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プロローグ


 グルルルルルル

 ドカッ!!!


「ぐぅっ なんなんだよ、HPの残りあとミリなのに何分耐えるんだよ!!

 いい加減にしろっ」


 白く巨大なオオカミの尾の攻撃をくらって吹き飛ばされるのはこれで何回目か。

 

  Last Avalon ~ 最後の理想郷

 通称 ラスター 世界初の超大型VRMMORPG

 10年前にできた新しいゲーム会社『Utopia』。そのゲーム会社が発表したときにはただのデマだと言われたこのゲーム 発表からわずか1年足らずで、カプセル型のVRマシンとゲームデータのセットが発売された。


 VRマシンとは1世紀以上前から研究の進められていた軍事技術だ、だがここ十数年でやっと医療機器として導入できるまでに技術が発展し、値段が低下した。しかしそれでも仮想世界にアバターを設置し、歩く、走る、座る、寝転がる、などの基本動作しかできず、五感のうち。味覚、嗅覚は際限が出来なかった。

 再現できた視覚、聴覚、触覚でさえ朧気で


「夢のほうがリアルだ」


 なんて揶揄される程度の性能しかなかった。


 しかし、このゲーム会社の製作、販売したVRマシンは200種類以上の味を再現し、30種類の匂いすらも強弱付きで再現されている。もちろん視覚、聴覚、触覚も、


「リアルとの違いが判らない。目が悪い人からしたら現実以上かもしれない」


 など言われるほど鮮明で鮮やかになっている。そのVRマシンが30万円、ソフトが自動更新権限付きのものが10万、セットで38万。自動更新権限の突いてないものが2万円、セットで31万8千円。こちらはアップデート更新をするために2千円から3千円の更新費用が掛かる。まあ両方とも税抜きの価格ではあるが、VRマシンとしては破格の安さだ。

 そのため高所得者が冗談半分で購入、プレイし、動画を投稿。その結果反響はすさまじいものだった。


「闇金に借金してでも買うべきだ」


 といわれるほど高評価を受け、プレイ人口は跳ね上がり、今では10億人にもなった。そしてすごいのがプレイヤー一人一人の意見を聞き、反映されたりするところだ。そしてどうしてもこのゲームに納得できなかったら、マシンの代金の半分以上が返金される。そんな運営で経営は大丈夫なのかそういわれているが、リリースから9年がたった今でもつぶれておらず、逆にどんどん会社の大きさがでかくなっている。

 まあゲーム内課金などもあるが今はその話はしないでおこう。



 僕はこのゲーム『Last Avalon』の最終アップデート、「最後の最高の試練」に挑戦している。

 このアップデートは適応から3か月近くたつのに1人もクリアした人がいない。

 理由は単純に難易度だろう。難易度は一人向け5000以上.この次に難易度が高いのがパーティー向け2800前後。

 5000と2800.この数字の差だけでも十分えぐいだろう。そして「最後の最高の試練」はソロ向けだ。

 パーティー向けは1PT最大6人なため人数によって難易度が前後する。

 しかしこの試練はソロ向け、最低5000だ。PTを組み2人になったら7000前後、3人になったら9000前後~

 この難易度は、

 1つの種族のレベルを最大まで上げると70ポイント。 全15種族

 1つの職業の熟練度を最大まで上げると20ポイント。 100職種以上。

 そして装備、装備のポイントは防具の頭、胴、籠手、腰、足、の5種のみでアクセサリーには設定されていない。この防具のレアリティによって加算されるポイントが変わる。今実装されてるのは6段階。

 普通級ノーマル10ポイント

 良質級ソリッド30ポイント

 最上級ハイエンド50ポイント

 面白い(ユニーク)65ポイント

 伝説級レジェンド75ポイント

 古代級アーティファクト100ポイント

この6種だ

 そして最後に装備している称号。称号は称号の入手難度によって変わり最大300、最低0だ。称号ボーナスのある称号のみにこのポイントは適応される。『一般人』という最初から所持している称号などがポイントの振られていない称号になる。

