初めてみた地球は。
これはいつ見た夢だろう……?
はじめて見た地球は、とても綺麗だった。
白いシーツのかかった、クイーンサイズくらいのベットが二つ並んだ、銀色の広い部屋の、天井一面につくられた窓。
ベットに寝転んでそこから眺めた星宙は、ほんとうに綺麗で。
「わたし」は星座図などほとんど知らないはずなのに、「あれは白鳥座、あれはふたご座」なんて、そらで言えていた。
知らないといえば、わたしは映像以外で地球を、宇宙から見たことなどない。
どうやらその銀色の部屋は、宇宙ステーションの一角にでもあるようで、大きな天窓の端にちらりと、気象衛星の映像でよく見かける、羽のような二対の銀色のパネルが見えた。
部屋のベットはふたつ。自分が寝転がっているベットの横のそれは、シーツがくしゃくしゃと捲れあがっているから、誰かが寝て、起きたのだろう。
その見知らぬ誰かは、シャワーを浴びた直後のようで。銀色の部屋の横の扉、湯気がほんのり漏れ出している部屋で幅広の洗面台に屈みこみ、鏡を覗き込んでいるようだ。
「星がとても良く見えて、綺麗。こんなくっきりと見えるとは思わなかった」
わたしのそんな声に、生返事を返す見知らぬ彼は、横顔しか見えない。
栗色よりいくぶん濃い髪。濡れた状態でも襟足にかからないくらいの短さで、それなのに乾かすのが面倒なのか、タオルは首にかけたまま。
高い鼻と、栗色の片目。そしてバランスよく筋肉の付いた肩や胸、腹筋。筋肉のかたちがよくわかる太ももと、長いすね。片側だけであっても、タオルに隠れていない部分はよく見える。
彼が、下着しか身につけていないから。
そんな無防備な姿をさらし、話しかけるわたしもそれをなんとも思っていないようだから、彼は恋人、すくなくとも肌をあわせたことが何度かある相手なのだろうか。
その割には、彼とわたしの間にはよく知った者同士の気安さはあれど、甘やかな雰囲気はない。
うん、恋人ではないな。
わたし達は何者で、ここで何をしているのか。
ふたつのベッドと床と壁と天窓しかない銀色の部屋は生活感がなく、ホテルの部屋を連想させる。
けれどただの旅行者ではないようで、フラッシュバックのように、他の部屋で立ち働いている仲間の映像が見えた。
あぁ、こうして書いている間にも、見たはずのほとんどの画がこぼれおちてしまったけれど。
これは、いつか来る「未来」の想像図なのだろうか。
だったら、いい。