これはなんてサスペンス(笑)
ミステリーの苦手なわたしが、探偵をしていた。しかもわたしだけでなくわたしの家族を含めた50人が。
物語は職場のちかくで犬を拾ったことからはじまる。
彼または彼女は、かなり太ったスコティッシュホールドで、その黄色いふさふさモコモコした毛のうえから緑色の洋服を着せられていた。
それは洋服というよりも、ジッパーで開け閉めできる、手を足として使う犬がなにかを持ち運べるようにしたキャリーバックといった感じで、ジッパーをはがすと内側にポケットがあった。
わたしは白いブラウスに黒のタイトスカート、それにおそろいのジレーとジャケットを着こんでいた。制服のように見えるそれからして、ホテルの従業員という設定だろう。
コンビニかなにかの路上で、ひょこひょこ歩いてきたその犬を見かけ、はて飼い主はいづこにと周りを見渡し、犬をよくよく見ればポケット付きの服を着ている。
「まさかこの中に重要なものが隠されているとかないよね……」
ミステリーの読みすぎだと自分を笑いながら、ポケットのスナップをはがすと、それはあった。
黄色い紙に印刷された横書きの文字と、フィルムケースのようなもの。紙の一番上には黒バックに抜き文字で、「脅迫状」とご丁寧にも大書してあるようだった。
そこから職場にかえり、友人同僚、先輩に助言をあおぐうち話はひろがり、犬を警察に届けたり、犬の引き取り手が現れたり、みんなで鍋を囲んだりする。
犬が運んでいた紙の文字がどうにも気になったわたしは、犬の引き取り手を訪ねて行くのだが、留守であった。
車をだしてくれた父や妹(実際の妹とはまったく別人であり、見知らぬ人の気がしたが、まぁ夢だからそんなもんだろう)に友人一同(どうやら50人の規模になっているらしい)と手分けしてその家の住人の安否を探ると、軒をつらねた2軒先の家の主婦が、2、3日前から留守だという。
さぁサスペンスのはじまりである。
とりあえず帰ってくるのを待とうと、教えてくれた主婦のご厚意に甘えて家にずかずかあがりこみ、また鍋なんぞをつつく。この夢を見ていたその時、わたしはお腹がすいていたのだろうか。寒かったとか?
一晩まっても訪ねた先は帰ってこず、不安になったわたしたちは、家の中に潜入することにした。
一緒に親切な主婦の家にちゃっかり泊まりこんだ父と妹は仕事とやらで帰り、軒をつらねた他家に分散して泊まっていた友人たちが、潜入捜査につきあってくれることに。
そうそう、家に入るまでにひと波乱あった。
どういう構造になっているのかいまいちわからないが、それらの家は切り立ったがけ(?)の上に建っている。一見、玄関のある表側からしか出入りできそうにないが、そのがけをぐるりと回った裏側に、細~い階段があった。
着いたときにはきづかなんだが、父と妹が見つけたらしい。
「ミステリーだとそういうところに不審者が………」
と笑っていたら、案の定、怪しい人影を発見。
目があったわたしに、階段の底から彼が、
「やっぱりいたな!」
と叫んだ。意味がわからないが。
彼を捕まえようと、持っていた箸を矢のようにして投げつけるわたし。
その時、なぜか彼の横の窓があいて、外国人と思われる人々がわらわらと出てきた。そして、カタコトの日本語で彼を逃がそうとすべくなかへ誘導している。
阻止しようと、またも箸を投げるわたし。
相当するどい矢だったにもかかわらず、その中のたおやかな女性(金髪をおかっぱ風に切りそろえ、テロンとしたパステルカラーのワンピースを着た20代くらいの)に、受け止められてしまう。
ここら辺がさすが夢である。
「鋭い突きだったのに……!」
一緒に朝餉をいただいていた家族に愚痴っていると、食卓のテレビに下にいた不審者のひとりが映っている。
アラブの首長かカルザイ氏かというような白と黒の民族衣装を着た、髭面のおっさんは、シリアだかの首長として、紹介され、さかんにフラッシュをあびていた。
わたしたちに押しかけられているにもかかわらず、ニコニコと笑って朝食を一緒にとっているおばさんは、
「あぁなんか来日しているみたいだね~」
と、のんき気に教えてくれた。
さて。件の家に押し入った我ら。
鍵はどうしたのか知らないが、ずかずかと入り込み、中をあさって……もとい、住人を探していた。
泊めてくれた家と似たような間取りの、せまいキッチン、リビングと抜けてゆくうち、友人たちが続々と集結してくる。
人目につかないようにと(そんなわけないのだが)慌てて家に押しこむわたし。ふと高台の玄関から下を見下ろすと、傘をさした人影がある。
ぎょっとしたわたしに友人のひとりが、別の友人の名をつげて、「見張ってもらってるの」だそうな。
家の捜索はつづき、「やっぱりこういうときは大人数じゃないと」「安心だよね」などと言いたれつつ家探し。
「こう言うときはお風呂場にー」言いかけて風呂場を覗くと、はたして深めの浴槽に、人の頭と思われるものが見えた。
水をはっているらしく、ゆらりゆらりと黒い髪が揺れていた。
その場にへたり込んだり、続けて覗こうとする友人を「現場保存!」と叫んで制したり、「いやここの電話は使えないんじゃない?」とのんきにのたまう友人たちにわめきながら携帯電話を借りて110し、相手が警察だと確認してから「死体をみつけました。住所はー」と、目の前の緑色の住所表示を読み上げようとしたところで目が覚めた。
今度小説のネタとして使おうと思う。