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何であの世に逝ったのさ!?


 部屋を出た先は、真っ直ぐな長い廊下だった。


 床も壁も天井も白い石造りで、天井からはとても高級そうなシャンデリアがいくつも等間隔で吊り下げられている。

 そのお陰で窓も無いのに昼間のように明るい。


 壁に掛けられた絵画や、此処彼処(そこかしこ)に置かれた彫刻や調度品は、庶民の鋼太郎が見てもとても高価な物だと解る。

 だがそんな物には目もくれず、鋼太郎は目の前でプリプリと揺れる桃をガン見しているのだが。


 四六時中ロボットアニメの事しか考えていない鋼太郎と云えども、性に全く興味を持たない朴念仁ではない。

 ちゃんと三次元の女性にも興味はあるのだ。


 どれだけ歩いたのか解らない。(桃を見ていたから)

 どれだけ時間が経過したかも解らない。(桃を見ていたから)


 やがて鋼太郎達は丁字路に辿り着く。そしてその丁字路を折れた廊下の先にある、大きな扉が目に入った。

 それは高い天井にまで届く、黄金の二枚扉だった。


 戸惑う鋼太郎を尻目に、金髪キャリアウーマンは丁字路を折れ、その大扉の方へと歩き出す。


「まずはこちらへ。コウタローさんの身に何が起きているのか、実際に目にして頂く方が理解が早いと思いますので」


「え? あ、はい……」




 そして2人は大扉の前に立ち、金髪キャリアウーマンはコンコンとノックする。


「失礼します。例の方をお連れしました」


「はーい。どうぞ入ってくださいなー」


 大扉の前で呼び掛ける金髪キャリアウーマンに、室内から男の声で応じた。

 何とも間延びした、緊張感の無い声である。


 金髪キャリアウーマンは大扉の取手に手を掛けて引っ張る。

 大きな扉は、女性の腕力でも苦もなくスッと開いた。


「さぁ、どうぞ。待ちかねていたよ」


 男の声が、鋼太郎に入室を促す。

 やや躊躇いながらも、鋼太郎は促されるままに部屋に入った。




 そこは、まさに宮殿だった。

 以前テレビで見た、ロシアのクレムリン宮殿の如く華美で、それでいて嫌らしさを感じさせない品の良い装飾に彩られた、豪華な部屋だった。

 広さは鋼太郎が通っていた高校の体育館くらいで、天井には眩く光り輝く巨大なシャンデリアが吊られ、壁にはよく解らないがとても価値のありそうな絵画が所狭しと並べられ、床はペルシャ絨毯の如き細かな模様の敷物が敷かれている。


