8話 怒りと優しさの香り
なんかかっこつけた小説名が恥ずかしくなったのでラノベぽい小説名に変えました。
よろしくおねがいします
馬鹿を相手に無駄な時間を使った後、僕らは教会に向かっている。ここの協会のシスターにサシャの知り合いがいるのだそうだ。この国、セイント王国は女神教でタクム親公国の従属国だ、国力的に見たら圧倒的に王国のほうが上なのに、親公国の下、従属国になっているのは昔、アルガス山脈にいた魔王の影響だ。
王国自体は魔王が出るより昔からあったのだが、魔王軍の進行により唯一人魚とのかかわりのあった地域を切り取られてしまう。
この際王国は防衛軍を送ったもののその軍は守っていますよ?という建前を作るための捨て駒だった。それは中途半端で明らかに守り抜く気のないものだった。人魚との交流は膨大なほどの海の資源を手に入れるために必要不可欠なものだったにも関わらず、守らなかったのはその時代の王が先代が急死したための穴埋めのような形で王位についた使えないバカだったからだ。
この王国の愚行のせいで人魚は長いあいだ、ひどい扱いを受けていた。基本的に容姿のいい女性しか生まれない人魚は魔王に玩具として犯されもてあそばれ、飽きたら不老不死を手に入れられるというその体を、肉を血を食われたという。
この原因を作った王国とは長い間不仲だったのだが代替わりした王国の王が頭を下げ、親公国の初代王が仲裁したため、親公国の従属国として親公国が困っていたら無償で手を貸す、などの明らかに王国の不利益を前提とした条件のもと交流を取り戻した。
それでも水面下では人魚に憎まれているといわれ、この国で人魚に会うのは不可能になってしまったが、海の資源の入手当てが出来ただけ上出来だろう。
その際に親公国にならい国教を過激派である、人間と1部の種族のみが至上という女神教から全種族が平等である、という女神教に変わった
話はそれてしまったが今から行くのはその全種族平等という思想の女神教教会だ。協会は大理石で作られたいかにもといった感じの建物で、教会内部にある女神像はしゃがみこんでいる人間の頭をなでているという像だったものを、さあ誰であっても優しく包み込んで差し上げましょうというような感じで優し気な笑顔で両手を広げているものに変わっている。
ちなみにサシャとその人が出会ったのは王都にある学園だったのだそうだ。学園、ねぇ
教会の中に入ると、あの馬鹿のせいで少しささくれ立った心がなだらかになるような感覚に包まれる。教会の中はシスター達や信者の祈りのおかげで癒しの聖域になっているのだそうだ。
教会のシスターにサシャが話をしてから少しすると協会の奥の扉から1人の女性が出てきた。少し癖のあるの金髪を腰まで伸ばし、エメラルドのような緑色の瞳の泣きほくろが印象的な美女だ。
「サシャおひさしぶりです、こんなに大きくなって」
「セラさんは相変わらず大きいですね」
「そうね、あれからだいぶたって大きくなりましたね」
「また大きくなったんですか・・・」
サシャは自分の胸に手を当てながらセラ?さんの胸を凝視しながら話している。そうセラ?さんは巨乳なのだ、もしかしたら麻里奈母さんより大きいかもしれない
「それでこの方は・・・」
「この人はカイゼ少し前に知り合ったんだけど教会に行ってみたいっていうから連れてきた」
「そう・・・ 私はセーラといいます。ブリュットの教会でシスターをしています、カイゼさんあなたは・・・才能者、なのですね」
この時少しセーラさんの目が光ったように見えた
「! わかるんですか?」
「ええ、看破の魔眼がありますし、何よりシスターの職には人物と呪いに対する鑑定能力がありますから。わざわざありがとうございます、それと申し訳ありません」
そう言ってセーラさんは深々と頭を下げた。
「なぜそんなに頭を下げるんですか?」
「なぜって、才能者の皆様は異世界からの転移者なのでしょ?元の世界には家族がいてもおかしくないのに、こんなところまでいらして頂いて、神託が降りてから才能者の方にお会いしたらまずお詫びしようと思っていたのです。」
そう言い再度頭を下げるセーラさん
