お見合いオバサン
久々に描きたくなる夢をみました。
お見合いおばさんになった夢を見た。
と言っても、エコバックから釣り書きをだして「いい娘がいるのよ~」と言っていたわけでも、
「本日はお日柄もよく~」なんて着物を着てホテルか料亭で言っていたわけでもない。
行きつけのレストランのオーナー兼料理長が肉食女子お嬢様達に囲まれている現場に居合わせ、
「ヤレヤレしょうがない」とぼやきつつ、手助けしたのがきっかけである。
ただの馴染み客の分際で、ずいぶん上から目線である。
ついでにそのレストランは新鮮な魚が売り物の、ヌーベルキュジィーヌ風。材質はわからないが、真っ白で奥行きのあるカウンター席の隅から二つ目が、「わたし」の指定席である。
どうやらグループでホテルもお持ちらしい。
そしてオーナーである彼は、不機嫌な時は凶悪な顔になるが、精悍な顔に鍛え上げられた身体を持つイケメン様である。
馴染み客にすぎない「わたし」が彼の身体まで何故知っているかと言うと、サービスシーンとして彼がシャワーを浴びる
上半身(腰骨ぎりぎりまで)を見たのだ。
お尻は見られなかった。残念。
で。
イケメン君で話題のレストランのオーナー、さらに漫画チックに金持ちらしい彼は、有望な婿とりをせねばならないお嬢様達に狙われるわけで。
わたしがそのレストランでいつものごとく飲んでいたらば、布地をけちったお高そうな服に、磨き上げた身体を押し込んだ妙齢の外見美女たちが、カウンターに鈴なりになっていた。
あくまで人ごとと見守っていたらば。
艶やに微笑むお嬢様達に押し切られ、奥の厨房から出てくるオーナーシェフ。
常連客以外でも不機嫌だと気づくくらいに、眉間にしわを寄せている。
その眉間に気づいているのか、気づいていても無視する気なのか。
笑顔をさらに輝かせて、提案を持ちかけるお嬢様達。
単なるお見合いではなく、彼の持つホテルへの提携話を持ってきたらしい。
何人かいるうちで、真ん中の二人が特に強気である。
***
場面変わって何故かプールサイド。
扇情的な水着姿のお嬢様達が、デッキチェアにしどけなくもたれかかってお待ちかねである。
対するオーナー君とその仲間達(レストランで見かけた)は、コック服のまま。
オーナーの彼に至っては、さっき店を出る前にシャワーを浴びていたのに。
コックゆえに、あれが彼の戦闘服なのだろうか。
お嬢様方が取引の材料として持ってきたのは、ベッドである。
スプリングの良くきいた、適度な硬さが安心のベッドではなく、ウォーターベッド。
水を使っているからプールサイドなのか?
残念ながら夢を見ているわたしにその知識がないため、ウォーターベッドの描写は適当である。
お嬢様達は自信満々な顔で、自慢の自社製品を紹介している。
オーナー君は鉄仮面のような無表情である。
腕まで組んだ仁王立ち。背が高く筋肉質だけに無駄に威圧感がある。
彼の態度に若干腰のひけているお嬢様方もおられるが、先にあげた真ん中のお二人の笑顔はこ揺るぎもしない。
一流のお嬢様はメンタルも強いらしい。
何故かプールの水の上に浮かべられた各社のベッド。
お嬢様達の合図で、どこにいたのか黒子のように同じスーツを着こなすスタッフが、ベッドのセッティングをしている。
水の上でゆらゆら揺れるベッド達。気持ちよさそうだ。
無表情のままお嬢様達に「試しても?」と声をかけ、艶然とした微笑みを一瞥すると、いきなりベッドに飛び乗るオーナー君。
衝動的な人である。
それなりに重量があるだろう彼を優しく受け止めるベッド。
その上で何度か弾んで寝心地を確かめる彼。
ポンポン景気良く飛んでいるのだから本心では楽しんでいるのだろうに、お嬢様達の前だからか無表情のままである。
何度か試して満足したのか、トランポリンの要領で隣のベッドに乗り移る彼。その後をついて来た部下達が続く。
コック服の男たちが、無表情のままプールの水に浮かんだウォーターベッドの上で寝転びはねている。
シュールな光景だ。
一通り試して満足したのか、プールサイドに飛び降りた彼が小さく頷いたのを見届けて、強気のお嬢様二人が金額を提示してきた。
他のお嬢様は交渉を諦めたのか、背景と化している。
ホテルに配備出来るくらいのウォーターベッドが、一体いくらするものなのか知らないけれど。「500台を配備するとして~」と提示してきたの金額と条件は、おそらく破格のものなのだろう。