 鋼太郎はその圧倒的な豪華さに目を奪われていたが、やがてある事に気付く。

 その部屋の奥に誰かが居る事に。


「やぁ、ようやく来たね。まぁとりあえずこっちにいらっしゃいな」


 その声の主は部屋の奥に居た。

 どこぞの王宮めいたこの部屋にはあまりにも似つかわしくない事務仕事用のねずみ色の机と、キーキーと不快な音を鳴らす安物の回転椅子に腰掛けたその男。


 やや白髪混じりの黒い髪はボサボサで、ヒゲも最後に剃ったのは何日前かという伸び具合だ。

 ヨレヨレの黒いビジネススーツにシワだらけのワイシャツ、ケバケバしい柄のネクタイもまぁ値段相応だろう。

 黒縁の丸眼鏡の奥に見える目の下にはうっすらとクマが浮き出ている。




「さて、ではこっちに来たまえ。現在の君の状況について、私から答えるとしよう」


 中年サラリーマンはそう言って、鋼太郎に手招きする。

 鋼太郎が動くより早く、横に控えていた金髪キャリアウーマンが鋼太郎の背中にそっと手を添えた。


「さぁ、行きましょうコウタローさん」


「は、はぁ……」


 何とも気の抜けた返事をしつつ、鋼太郎は部屋の奥へと歩み寄った。




「やぁやぁやぁ、待たせてすまなかったね。何せこちらもドタバタしていてねぇ」


 中年サラリーマンはニカッと笑いながら、事務机の前に立つ鋼太郎を見る。

 金髪キャリアウーマンは中年サラリーマンの横に寄り添うように立ち、同じように鋼太郎を見つめていた。


「あ、いえ……って言うか、俺は何でここに呼ばれたんですか?」


 所在無さげにキョロキョロと辺りを見渡しながら尋ねる鋼太郎。


「ん~そうだねぇ。まずは簡潔に説明しようか」


 と、鋼太郎の疑問を受けて中年サラリーマンは口を開いた。

 そしてあっさりと告げた。




「えっとね、黒鉄鋼太郎君。君は死にました」


「……え?」


「で、噛み砕いて言うと、私は神様だよ。あ、ちなみにこの彼女も女神様って事になるね」


「……はぁ?」


「ここは言うなれば、あの世に該当するのかな? 正確にはこの世とあの世の狭間にある境界ってところだね」


「……はい?」


「そいでもって、誠に言いにくいんだけどぉ……君はもう元の世界には帰れないって事になってるんだ。申し訳ないけどね」


「……?」


「あ、でもね? チャンスが無いってワケじゃあないんだ。君にやってもらいたい事があって……まずはその話からする事にしようか」




 困惑する鋼太郎をよそに、中年サラリーマンと金髪キャリアウーマンの眼鏡のレンズが同時にキラリと光った。ような気がした。




「あ、あの! し、死んだってどういう事なんですか!?」


 鋼太郎はすっかり混乱していた。


 しかし中年サラリーマンは、事務机に両肘を乗せたまま何も答えない。

 動いたのは金髪キャリアウーマンだ。


 彼女は手にしていたタブレット端末の画面に指を滑らせる。

 そして、目当ての画面を呼び出し、視線を鋼太郎に向けて呟いた。


「黒鉄鋼太郎、16才。家族構成は父・母・姉・妹。通っている高校の校門前の道路にて、女の子がボールを追い掛けて飛び出した瞬間を目にする。その女の子が軽トラックに轢かれそうなったのを身を呈して救ったものの、自身が代わりに軽トラックに跳ねられ、その時に負った頭部へのダメージが致命傷となり、そのまま命を落とす」


「!?」


「性格は馬鹿が付く程の熱血漢。周囲からの評価は『暑苦しい』『地球温暖化の原因』『やかましくて鼓膜がいくらあっても足りない』等。成績は赤点がチラホラ、体育の評価だけは優秀、と」


 自称女神様こと金髪キャリアウーマンはタブレット端末に表示された文字を淡々と読み上げる。

 だがそこに書かれていたのは、紛れもなく鋼太郎のパーソナルな情報に他ならなかった。


「彼女居ない歴16年。彼女が出来ない理由は『ルックスはそこそこだけど馬鹿そうだから』『ルックスはまぁまぁだけど暑苦しいから』『ルックスは悪くないけどやかましくてウザいから』だそうですよ?」


「うるせぇ! ほっといてくれ!」


 顔を真っ赤にしながら叫ぶ鋼太郎。

 そんな初々しい反応を見せる鋼太郎に苦笑しつつ、神様を名乗る中年サラリーマンは告げる。


「さて、そんな鋼太郎君には良いお知らせと悪いお知らせを聞かせなけりゃならない。まず悪いお知らせは、さっきも言った通り君はトラックに撥ねられて死んだ。これは動かしようの無い事実だよ」


 薄ら笑いを浮かべながら告げる中年サラリーマンに、鋼太郎は何も反論出来ずにいる。

 頭の中は混乱の極みだ。それなのに、中年サラリーマンの低い声だけは否応なく耳に届く。


「んで、君はこのままあの世に送られる。まぁ君の素行なら天国行きは確実だろうね……でも、君は不満だろう? イキナリ自分が死んだと、正体不明のオッサンと美人のパツキンチャンネーに言われたところで、到底信じられるかってんだよ……ってね?」