 これらのポイントの合計値を難易度と照らし合わせて挑戦するダンジョン、フィールド等を変えたりする。


 いままでのアップデートなどの評価は非常に高評価だったのに対し、このアップデートは


「エンドコンテンツなのはわかるけど、難易度おかしすぎ。運営頭いっちゃったか?」

「難易度設定間違ったんじゃね?」

「今までは最高だったけど、このアップデートのせいでモチベがダダ下がり」


 等、言われている。非常に評価が低い。

 それでもプレイヤー人口がほとんど減らないのは、この試練を突破した場合、同レベル帯の他の種族と比べて、最低30レベル以上分全ステータスが高い。そしてこの試練を突破しないと行けない。行くことはできるが満足にそのフィールドでプレイできない。といわれれてるフィールドのサイズが、アップデート前の全フィールドの合計の広さの3倍近くあるからだろう。

 PTに最低1人いればそのPTのメンバー全員の全ステータスに25%のボーナスが付く。ぶっ壊れだ。もちろん試練の突破者にも25%のボーナスが付く。


 そのためこの試練は、リリースから3か月近くたつのにかかわらず、挑戦者が一切減らない。いや減るどころか増えているだろう。

 そして


「いくら難易度が上がるからといってソロで行くのは無謀、PTで行くべき。」


 そういわれてるのにも関わず、僕はソロで潜り続けて70回以上通っている。

 え?なんでソロなのか?だって? ハハッ 一緒に行ってくれる人がいないんだよ!悪いか!!


っていうのは冗談で・・・いや冗談でもなくマジだけども、PT募集がされてるのにもかかわらず一人で行ってるのは、僕の称号と二つ名がかかわっている。


 僕は


「一匹狼・カイザ」


 そう呼ばれている。このゲームの世界で所得者の数少ない称号『一匹狼』『孤高の狼』『孤高の頂点』この3種。ソロの称号3種、すべてを所有してる。この3つの称号の効果発揮条件は、

『PTを組まない、またはPTを組んでもPTメンバーが自分一人であること』

 だ。そして、その効果が全ステータスにボーナスが付く。左から10%、12%、15%、そして称号は最大2つ一緒に付けられ、この称号の効果は重複し、その効果は和ではなく積で換算されるため、『孤高の狼』『孤高の頂点』この二つを付け、28.8%の効果が付く。他の称号は重複しなかったり、重複した場合でも積ではなく和なため、この称号がいかに強いかわかるだろう。


 話を戻そう、僕はいま「最後の最高の試練」にソロで挑戦している。そして30分以上ラスボス。最終ボスと思しき敵と戦ってて10分以上もあとミリが削れない。やはりバグなのだろう。


 このVRマシンは安全装置もかなり厳重につけられており、飲食、排せつなど以外はすべてこのゲーム内で出来る。運動した場合の酸欠状態も転んだり攻撃を受けた場合の痛みなども、鈍痛でかなり軽いものであるが再現されている。

 だけど今は違う。敵は巨大なオオカミなのだが攻撃してる時になぜかオオカミの前両足、左後ろ足が斬り飛ばせてしまった。そして匂ってくる濃厚な鉄さびの匂い、血の匂いは実装されてなかったはずなんだけど。それに受けた攻撃が鈍痛じゃない。高校の時にやらかした疲労骨折ぐらい痛い、いやそれ以上かもしれない。咳き込めば血も出るし、あばらがあるはずのところはぺこぺこしてて凹んだりする。


 回復POTもさっき最後の1個を使ってしまった後だ。防御を捨てて攻撃特化で短期決戦の職構成にしたのまずったかな。てかほんとに痛すぎて死ぬ。


「うおおおおおおおおおお!『一閃』」


キーン!


 いや、だからおかしいだろなんでこの馬鹿長い尻尾がこんなに硬いんだよ見た感じモフモフじゃんしかも『一閃』は防御無視の固定ダメージもあるのにダメージ入ってる気がしないんだけど、というかあと1ミリもないようなゲージがなくならないんだけど。


ドカッ!!!

