光
掘り出した石は、あえて書くとすれば表面が黒く滑らかであるだけの、なんの変鉄もない石であった。僕が丁度抱えられる程の大きさである。
導かれるままに、掘った場所から持ち上げてなんとか地面に置いたときには、その重さと、長く時間雪の上にいるための寒さによる疲労で、僕は呼吸が落ち着くまでの間、後ろに尻餅をついて、じっと空に上る白い息を見上げていた。空は冬の日らしい冴えない青で僕を見返してくる。
一息ついた僕は、膝立ちになって、石に身体ごと向き直った。意識を石に集中させる。すると、『何か』が自分の中から抜けていく感覚があった。集中が急速に深くなっていく。自分の身体が遠くに感じられ、自分が今いる場所がわからなくなってくる。
時間の感覚が掴めずにいたが、不意に、意識が戻った。手足の感覚も確かに感じられる。自分の身体が見える。しかし、息がしにくい、寒いという感覚がない。周囲が真っ暗であることに気づいた。暗いと言うよりも、そこに何もないために闇が広がっているのだと、自分の直感が囁く。立っている場所、踏んでいる所だけに形があるかのように、周囲を見渡してもそこにはただただ黒く塗りつぶされた空間があるのみであった。
…直感?いや違う、これはこの場所が僕に送ってきたイメージだと確信が持てた。なぜかここにいると、いろいろなことが分かってくるようだ。そして、分かったことに確信が持てた。
ここは、『何か』がかつて住んでいた場所と似ているのだろうか。懐かしさと哀しみが伝わってきた。…そうだ、さっき僕から抜け出した『何か』はどうしたのだろうか。ふと、何か視界の外に引っ掛かりを覚えて上を見上げると、そこには、冬の晴れた空に水を一滴垂らしたような、消えそうな青を纏った、形の定まらない光の姿があった。
あはは、データ消えたかと思った…というか、消えたと思って書き直してたよ…。怖かったのでもう少し分割します。