「家族・・・」
この時僕はなぜか昔のことを思い出していた。ボクシングを、無手でも戦えるようにとボクシングジムに通うきっかけになったあの事件を
あの事件が起きたのは僕が高校を卒業した次の年だった、12月後半で雪が降るくらい寒かったのを覚えてる。そのころから僕はバイトをして家事をして、優香もバイトをしてお小遣いを稼いで、麻里奈母さんはパート先で閉店ギリギリの10時まで仕事をしていた。そのころから母さんは奇麗な人だったしスタイルも良かった。だから出来るだけ早く帰ってくるようにと何度も注意をしていた。
ただその日は9時で上がり、半年前から同じところでバイトをしている大学生の男と2人で飲みに行くと連絡があった。麻里奈母さんは半年も前から知ってるし大丈夫だと言っていた。11時には帰ると、その時に迎えに来て、と。この連絡があった時から悪い予感はあった。でもたまにしか飲みに行かない麻里奈母さんは楽し気に電話をしていたから止められなかった。
そして11時半になるころまで待っても連絡はなかった。そこで僕は飲みに行くと言っていた居酒屋までバイクで様子を見に行った。そうしたら母さんが学生服を着た男1人とガラの悪い男3人、そして一緒に飲みに行くと言っていた男、計5人に車に乗せられそうになっていた。この時の男どもの下卑た笑みは今でも覚えている。
そして話しかけようと近づいたら聞こえてきた。怒りでどうにかなるんじゃないかと思うほど胸糞悪い会話が。
「この女ほんとに30代子持ちのババアか?俺すっげー顔好みなんだけど」
「それな~、この体もやべえよな、この後が楽しみだわ」
「少ししたら6人くっから、それまでに味見しとこうぜ、どんな声で鳴くか楽しみだわ」
「僕、初めてで生の中出しとか自慢できるね、しかもこんな美人」
「そうだな、手引きしたの俺だからそれが終わったら回してやるよ、あー動画とか写真いっぱいとって後から呼び出せるようにしようぜ、こんないい女1回だけでサヨナラはもったいなさ過ぎる。鑑賞会しながら犯るのやってみたかったんだよ」
「はっはっは、それはいいな、途中でカメラ買ってくか」
こんな会話が居酒屋の隣の駐車場でされていた。ここからは記憶がない、なんてことは無くしっかりと覚えている。
出来るだけ警戒させないように笑みを作りながら話しかけたが、あとから防犯カメラで確認したら目が全く笑っていなかった。口も笑みというよりただ歪めただけで不気味だった。
それから話したのはありきたりな内容だ。その人は僕の母親でなかなか帰ってこないから迎えに来た。
本当かどうかわからないから俺らがゆっくり介抱してから返してやる
混ざりたいならそういえば最後に回してやるよ
などとほざく奴らにで僕は身分証を見せた。そして麻里奈母さんの財布の中に入っている身分証を見せろと。学生服を着たやつが確認をしたら僕と苗字と住所が同じということに気付き青い顔をしていた。この身分証を見せるところから人が集まって来ていた。そしてこの男どもは何を考えたのか殴りかかってきた。尻尾巻いて逃げればよかったのに
僕は中学の時の授業で空手もやっていて、体も暇なときに鍛えていた。でも素人とはいえ5人相手泥試合になるかと思った、最初に学生服を着たやつを伸して、次に麻里奈母さんと飲んでたやつ、その後の3人は似たり寄ったりの男だったからどの順番はは覚えてない、ただ最後の1人を伸したタイミングで警察が来た。
この後、騒動になったけどこの日は後日話を聞くということで麻里奈母さんと僕の身分証の写しを取って解放された。この時警察の人が送っていくという話になったけど、かなり僕の気が立っていたから断った。かなり心配されてしつこく聞かれたけど全く言うことを聞かない僕に最終的に警察が折れる形になった。それでいざ帰るというときに麻里奈母さんが起きて連れて行くならお姫様抱っこがいい!とごねたのを覚えている。この人は・・・今の状況わかってるのか、そう怒りたくなったが、女性を中心に起こった騒動ということで女性警官が2人来ていてその人に説得され結局負ぶって帰ることになった。なかなかに頑固で女性警官含む周りにいた人のほとんどが苦笑いをしていた。
