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砂漠(伊坂幸太郎作)の感想

作者: 結城夏夏

この本の存在を知ったのは私が高校生の時、遅刻指導に当たった先生に教えてもらったものだった。正確にはほかの生徒に対して言っていたのだが、同じ部屋で黙々と漢字プリントを書き込んでいた私も聞いてしまった。

体育の先生が自分はなかなかの読書家だと言っており、そんな先生が君たちの年なら砂漠は読んでおくべきだと宣言していたので私は少し気になっていた。

この段階では気になっていただけで対して買いたいとは思わなかった。

しかしタイムリーなことにその日、母がなにか小説が読みたいと話していた。

それならちょうど教師が勧める本がある、と応えたらじゃあそれを買ってきてくれという話になり私に野口さんを一人渡した。


結局母より先に私が読むことになってしまった。

まあ本人の承諾を得ているから問題ないだろう。


さて、本作についての感想だ。

まず思うのは伊坂幸太郎って超能力好きだなーということと、殺し屋が出ないなんて伊坂幸太郎らしくないなということだった。

今回の作品は超能力がメインというわけではないが、レギュラーメンバーにスプーンを曲げたり物を自在に動かしたり出来る女の子がいるのだ。最終的にその力は必要になるのだが。そして人は死ぬが殺し屋は出てこなかった。伊坂といえば殺し屋、やたらと勇気の有無を聞いてくる殺し屋が出てくる印象なのだ。

しかし、この作品に出てくる主役たちは物を動かすことなんかよりもっと大きな力を持っていた。西、西嶋は何に対しても一切にブレない。最初の飲み会の時に言った、砂漠に雪を降らすことだってできるという言葉は私の琴線に触れた。私は麻雀はよくわからないが点数の低い平和をいつまでも作り続けようとしていた。きっと、周りから見るとそんなことにこだわっているのは無駄だと思うのだろう。

西嶋の見た目は冴えない男だ。しかし、今作品一番美人の東堂は西嶋の軸のぶれなさに惹かれ告白して、失恋までする。

西嶋はとても行動力のある男だ。連続強盗犯、プレジデントマンの応援をするがいざ対面すると仙台に大統領はいないと断言する。一度袖にした東堂に会うために十万用意して行きなれない東堂のバイト先、キャバクラにまで単身で飛び込んだ。

私も最初は西嶋のことをこのキャラクターめんどうくさいな、実際にいたら一番関わりたくないタイプだ。と思っていた。しかし最後のプレジデントマンとの対面は私もドキドキしたし西嶋が先の言葉を言った時、ナイスだ、よくぞ西嶋、それでこそ西嶋だと何になのかわからないけど絶賛してしまった。西嶋ならば砂漠にだって雪を降らすことができるぞ。この本を閉じた時、一番好きになったのは西嶋だ。主役は北、北村なのだが。北村は最初と最後での変化が一番大きかった。

北村の語り口調でよく、なんてことはないという。それに毎回引っかかった。

え、鳩麦さんとそんな馴れ初めなの、キックボクシング始めちゃうの、北村らしくない!と毎回思って、なんてことはないというのにホッとするのだ。結局鳩麦さんとは付き合っていたけど。

北村は真面目だ。首尾一貫して真面目な男だ。鳥井のように今時の大学生らしくない。講義には必ず出るし、合コンにも長谷川さんたちとの一回きりだ。堅実な男だった。本作では鳥こう型と表現されている。主観的になることはなくきちんと考えることができる。プレジデントマンに襲われた時も驚いてはいたが主観的になることはなかった。そういった面で私と似ているなと思った。

しかし、客観的に物事を見られるからといっても一匹狼なわけでもない。

ちゃんと鳥井や西嶋達という友達が居る。

学祭を楽しんでいる時は学生らしいと思った。

そして、鳥井さん然り鳩麦さん然り鳥がよく出てくる。

鳥多いなーと思いながらページをめくっていた。

そして衝撃的なのは鳥井が片腕を失ってしまうことだ。

鳥居は元同級生であり可愛い彼女でもある南や仲間達の支えによって事実を受け入れそして最後には足だけで悪者を蹴散らすことが出来るほどになった。

最初に言った超能力者が南のことなのだが、鳥井は片腕を失っていてもジムに通って悪党に立ち向かった。対決だ。西嶋は常に世界へ対決している。北村は、大学生活で培った物をもち、これから社会という名の砂漠へ出て対決するのだ。東堂は法学部を卒業したがケーキ職人を目指して修行をするらしい。おいおい、どういう心変わりなのだ、とつい心の中で突っ込んでしまった。伊坂幸太郎と話す機会があれば東堂はあの作品後どうなったのか聞いてみたいものだ。


最初に書いた、この本を教えてくれた教師が高校卒業を目の前に控えた私たちに砂漠を勧めたのはとても納得がいった。この本は大学生になる前に読んだほうが面白いだろう。そして大学を卒業する前にももう一度読んで自分がこの作品をどう消化するのかを楽しみたい。

きっと今の私とはまた違った感想を書くだろう。


この作品に出てくるとても強い意志の持った登場人物達に感化され、私も動物管理センターにアクセスして保護期限があと一日の犬を引き取って大学生になった時のために麻雀の練習を始めることにした。

なんてことはない。


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― 新着の感想 ―
[一言] 『砂漠』面白いですよね。伊坂作品の代表『ゴールデンスランバー』よりも面白いと思っています。 筆者様と同様、私も西嶋が好きです。あの小説は西嶋のための小説ですよ。所々に登場する名台詞は全て西嶋…
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