 中年サラリーマンの眼光は鋭く、鋼太郎は目を逸らす事が出来ない。

 自らを神様だと称するこの男を、最初は胡散臭く思っていた。

 だが、もしかしたら本当に……と鋼太郎は思い始めていた。


 ちなみに金髪キャリアウーマンが女神様だと紹介された時は、あぁそうなのかもとすんなり信じたワケなのだが。


「だから私は君にチャンスを与える事にした。まず君に提示する選択肢は3つある」


 そう言って中年サラリーマンは、鋼太郎に向かって右手の人差指を立てて見せる。


「まず1つめの選択肢は、このまま自分が死んだ事を素直に受け入れて、天国へと旅立つ。そうすれば君は極楽浄土で綺麗なチャンネーと半永久的にキャッキャウフフで暮らせる」


 どうでも良い事なのだが、鋼太郎は中年サラリーマンが女性をチャンネーと呼ぶのが気になった。


「そして2つめ。天国には逝かず、すぐに輪廻転生を果たして現世に生まれ変わる。この場合、君の生前の記憶は無くなって新たな人生を歩む事になるね」


 人差指と中指を立てて、中年サラリーマンは第2の選択肢を提示する。

 生まれ変わり……それは鋼太郎が鋼太郎でなくなってしまう事を意味する。


「そして3つめ……君には私の仕事を手伝ってもらう。そしてその仕事を達成した暁には、君は死ぬ前の状態で現世に甦る事が出来る」


 中年サラリーマンから第3の選択肢が告げられた瞬間、鋼太郎は自分の耳を疑った。


「……え、え? そ、それって……俺は生き返るって事ですか?」


「そうなるね。時間的には君が道路に飛び出して、トラックに轢かれるちょっと前に生き返る事になると思うよ。当然、事故の直接の原因になった女の子の飛び出しも防ぐ事が出来る」