バイクは保管していてくれるということでカギを預けた。このバイクは担保のようなものだと今では思う。
帰り道麻里奈母さんを負ぶっているときは全く気にならなかったが、僕の体は両手薬指と人差し指が骨折、左腕にヒビ、左あばらにもヒビ、そして男の持ってたナイフによる切り傷が10数本あった。
翌日は麻里奈母さんが二日酔いでグロテスクになっていて、バイトは休むことになった。一日中ぐだっとしていて付きっきりで看病することになった。この時もまだ骨折は気にならなかった。
僕はこのことを思い出しているときに自分からあふれる殺気ともとれる怒気を抑えることが出来なかった。
「か、カイゼッ だ、大丈夫?」
「カイゼさん大丈夫ですか?」
そう2人が声をかけてくれて僕は我に返った。
「すみません、少し昔のことを思い出して」
「ほんとうに? あそこまでお怒りになるなんて相当なことだったのですか、よろしければお聞きしてもいいですか? 話せば楽になるかもしれませんし」
「そう、ですね」
僕はかなり二人に母が集団レイプされそうになったという話をした。その時の僕の怪我や相手の状態も含めて、相手は5人全員が頬の骨の骨折、両あばら数本づつの骨折、3人が腕の骨折、1人が片足の骨折とぼこぼこだった
「家族を・・・大事になさってるんですね」
「カイゼって・・・マザコン?」
「家族は大事だけど、マザコンじゃない!・・・と思う」
「ほら自信ない」
「ぐっ・・・」
家族を大事にしている、マザコン、この2つを聞いたとき思い出したくないことを思い出してしまった。
強姦事件がひと段落して数日が立ったタイミングだった、仕事は8時、遅くても9時まで、終わったら連絡を絶対にして僕が迎えに行くまで待っている、というのを約束したのに9時半を回っても帰らないどころか連絡すら無かったのだ、妹の食事とお風呂を準備してから、麻里奈母さんのパート先に行っているかどうかの確認に行ったらもう帰ったといわれ、あの事件の居酒屋に行ってみても麻里奈母さんはおらず、警察に行ってもおらず、1時間か2時間か、探してどうしても見つからずに一度家に帰ってみたら、麻里奈母さんがいたのだ。ほんのりとしたお酒の香りに薄く染まった頬、潤んで少し挙動の怪しい瞳、何をしてきたのかは丸わかりだ・・・そう飲みに行っていたのだ。おい!
あんなことがあって、防犯カメラの映像や野次馬の撮っていた動画を確認したときに、顔を青くして震えていたのに、連絡をなぜしなかった?そう問いただしたら連絡はしたと言い張っていた。互いの主張を確認するために〇INEを見たら確かに送られているのに、僕には届いていなかった、この後、日が変わったタイミングで〇INEの運営からサーバーが停止していたと連絡が入った
この連絡が入る前に一緒に飲みに行っていたパート仲間の女性に連絡を入れて確認をして、何もなかったのを確認したら僕は安心からか力が抜け、へたり込んでしまった。
「もう、心配しすぎよ? そう何度も連続で問題なんて起きないんだあっ・・・・・・♡」
「いっつもいっつも心配かけて、ほんとに・・・ほんとに何もなくて良かった」
僕は何度も何度も、しゃがんで僕の目線に合わせている麻里奈母さんに、何もなくて良かったと、本当によかったと、言った。
麻里奈母さんをきつく抱きしめながら、そう、抱きしめながら・・・抱きしめながら、だ 何度でも言おう抱きしめながああああああああああああああああああああああああああああああああああ そして抱きしめたときに麻里奈母さんからすごくいい匂いがしたのだ、香水とは全然思えないほど薬っぽい匂いのない、自然な優しい甘さの匂いが、この香水がどこのなんていう香水なのかは分からずじまいだが・・・。 ただこれだけでも燃え上がりそうなほど恥ずかしいのにこの現場を優香に見られたのだ、
「・・・何してるの・・・?」
この時僕は何を思ったのかなんでもない!と首を激しく横に振りながら、抱きしめているものを隠すかのように麻里奈母さんを抱きしめる手に力をさらに込めたのだ、本当にだらしのない、ろくでなしの兄だ。少しして離したときに麻里奈母さんは、顔を赤く染め上げ、うっとりとした表情をしていた。そして数日間は気まずい雰囲気が流れた。
