6話 ギルドの事情
身分証を作って貰った僕はサシャと大通りを通って冒険者組合に向っている。
先に宿を確保したほうがいいのではないかとも思ったのだけど、組合に登録しておいたら組合の運営してる宿に安く泊まれるらしい。6人の相部屋に泊るにしても個別に泊るにしても食事代も少しだけ安くなるらしい。
大通りには屋台などがありかなりにぎわっている、春という時期とこの町周辺が1~10レベルという低レベルでもかなり安全に行動が出来るため、春には初心者の冒険者達が集る。
この世界は地球のように安全ではない上にあまり医療も発達していない。その上娯楽も少ないため新生児の出生率はかなり高いようだ。そのためどうしても家の後を継ぐにしてもあぶれる人が多いのだろう。それにここの街のように防壁がある町はかなり限られており、小さいころから死と隣り合わせだったため、ある意味鍛えられている、そのため天狗になった若い人たちが自分なら大成出来る、と有頂天になっているためそれなりに人気な職でもあるのだそう、だが冒険者になった初年度に初心者の3割は行方不明に、さらに2割は死亡が確認されるそうだ。
そのため経験者からするとお勧めできないのだそうだ。確かに一定以上の実力があるなら自分を含めて、結婚をした場合その配偶者どころか数人程度の子供なら余裕をもって養えるほど儲かるそうだが、そこまでの実力をつけられるなら兵士、才能などがあるなら騎士にもなれるのだそうだ。兵士や騎士はなれる人数、いわゆる枠が決まっているが、有事のさい以外は体を鍛えたり街の巡回など危険の少ない仕事でかなりの給料をもらえる。
兵士の場合そこまで高い給料はもらえないそうだが、騎士のように実力だけでなく、人格、容姿などそういう外見的なものも必要なのだそう。
僕は屋台で買い食いをしながらサシャから、冒険者のあれこれを聞きながら大通りを歩いている。
やはりサシャは有名人なのだろう。大通りにいる大半がこちらに視線を飛ばしてきている。
「あなた、周りの視線気にしないのね」
「だってこの視線全部サシャに向けてでしょ? 僕を見られてるわけでもないからね、僕は知らなかったけどサシャって有名人だししょうがないんじゃない?、にしてもこの串焼き美味しい、もっと買えばよかった、サシャも食べる?」
「はぁ・・・ 遠慮しとく」
「そっか」
ちなみにサシャは最年少で賢者になったということで有名ではあるが容姿については広まっていない。そのためこの向けられている視線が僕に向けてだということに気付くのはだいぶ先の話。
「ここが冒険者組合の支部」
案内されたところには木製の3階建ての大きな建物が立っている。門は大きな両開きで片方が開いていた。門の上にはクロスした剣とオオカミの横顔の書かれた旗、その手前に盾と積み上げられた貨幣の絵が描かれている。
中は正面に受付、1階と2階が吹き抜けになっており左右に階段がある。そして受付までの空間にはテーブルが置いてある。かなりの広さがあるがいるのは男女合わせて20人ほど、8つある受付に3人の受付嬢がいる。今は昼前と朝夕のラッシュ時からずれているために冒険者も受付嬢も少ない。そのほとんどが一斉にこちらを向いた。
僕たちはその視線を気にせずに受付まで行く。
「冒険者に登録をしたいのですが、お願いできますか?」
身分証を出しながら話しかけるが受付嬢は僕を見たまま動かない。
「・・・あの、どうかしました?」
「!! いえ! 何でもありません。 えっとそちらの方もですか?」
「私はカイゼの案内で来ただけ、あと推薦も、かな?」
「はぁ・・・推薦、ですか・・・っ!! 少々お待ちください」
受付嬢は、提出された僕とサシャの身分証を見たとたん顔色を変えて受付の奥の部屋に行ってしまった。その対応にニヤニヤしながら聞き耳を立てていた冒険者やこちらを見ていた受付嬢が驚いていた。
ひそひそとした囁き声を聴きながらしばらく待つと奥から細めな体系なのにどこか目を引き付ける存在感のある50大ほどの人を連れた受付嬢が戻ってきた。
「デビュット支部の支部長を任されているブレットと申します。カイゼ様とサシャ様、申し訳ありませんが少しお話を聞きたいので奥に来ていただけますか?」
「ええ、構わないわ」
僕が返事をするより先にサシャが即答してしまった。
「カイゼ様はどういたしますか? 出来れば一緒に来ていただけると助かるのですが」
「・・・わかりました」
少し考えて僕もサシャと同じように話をすることに同意をした。