「それ! それでお願いします! っつーかそれ以外にありえねぇって!」


 鋼太郎はデスクに駆け寄り、中年サラリーマンの手を両手で掴む。

 さっきまで感じていた絶望感が嘘のように消え去り、鋼太郎の目にはくたびれた身形の中年サラリーマンが、まさしく救いの神に見えた。


 まぁそれを当人に言ったとしたら「とんでもねぇ、あたしゃ神様だよ」と返されるだろうが。


「そうかい、引き受けてくれるか……いやぁ、良かった良かった。正直な話、引き受けてもらえるかどうか不安でねぇ」


「えぇ、でもこれでようやく頭数は揃いましたね」


 中年サラリーマンと金髪キャリアウーマンは何か話しているが、鋼太郎にはその会話は耳に入っていなかった。

 何故なら中年サラリーマンの手を掴みながら、感涙にむせび泣いていたから。


 良かった。これで誰も悲しませずに済む。

 家族や級友、先生や八百屋の親父さん、ご近所の皆さんに至るまで、誰も鋼太郎が死んだ事で泣く人が居なくなるからだ。


「うぐっ……ぐすっ……そ、それで俺は何をすれば良いんですか? 生き返る為なら、俺は何だってやりますよ!」


「何だって、ねぇ……まぁその決意が嘘じゃない事を祈るよ」


 中年サラリーマンはそう言うと、横に控える金髪キャリアウーマンに目配せ(アイコンタクト)をする。

 そのサインに気づいた金髪キャリアウーマンは、再びタブレット端末を操作し、その端末を鋼太郎と中年サラリーマンにも見えるようにデスクの上に置く。


 そして中年サラリーマンは、タブレット端末に映し出された画面を指差しながら、鋼太郎に告げる。


「君にはこことは違う世界……つまり異世界に行ってもらいたい。そこで悪逆非道の限りを尽くす魔王を討ち、異世界に平和を取り戻してほしい」


「…………え?」


 口をポカーンと開けた間抜け面の鋼太郎と、至って真剣な面持ちの中年サラリーマンと金髪キャリアウーマンの対比が、思っていたより面白かったりする。




 タブレット端末の液晶画面には、地球が映し出されている。

 そしてその地球の周りに、いくつもの惑星がある。


 しかしその惑星は、鋼太郎が小学生の時に図鑑で読んだ、いわゆる太陽系のそれとは似て非なるものだ。

 地球の周囲にある惑星は、多少の差異はあるものの、どれもこれも地球によく似ていたからだ。


 更に地球を中心として、惑星の1つ1つと何やら光の糸のようなもので繋がっていた。

 そして、そこから中年サラリーマンの解説が始まる。


「鋼太郎君、よく聞いておいてくれよ? 君がよく知る地球が、この真ん中にある星だ。そしてこの周りにいくつもある、地球によく似た星が異世界ってヤツだ。普段は別の次元に存在してて、人間には感知出来ないんだけどね」


「で、地球とそれぞれの異世界を繋ぐ糸は、地球にエネルギーを送るパイプみたいなものだと解釈してくれ。ざっくり言うと、地球は異世界から送られて来る摩訶不思議なエネルギーによって維持されてるんだ」


「異世界からのエネルギー供給が滞ると、地球によくない事が起こる。深刻な経済の不況、悲惨な戦争や卑劣なテロ、大きな自然災害の頻発、タンスの角に足の小指をぶつける、等の人間にとって極めてマイナスな事が起こり易くなる」


「異世界が平和だと地球が安定し、異世界に異変が起こると地球が不安定になり、結果として地球の人間は足の小指をタンスの角にぶつけ放題になる。そうなればいずれ全ての人間から足の小指が無くなるだろう。これは由々しき事態だよ! 鋼太郎君も足の小指が無くなったら困るだろう!?」


 話がいつの間にか、地球の危機から足の小指問題にシフトしていた。

 堪らず金髪キャリアウーマンが中年サラリーマンを制し、話を修正する。


「こちらの神様と私……女神は、地球とパイプを繋ぐ異世界に起こる様々な問題に対処する為に存在するのです。そして大抵の場合、異世界の問題を解決するのに必要となるのが、地球に住む人間に何かしらの能力を与えて送り込む事なのです」


「俗に言うチート能力を与えられた人間が、その能力を存分に発揮して異世界のトラブルを解決する事で、再び地球にエネルギーを送れるようになるのです」


「今回のように魔王が現れて、異世界を滅茶苦茶にしてしまうというのは、珍しい事ではありません。ぶっちゃけ、異世界あるあるです」


「異世界で魔王が暴れる事で、異世界の住人から笑顔が奪われ、その負のオーラが地球に悪影響を与えるのです。従って魔王を討伐して異世界の住人の不安を払拭し、人々の笑顔を取り戻せば、結果として地球も安定する。まさにWin-Winというワケですね」


「はぁ……」


 ここまでの話を、鋼太郎は完全に理解しているとは言い難かった。

 神様の仕事を手伝うとは言っても、精々ボランティア程度の奉仕活動だと考えていたからだ。


 鋼太郎は、いわゆる異世界転生の類に分類される漫画や小説に疎かった。

 鋼太郎は専ら、ロボット物のアニメやゲームには精通してはいたが、ファンタジー系は専門外だ。

 なので、流行の最先端であるところの異世界転生のテンプレ展開も、鋼太郎には何の事やらなのである。


 が、魔王=悪の親玉というのは辛うじて理解出来た。鋼太郎がこよなく愛するロボットアニメにも、魔王と名乗る存在は居ないワケではないからだ。


「つまり、俺はその魔王を倒せば良いって事ですか? そして、その為のチカラはちゃんと貰える、と?」


「そう。察しが良くて助かるよ。で、君はどんなチート能力が欲しいんだい? ぶっちゃけ『魔王ぶっ殺しスイッチ』とか『異世界破壊爆弾』とか突拍子も無いものじゃなければ、どんな能力でも与えられるよ?」


 どんな能力でも……それはまさに、鋼太郎が16年もの間夢見て来た願いを叶えられる、魔法の言葉だった。

 正義のスーパーロボットを操縦し、悪のロボットや怪獣を倒す、テレビの向こう側のヒーローに自分がなれると知り、胸が熱くなる。


 さすがに200メートル級のスーパーロボットをおねだりするのは図々しいかも知れない。

 55メートル級でもまだ厚かましいだろう。

 だが、18メートル級ならどうだ?