「ぐぅ!!」


 やばいやばいあとHP10%も残ってないし骨折、出血デバフであと30秒もしたら死ぬって、ここまで来たのにそれはきつい。

 しょうがない。最後のMP回復POTを使って賭けに出るしかないのか。同じ攻撃しててもキリがない。それにこれが成功しようとしまいと、寝るんだ、CTが3時間の奥の手使っても寝てる間にまた使えるようになる。ファイ〇ルファン〇ジーとかのエリクサーとか取っておいたりするタイプだけど背に腹は代えられないか。消耗品でもないんだし。


「ふぅ・・・すぅ・・・ふぅ・・・!! 『グルルルルルッ』ってあぶなっ!尻尾伸びるなんて知らないんですど。ちょっとまって5秒くらい『3秒間待ってやる』とか言っていいから待ってってばああああ」


 急げ、体中痛いけどよけながらでいい。PM回復POTを一滴も残さず飲み干せそれが終わったらきっと勝てる・・・よしっギリギリ飲み干せた。ってあぶない。


「ふぅ・・・っ!!『瞬動』、『一閃』」


キーン!


 尻尾がカンター気味に迫ってきてるけど、ここまでは予定どうり、


「ふっ!! 『秘儀・転身』!」


 『秘義・転身』は『奥義・転身』と違って100%成功する。その代わりCTがえぐいんだけども。

 よしっ可愛い?お尻が見えるけど遠い。MPも『縮地』1回と『突角』をつかってギリギリの距離、『突角』じゃなくて『牙突』でもいいけど『牙突』は威力が高い代わりに飛距離が短い。届かない攻撃して失敗するより、多少威力が下がってもいいから確実に当てたい。


「『縮地』!  『突角』!!  届けええええええええええええええええええええええええ!!!!」


ブスリ!

キャイン!!!!!!


 あ、この剣が刺さってるところの周りちょっと奇麗なピンクなんですけど女の子の・・・ってわけじゃないけど。肛門カ ハハッもしかして肛門が弱点ダタノカナ?悲鳴も腕とか切り飛ばしたときより大きいゾ?


 ズシン・・・・


「勝った・・・のか?・・・・・・ フラグ建てても大丈夫・・・

 い・ いやったああああああああああああああああああああああああああ」


 =Congratulations=


 =GM権限でのWorld Chatです。=

 =「最後の最高の試練」が突破されました。到達者の誕生ですお祝いください=


「到達者なんててれるなぁ///」


 =到達者が誕生したため、ファイナルシークエンスに移行します。全プレイヤーおよび、才能者、またこのゲームに興味のあるがまだプレイされていない方々全員を、到達者のいるサーバーに接続します=


 =接続が完了いたしました。これより、このVR世界のデータを箱庭に適応します。体調が悪くなる方もいらっしゃるでしょうがご安心ください。大丈夫ですので。=


 =適応の完了。全玉石プレイヤーの肉体の製作、記憶の転送を開始します。失神をした方もいらっしゃると思いますがご安心ください。順次全員適応されますので必ずあなたの番も来ます=


 =全玉石プレイヤーの肉体の製作、記憶の転送を完了いたしました=


 =到達者の肉体の創造、技能、記憶、等すべての転写を開始します=


 =50%・・・70%・・・90%・・・95%・・・96、97、98、99、100%完了、バグ、欠損部位、などの有無、最終調整を開始します=


 =50%・・・70%・・・90%・・・100%完了・・・ 最終確認を開始します・・・最終確認を完了しました。もし今後到達者、ご本人様に不具合があった場合、私GMによって不具合の確認、調整等をいたします。ご気楽にお申し出ください=


 =それでは玉石プレイヤー皆さん、および到達者、武田開世たけだ かいせ様・・・いえカイゼ様、お待たせしました。私、God Motherの箱庭に転送いたします。=


 =転送完了いたしました=


 =ようこそ玉石皆さん、そして『到達者』カイゼ様、私の箱庭(世界)へ 皆様、切磋琢磨し私のいるところまでおいでください=


 




   =改めまして、ようこそ神ヘの登路、『Highest Avalon』へ、皆様に幸あらんことを=


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