ここで断ってしまっても良かったんだけど、それだと推薦だ、といったサシャだけを行かせてしまうことになるし、僕のことを大勢の前でいろいろ話すことになってしまう。大勢といっても20数人だけど噂っていうものはすぐに広まるものだ、職業の事や、レベルのことを聞かれてしまった場合面倒ごとに巻き込まれるだろう。正直それは避けたい。いくら優秀な種族で、剣帝という最上位職でもレベルも熟練度も1なのだ、面倒ごとに巻き込まれた場合自分を守れる可能性が低い、ならここで素直に同席をして大物なんだぜ?っていうことだけを漂わせた方が人が距離を取る可能性がある。
支部長に案内されて受付の奥にある部屋に案内される。
部屋のイメージは社長室のような感じで、部屋の中心は少し広い空間になっていて部屋奥に高そうな机と椅子、右側には来賓用と思われる2人用の椅子が2つ背の低い机を挟むように置かれている。
「こちらへどうぞ、わざわざここまで来ていただいたのはそちらのカイゼ様について聞きたいことがあったためです。もちろんホーエンハイム卿にも聞きたいことがありますが、アイシャ飲み物をお願いできるかな」
僕の隣にサシャ、正面にブレッドさんとさっきの受付嬢が飲み物を持ってきて座り、話が始まる。
「ではカイゼ様、カイゼ様の身分証を拝見したところ、苗字がございませんでした。本来であれば剣帝・ソードカイザーの職の前提職、剣聖・ソードマスターになることが出来るのは一部の貴族か才能のある者のみ、そして貴族であれば苗字があるはずです、もし貴族ではなく平民から剣聖になれた場合も国から苗字が与えられます。 なぜ苗字が無いのでしょうか?」
優しげな柔らかい口調で話しているのに、僕に向ける視線は鋭く、嘘はつかせない、そう言っているかのような目だった。
「それについては私から話します。彼はこの世界について疎いところがあるますから」
「この世界、とおっしゃるということはカイゼ様は、この世界の住民ではない、才能者ということですか」
「ええ、ブレッドさんもご存じだと思いますが才能者が2年後に来るという神託がありました。そのため私たち8賢者は帝国の魔王のようなことが起こらないよう、起きたとしてもすぐに対処できるように才能者が来そうなところの下見として調査に出たのです。そして彼に会いました。ここのすぐ近くです」
「近くというと、試練場ですか?」
「はいそうです。そして彼が今回の神託で言われていた到達者です」
「っ!? そ、それは本当ですか?」
「ええ、職業が3つ、そして種族が人間種、ドワーフ種、エルフ種、鬼種、獣人種、この5大種のどれにもいない種族でした。称号にも到達者がありましたし。まず間違いないかと」
「なるほど、才能者であるなら苗字が無いのも頷けます。これは領主には話すのですよね?それなら・・・」
「いえ話しません」
「・・・なぜかお聞きしても?」
そこからの内容は長かったので要約するとこうだ。
領主に知られたら国王にも知られることになる、国王に知られたらこの国で管理しようとする、そうしたら僕が反発するかもしれない。反発したら魔王どころか勇者より強いかもしれない僕相手に何もできず甚大な被害が出る可能性がある。
神託で才能者が来ると言っていたのは2年もあとの事、才能者が来る時期がここまでずれるのは魔王と勇者以外にいなかった。それでもし魔王なら魔王で問題だし、勇者なら勇者で勇者を呼ばないといけないほどの大事が起こる可能性があるということで問題になる。パニックを避けるために知らせるべきではない。門番の人に教えたのはかもしれない、と濁して言って一応耳に入れさせておきましたよ?伝えましたよ?っていう建前を作るためらしい。
そして何より、僕がこの世界を見て回りたい、そう言ったからそれを尊重したいのだそうだ
・・・サシャ///
「なるほど、では我々冒険者組合に教えたのはなぜかお聞きしても?」
「それは単純にカイゼ、彼が何か問題を起こした場合、いえ確実のこれから問題を起こすので、どの国にも属していない組合に後ろ盾を頼みたかったんですよ」
・・・サシャ##
「僕はトラブルメーカーじゃない!」
「・・・彼はこんなですし、一応8賢者から彼に対して少しでいいので便宜を図ってほしいという形です」
「なるほど・・・確かに問題を呼び寄せそうですね。わかりました、私の一存では決め切れることではないのでひとまずはこのデビュット支部で問題が起きた場合は手をお貸ししましょう。出来るだけ早く、他の支部のにも後ろ盾をしていただけるよう話しておきましょう」
今、この人僕を顔から足まで見て、また顔を見て渋い顔をしながら言ったぞ!
僕なんてどこからどう見てもそこらにいるようなちょっと中性的なだけの10代だろ!!