まあこの事件のおかげで家族の絆は強固になって、仲良し家族になったのだが、今思い出しただけで燃え上がりそうだ。
「なに一人で百面相してるの・・・?」
「!!?!??!???!? な、にゃんでもないよ!なんでも!」
「かお、真っ赤ですよ?」
「しかも噛んでるし」
一人百面相を見られ、サシャに気づかされただけでも恥ずかしいのに、あんな、麻里奈母さんがいい匂いだったなんて思っていることがばれたらと思うと・・・片手で顔を隠しながら顔をそらすしかできなかった
そして落ち着くまで待ってからセーラさんが、思いもしなかった、いや可能性はあると気付いていたのに見ないふりをしていたことを指摘してきた。
「そんなに大事になさってる家族なら会えるといいですね」
「え? 帰る方法ってあるんですか?」
「? いえそれはありませんが、今回の才能者召喚は非常に大人数だと聞いてます。才能者たる資格がある方だけでなく、この世界を知っている方、そして興味がある方全員がこちらにいらっしゃると神託がありましたよ?」
「っ!? ほんとですか!」
「え、ええ 数か月前、に二年前後で召喚を行うと、仰ってました」
セーラさんに僕の考えの可能性を肯定された。いや正直こっちに来たタイミングと思われる、試練場の入り口へのワープした次の日の朝にはこの世界がゲームの世界ではないことはほぼ確実だった。なぜって出ないはずの糞尿が出るのだ、わかりやすくいうとウンチとオシッコが朝起きて少ししたタイミングで出たのだ、いまも試練場の裏の茂みの中に僕のぶつはあるはずだ、その後のゴブリンの死体を燃やすという行為もそのゲームではなく現実だ、という感覚から起こした行動だ。
そして僕の生きている時代には何人人がいると思っているんだ、100億人だ、その100億分の1の確率を引いた人が僕なのだ、それなのに、その周りにいる身近な家族、この場合麻里奈母さんと優香がこちらに来ない可能性はなかなかに低い、麻里奈母さんと優香にはそれぞれ5000万円づつはいった銀行口座をそれぞれの生年月日をパスワードにして作っている。だから2年ならばそのお金で何とかなるはずだ。
もし2年たってもこっちに来なく、お金が尽きた場合、麻里奈母さんはまたがっつりパートを入れるだろう。もしそうなってあの事件と同じような目にあってだれにも助けてもらえなかったら?それが麻里奈母さんじゃなくて優香だったら?あの子は彼氏ができたことが1度もない、要するに経験が無いのだ、そんな大事なものを集団強姦で奪われることになった、と、僕が元の世界に戻った時に知った場合その襲ったやつらを草の根書き分け出ても探し出して、血縁者全員ぶっ殺しかねない。
そうなったら優香や麻里奈母さんは殺人鬼の家族といって白い目で見られることになる。優香は人生これからなのだ、いい人を見つけて、結婚して、子供を作って幸せになってもらわないといけない、その相手に妹はやらん!なんてセリフを言ってみたかったりする。それに麻里奈母さん・・・はもう40代になるから再婚ってことは無いかもしれないが、まああの見た目と性格だ、さぞモテるだろう、モテ・・・とにかく再婚の可能性は無いわけじゃないけどあるわけでもない。再婚しなかったら麻里奈母さんの面戸を見るのは父さんがいない今僕だ。
こちらに来ないとしても僕が戻って面倒を見なくてはいけないし、こちらに来るなら同じように見つけ出して面倒を見ないといけない。
「カイゼさん・・・?」
「いえ、すみません。 セーラさんの言葉で目標を言うかやることが見つかりました。」
「そう、ですか。 家族が来た場合の見つける手段とこなかった場合の帰る手段ですか?」
「はい、そうです。」
「そうですか、大変だと思いますが陰ながら応援します。頑張ってくださいね」
そう言ってセーラさんは励ましてくれた。
サシャは何やら難しい顔をしていたが
今回はかなり重要な回です。あるところの話はかなり無理やりねじ込んだ形になっていますが違和感がないといいです。