 スーパーロボットが無理なら、リアルロボット系で妥協するのも(やぶさ)かではない。


 レトロな超合金タイプ?

 それとも今風な変形合体タイプ?

 小型の聖戦士タイプも捨てがたいし、モビールなスーツタイプも嫌いではない。


「(スーパーロボットに乗れたら、魔王を倒す事なんか朝飯前じゃねぇか……異世界に平和を取り戻して、俺は晴れて生き返れる……よっしゃあ! こりゃ勝ったも同然だぜぇっ!)」


 鋼太郎の腹は決まった。

 剣と魔法が活躍する異世界で、ドラゴンやスライムがわんさか居る異世界で、スーパーロボット無双する、と。

 鋼太郎は武者震いが止まらなかった。


「……その様子だと、もうどんなチート能力が欲しいのか決まってるみたいだね?」


「はい! 迷いはありません!」


 確固たる決意を秘めた鋼太郎の顔は、これから死地に赴くという悲壮感は無く、夢と希望と感動に彩られていた。


「では、君の望むチート能力を、声高らかに宣言したまえ! 私の大いなる神様パウァーで、望み通りのチカラを授けようではないか!」


 中年サラリーマンは事務椅子からガタッと立ち上がり、両手を広げて威厳たっぷりに告げる。

 鋼太郎は興奮していた。16年の人生の中で、こんなに興奮した事は無い。

 幼い頃に橋の下で洋モノのエロ本を見つけた時より興奮していた。




「さぁ聞かせたまえ! Youはどんなチート能力が欲しいんだい!?」


「はい! 俺……スーパーロボットに乗りたいんです!!」


「OK! スーパーロボットになりたいんだね? お安い御用さ!」




「…………え?」




 鋼太郎はキョトンとなった。

 思考が数秒間停止した。


 おかしい。何かが違う。

 たった今、自分と中年サラリーマンの間に、何か致命的な齟齬が生まれたような気がする。


 違うのはたったの1文字。

 だが、決して間違えてはいけない1文字。

 その聞き間違いが生み出すのは、破滅以外の何物でもない……そんな気がする鋼太郎であった。

 

 だが時既に遅し。


「さぁて、では早速チート能力を授けよう! 準備は良いね!?」


「え、あ、あの! ちょ……」


「そぉれ! スーパーロボットになぁ~れぇ!」




 ビビビビビビビビ!


 中年サラリーマンの黒縁丸眼鏡が発光したかと思うと、そこから謎の怪光線が照射され、その黄金色の光は鋼太郎の全身を包む!


「うぎゃああああああああああ!? アバババババババババババ!!」


 その光を浴びた鋼太郎の全身を、激しい痛みと痺れが襲った。

 ついでに肉が透けて骨が丸見えになった。


「さぁ! 黒鉄鋼太郎よ! 今こそ正義のスーパーロボットとして生まれ変わるのだぁ! キィエエエエエエエエエエエエッッ!!」


 眼鏡から謎の怪光線を浴びせ続ける中年サラリーマンは、まるで怪鳥のような叫び声をあげる。

 その瞬間、室内は光の奔流となり、鋼太郎の悲鳴と中年サラリーマンの哄笑とが響き渡る。




 斯くして黒鉄鋼太郎は、異世界を救わんとチート能力を手に入れた。


 この物語は、愛と怒りと悲しみを胸に抱いた少年の、果てない冒険譚である。







次回更新は5月26日18時です。

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