プロローグ
プロローグ
俺は今日も白い扉の前に立っている
少し緊張しているのか指が震えていた
何度来ても緊張する。もしかすると緊張しない日など来ないのではないかとさえ思っている
扉を開けるのが怖いわけではない、いや、嘘だ。
本当は少し怖い、けれど一番怖いのはこの白い扉の中にいる人に会うことだ。
怖いといっても中にいる人は急に怒鳴ったりするわけではない
それどころか人に寄り添える強さと優しさを持ったすごく優しい人だ
・・・・・優しい人「だった」
俺が、壊してしまった
大好きだったのに・・・・だれよりも大好きだったのに
コンコン
「入るぞ」
陽だまりのような彼女はもういない
「今日は遅くなって悪かったな」
部屋の中にいるのは何も映ってはいない瞳でただただ窓の外を見ているベッドの上にいる女性1人
「・・・・」
彼女は何も応えない
俺はいつものようにベッドに近づく
近づくにつれ彼女の身体が少しビクリと震えた
この反応もいつもの事だ
俺はベッドの隣にいつも置いてある椅子にいつも通り腰掛けた
震えの治まっていないベッドの上に投げ出された彼女の手をそっと握り込むが震えは治らない、それどころかさっきより若干激しくなった
自分の所為だということは嫌というくらいわかっている
彼女だって本当はきてほしくないかもしれない
「・・・ごめん、ごめんなぁ」
それでも・・・・
愛しているんだ