それからは情報交換をしていた。最近は魔除け草の群生地にもモンスターが割と来るようになったなど、途中途中気になる話題があったけどほとんどがゲーム時代の振り返りみたいなものがほとんどだった。
かなり退屈な話題が続いたので僕は受付嬢を凝視して遊ぶことにした。もじもじしたり赤面したり・・・へっへっへ お兄さん可愛い子は大好きだぜぇ
バシッ!!
「いたっ!」
「何してんの!!静かにしてて!」
サシャに叩かれた僕を見て受付嬢が少し笑った
それから少しして話が終わったみたいだ。
冒険者組合のランクなどはゲームの時代に聞いて知っていたけど一応確認のために聞いた。
ランクは下から、錫、胴、鉄、銀、金、聖銀、真銀、真鍮鋼、真鋼、神金鋼、神晶、の11段階、だた錫はお使いや採取などの子供でも出来る依頼ばかりで実質15歳未満用なのだそう。それと真鋼は歴史上で17人、神金鋼は親公国初代王の勇者1人、神晶についてはその鉱石じたい本当にあるかどうかさえ怪しいのだそうだ・・・神晶製の装備を持ってるなんて言えない・・・
そして注意点としては聖銀以降のランクは貴族として扱われ、真鋼以上は下手な国の国王よりも待遇がいいそうだ、剣帝のかつ到達者なら神晶にもなれるかもしれないが、現実的なのは真銀、よくても真鍮鋼までだそうだ
注意事項は、各国の法に違反しないこと、ギルドの不利益になるような行為はしないこと、あとギルドを通さない依頼を受けて問題が起こってもギルドは責任を取らない等々ありきたりなものだけだった。
ちなみにサシャは聖銀だった
僕は聖銀ランクの推薦、というより賢者の推薦と剣帝ということで聖銀から始めるかどうか聞かれたけど銅から始めることにした。登録したときにランクをスキップなどはかなり目立ちそうだから、最低5レベルのパッシブが付くようになるまでは面倒ごとは避けたい。この返事にブレッドさんは難しい顔をしてた
ブレッドさんは仕事があるということで僕たちは受付でゴブリンの魔石の換金をすることになった。
「魔石・・・これはゴブリンのですかね?上位種のもかなりありますけど・・・魔石だけですか?右耳の討伐部位は知らないにしても血は無いんですかね?あれもあるなら頂きたいのですが」
「血? 血って何に使うんですか?」
「そっ、それはですね あの・・・」
ん?言いにくそう、もしかして性的な?
「僕ゴブリンの血何に使うのか知らないんですよネ~ 教えて欲しいです」
「あ、あぅ そ、そのですね あの、あれに」
あー 顔真っ赤、うぶうぶやんな めっちゃ可愛い、お兄さん意地悪しちゃう
いやぁこういう初心な羞恥心は中3の冬だったかな、あの頃に母さんが寒い寒いとか言って僕がお風呂に入ってる時に入ってきて、まだ恥ずかしがりやだった僕のJrを盛大にひん剥いたからね、あの時にその手の羞恥心は捨てたよ。
初心な子ってこんなに可愛いんだねぇ
「え~、お兄さんアイシャちゃんから聞きたいナァ~ じゃないと僕わからナイ」
「うぅ~」
ああっ 首まで真っ赤で涙目なうえに上目遣いとか狙ってるのかな?悶えそう。アイシャちゃんはちゃん呼びで決定だね
というか僕お兄さんとか言ってるけど絡み方酔ったおっさんじゃん、高校生くらいの子からしたら24はおっさんか、僕の感覚だと40からがおじさんおばさんだと思うんだけどな
「僕魔石があることすら知らなかったんだ~ 教えて欲しいなぁ~ いたっ!」
「ちょっと 困ってるでしょいい加減にしなさい!」
サシャに耳引っ張られた、結構痛いんだけど
「おいお前!ちょっと顔がいいからってアイシャちゃんに絡んでんじゃねえよ!!」
? 面倒ごと起こしたくなかったのにやっちまったんだけど
アイシャちゃん可愛いしこゆのがいるのは予想できたはずなのに、やっちまった
アイシャはヒロイン候補の予定はありません。ですが割と好きなキャラなので容姿などを書くかどうか悩みました。一応ここに書いておきます。
17歳の人間族、明るい茶色の瞳と茶色い髪、髪形は幼げなショートから大人ぶろうとして伸ばし始めて、いま肩につくかどうかくらいまで伸びたところです。
スタイルは良くも悪くも普通です。顔は垢抜けし仕切ってないけど割と大人気な気もする幼めの子です。美少女?です