12話 協力者の扱いは準備
この世界はゲーム時代の時に現実と同じ暦が使われているという設定だったのに対し、1月30日、それが12か月の360日というずれずレナ設定になっていることに気付いたため残りの5日+1日の設定を5話に追加しました。
あともう1個修正した部分があった気がしましたが忘れました。
春になったとはいえまだ夜の長い時期なため、まだ日本で言う18時なのに日が暮れて暗くなっている
なぜ時計が高価なこの世界で時間がわかるのかというと、ステータス画面やメニュー画面をみているから・・・というわけではない。
なぜかメニュー画面などの時間表記は消えてしまっている。それなのに時間がわかるのは、領主の館の応接間にいるからだ。
応接間によくある3人掛けの非常に高価そうなソファーで、そのソファーで挟まれているテーブルは、これまた高価そうな長方形の背の低いもので、その上にいい匂いを漂わせている紅茶の入ったティーセット、客の目を楽しませるかのような色をしているお茶請けの非常に美味しいクッキーが置いてある。
一般人に出すとは思えない品々が置いてあり、非常に歓迎されているとわかる空間なのだが、空気は非常に重い。いや、ピリピリしてるといったほうがいいだろう。
片方の椅子に座っている僕とサシャ、向かいの席に座っているのは領主とその奥さんらしき女性。
扉を遮るように立っているのは領主が教会に連れてきた兵とは違い、派手な赤い腕章を付けてる人と、ただ赤いだけの腕章を付けている人の2人だ。
そしてその6人すべての視線を集めており、熱くもないのに大量の汗を流している2人の兵士らしき人物。
片方には見覚えがある。この町に入るときに門番をしていた男だ。といっても僕たちを相手した人ではなく、別の人を相手にしていた人だ、ということはこの男がセーラさんをさらった人物らをまちの外に出した張本人。
もう一人は見失ったといって、逃がした人物だろう
この二人はとんだ災難だろう、いや、自業自得か、知らなかったとはいえ、お金をもらい逃がした相手の連れ去った人物がこの町の領主の娘だったのだから
職務に忠実な犬になっていればよかったものを、欲をかいたせいで、集団失神事件で走り回った後に、剣吞な表情の領主に呼び出され、前門の虎後門の狼状態なのだから。
「昨晩、アルフレッドは見張るといった人物らを見失い、アンドリューは昨晩、不審者な馬車が門に来たと思うのだが
何かあったなら教えて欲しい」
片方の、僕が知らないほうの男はいい訳が思いつかないのか口ごもり、何も言うことが出来ないようだ。もう一人のほうは、何か思いついたのか少しだけ明るくなった表情で告げる。
「馬車は貴族の方だったので、検問は必要ないといわれてたのでそのまま通しました」
検問は必要ない?何を言ってるんだ。
「君は・・・」
領主がため息をつきながら言う言葉を選ぶように額に手をやった。
そのせいで顔が見えなかったからか、追い詰められるといい情報しか入ってこなくなる、悪い情報でもいい情報だと思いたくなるからなのか、口を開いた兵は表情が一気に明るくなる。
「門番の仕事は検問をすることだ、これは私が決めたデビュットの法ではない、この国の国王が決めたことだ、この法は国王ですら外壁のある町に出入りする場合は検問しなくてはならない、それなのに一介の貴族如きが検問無しで出入りするなんてあってはならないことだ、わかるか」
門番をしていた男はそういわれ再度顔が悪くなる。
自分がした発言が完全に墓穴を掘ったのだから
「君は昨晩馬車に無理やり乗せられていた女性を見捨てたんだよ。わかるかい」
そういわれた巡回兵は苦し紛れの反論をする。
「あの時の人物は女性かどうかはわかりません」
バァン!!
「あの馬車に乗せられ、誘拐されたのは私の!デビュットの領主ベネディクト・マルティネスの娘、セーラ・マルティネスだ!!」
先ほどとは打って変わって、鬼の形相の領主の一言に2人の男は凍り付く。間接的とはいえこの町の領主の娘を陥れたのだから
もしあの馬車にセーラさんが乗せられていると知っていたらこんなことはしなかったのだろう、二人とも後悔したような苦い表情になる。
サシャがこっそりと教えてくれたが回復魔法が使える人は非常に少なく、この町にはセーラさんと他に2人しかないのだそう。そしてセーラさんは小さい傷なら無償で直してくれるため非常に人気が高いのだそうだ
「ねぇ、あの馬車に乗ってたのがセーラさんだって知って後悔するのはおかしいんじゃないかな?
君らの仕事は市民全体を守る仕事で、その中にもセーラさんが入ってるってだけで、セーラさん個人が守る対象ってわけじゃないんだよ、セーラさんじゃなかったら後悔しないってのは虫が良すぎるよね。
そんな中途半端な覚悟で、義務感でその仕事やってるんならやめなよ」
その言葉で思うところがあったのか、花を赤くして泣き出しそうになる二人を見て僕はため息をついた
「なぁ、連れ去られた女性がどういう扱いされるか知らないから泣くなんて言う無駄なことが出来るんだろうね、そんな時間あるならその腐った根性叩きなおして少しでも有用な情報ひねり出せよ。」
そう兵士を切り捨て、領主と情報のすり合わせをしようとしたとき、門番をしていた男が口を開いた。
「馬車を通すときに貴族だと証明するものだということで渡された手紙は隣の領主レガット伯爵の蜜蝋がされていましたが、その蜜蝋はひどくいびつで、今思うと正規の物だとは思えません。
それとその手紙からした独特の匂いから、使われていたインクは大王墨だと思います。
手紙の紙は手触りからおそらく木霊木紙だと思います。確証はありませんが、前1度触ったものととても似ていた気がします」
大王墨、木霊木紙、どちらも魔道具の魔術札を作るときに使われるインクと紙だ、大王墨は上級素材、木霊木紙は中級素材、インク素材の質は込められる魔法の強さの上限が変わり、紙素材はその魔術札の消費期限の長さが決まる。
ただどちらもさほどいい素材ではない。
大王墨が取れる大王イカはそれなりに強いモンスターだが、バカでかいため墨の材料は大量にとれるし、トレントは行くところに行けば腐るほどいる
「レガット伯爵の蜜蝋か、だがあそこはあり得ないだろう、レガット伯爵は打ちと仲がいいし、何より女系の家計だ、婿になる男を欲しがる理由があっても女のセーラをさらう理由がない。
だが大王墨と木霊木紙か、これでだいぶ犯人は絞れるな」
「ですね、大王墨、木霊木紙なんて言う量産品を使うなんてどこの低位馬鹿貴族か」
「ん? 大王墨、木霊木紙どちらも王家などでも使われる最高級素材だぞ?」
「・・・え?」
遅くなりました。
普通に次を書く気力がありませんでした。
別に他作品とか、ナ●ト疾風伝の漫画が面白くて読みふけってたわけではありません