえてくる。

そうか、これは血だったのか。


『大丈夫、全て見通すこの力なら、この眼なら、こいつらの戦いをとめることができる。今、今をとめることができたなら、食糧問題ですら、俺が全て解決してやる。だからこそ、俺が見て、観て、診て、視て!!この争いを止める!!』


最後の一人まで来た。今まで見た中の比率は、男性男性3人、女性が6人だった。これが一人でも男性が多かったなら、俺はこの場で膝を折っていただろう。きっと耐えきれていないだろう。でも、これが最後だ。頼む、最後も女性であってくれ。じゃないと、俺は耐えきれそうにない。逆に女性であったなら、俺は回復できるのだ。

この力で見通すことができるのは、身体的特徴のその全てだ。それは極限の集中力を保っている今の状況ならば、陰毛の数すら数えることができる。おっぱいの全体的な大きさだけではない、乳輪の大きさ、乳首の大きさ、陰核の大きさまで、その全てを把握することができるのだ。これはもはや透視といっても過言ではない。童貞は、女性に飢えた男性は年を経るごとに魔法使いへと近づいていくのだ。


『これ、で、最後おおおおおおおおおお!!!』


膝ががくがくと笑う。視界が霞む。最後に、口から何か熱い塊を吐き出す。息はできているのだろうか。呼吸しているという感覚が無い。

立っていられなかった。倒れると思った。だが、隣のミエラさんが、俺の腕をとってくれたのだろうか、俺はまだ二本の脚で立つことができていた。



『頑張、って。最、後ま、で。支え、て、みせる、から』


俺の顔は笑いかけることができているだろうか。

霞む意識の中、確かに見た。ミエラさんの頬を伝う暖かい何かを。


期待してくれているのだろうか。無茶したことに対しての涙なのか、それとも異種族間での争いを嘆いての涙なのだろうか。きっとどちらもなのだ、それどころか、それ以外の俺の考えることができない理由もあるに違いない。優しいミエラさんならば。


だからこそ、応えなければならない。男として? それもあるが、童貞として。

童貞は、非童貞よりも現実に厳しい。きっと【男】という存在に対する固定概念も、そして【女】という存在に対しても、求める理想は非童貞よりもきっと、高い。女性の陰の部分を知らないから、陽の部分しか知らないから。


だからこそ、今までにあったことの無い程、優しく、気高く、嫋やかで、そんな臭い言葉が地で似合う女性、ミエラさんの期待には童貞として、死んでも応えなければならない。


『全部、分かった。女性7人、そして、男性3人』

『よく、頑張った、ね』


任せてくれよ、ミエラさん。

女性に関して童貞に勝てる非童貞なんていないんだぜ。


最近気絶することが多いなと思いながら、そこで意識を手放した。




     ・・・・



———SIDE ???————


『…正解だ。人種に、何故我々の性別が分かる? 今まで我々を魔物としてしか扱わなかったお前らに何故我々を見極めることができた? お前は、一体何者なのだ』


『た、だの、人種。唯一、私、達に、好意を示、す。人種』

『そなたには聞いていない。我はその人種に聞いている』


『無駄、黒、気絶、した』



なんとも言えない空気が流れる。きっと我々は、もうこの場で争うことはできない。

毒気を抜かれた。それどころか、今この瞬間からこの男、黒という人間に対し牙を抜かれた者も少なくはない。


我々を前にし、多大な犠牲を払う、何もかもを見通す眼を使い、倒れた男。この男、黒は人種が今までしてきたことを理解している。していると言った。ということは、異種族の前でこのように無防備を晒す人種がどのように扱われるかなども理解している筈だ。


だというのに、この黒という男は我々の戦いを止めるために気絶するのも躊躇わず、技を使った。


『それ、で、正解?』

『ああ。正解だ。凄まじい技だった。我々は手を引くとしよう。そういうことだ、狼人種。後は好きなようにするがよい』

『……はぁ、こんな状況でどうすればいいわん。ここで森の中に突撃したら良い笑いものだわん』


頭をぼりぼりとかき、溜息をつきながら答える狼人種。そうだろうな。この男は文字通り血反吐を吐きながら我々の戦いを止めようとしたのだから。


『人種が起きたら、話を聞きに行くわん。食料、なんとかするという言葉、ただしいかどうか判断させてもらうわん』


その時は、森を通してもらうわん


そう言い残し去っていく。


『我々も、向かおうか村に。元からそこが目的地であったのだろう?』

『そう。旅、の、途中、だった』


旅、か。ゴブリン種と人種が一緒に。

それもミエラがときたものだ。それ程に信頼のおける人種なのであろうな。


『治療もしなければならん、急ぐとしようか』


踵を返し、少しだけ急ぎ足で村へと戻っていく。

見た目程ダメージは無さそうだが、ミエラは必死に足を動かし、心配そうに背に抱えた黒を時たま見つめていた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。誤字などあればコメントにて報告してくださると大変助かります。次話投稿の際に直していきたいと思います。

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