無表情で聞き終わった後彼が「決めたら連絡する」と返したのに、初めて愕然とした表情で立ちつくしていたから。
で。
何故か部外者にも関わらず、その一部始終をプールサイドで見物していた夢の中のわたしは。
その時点で彼から、そのお嬢様二人に興味が移ったらしい。
飲んでいたフローズンダイキリかモスミュールのカクテルグラスで口元を隠しつつも、にやりと笑ったのが、我ながらゲスイ。
夢の中のわたしもやはり、性格は悪いらしい。
*****
またまた場面変わって、今度は別のホテルのオープンカフェ。
やっぱりプールが隣にあるそこで、彼女達は別の男達とお見合いをしている。
オーナー君相手の時と違い、ものすごくつまらなそうな顔をして。
彼女達の別のテーブルでは、彼のレストランでも見かけたお嬢様達が、時折相手を入れ替えながらやはりお見合いをしているようだ。
本日の強きお嬢様達は、豪奢なドレスに身を包んでおられる。
美しく結いあげた髪に飾られたヘッドレストがでかい。彼女達の顔より大きいそれをのせているのにピンと伸びた背筋がさすがと言おうか。
これでオーナー君に向けていた笑顔を装備すれば完璧だろうに、仏頂面のまま。このお見合いには乗り気ではないのだろう。
あ~確かに。
お前何様だとそしられるのを承知で書けば、彼らはイケメンではない。
身にまとうモノこそ豪華だが、片方は浅黒い肌と黒い巻き毛以外には特徴のない中肉中背。片方はやや小太りで特に顎とお腹周りがたるんでいる。
顔も、メイクか照明かヘアセットもしくはタキシードのようなジャケットのジャンプアップ効果のおかげかイケメン「風」にはなっているが、ぼんやりとした表情で台無しである。
対する強気お嬢様達に完全に位負けしている。
勝気さが前面にでているものの、鈴をはった大きな瞳。
ぬばたまの髪に内側から輝く、抜ける様な白い肌。
胸元の大きく開いたドレスからのぞく小山はなんとも美味しそうで、特に膝小僧の出っ張りもなくまっすぐ伸びた脚はお二人とも絶品である。
ドレスに深くいれられたスリットからそれを拝んだのではなく、何故かお見合いの途中でお二人とも着替えをして、階段から降りて来てくれたので、存分に鑑賞できたのである。
ほとんど会話もなく先の二人と見合いを終えた後、今度は別の二人とお見合いである。なんとも忙しいことだ。
今度の二人、片方は現役Jリーガー、もう片方の職業は忘れたが二人とも中々の良いお顔。
特にJリーガーの彼は嫌みなく陽に焼けた顔が精悍で、ラフにはおったスポーツコートが良く似合っている。
お嬢様二人もニコニコしながら会話を楽しんでいるようだ。
そんなお見合い風景を、同じレストランでランチを取りつつ見物している「わたし」は何者なのだろうか。
いつ仲良くなったか知らないが、二つのお見合いを終えた彼女達と、引き続きレストランでお茶をするわたし。
同じ席でお見合いをしていたことからも分かるように、彼女達はライバルと書いて友達と読む間柄らしい。
「一家を継ぐお嬢様ともなれば、忙しいねぇ」と呑気にわたしが言えば、「あら暇だからこんな事しているのよ?」と彼女達がつまらなそうなため息とともに返す。
ちなみに彼女達は先ほどお色直しをした、スポーティーなワンピースのままである。
テニスのスコート並みに短いスカートからこぼれる太腿が眩しい。
「正直結婚相手に夢なんか見ていないし、興味もない」
どちらが言った言葉か忘れたが、二人とも浮かべ、疲れた様な表情が物悲しい。
そこでわたしのおせっかいが炸裂である。
何故か隣のプールサイドに場所を移して、わたしの諭しと言う名のおせっかいが続く。
「よ~く考えてごらん? 例えば最初に貴女がお見合いした彼」
そこでこれまた何故か、プールで水遊びに興じているお見合い相手のひとり、中肉中背君をさす。
彼の周りにはあられもない水着に身を包んだ美女たちが。
「彼なんてムスリムだから、一夫多妻制だよ? しかも愛妾の人数制限なんてないから持ち放題。その費用をだれが持つのさ」
一応断っておくと、一神教である事以外は、わたしはイスラム教に関してなんの思いもない。
ハレムの維持費は当然ハレムの主が持つものだが、夢の中では彼は婿入り候補の為、入り婿の分際でそんなことは出来ないと思うが、結婚すれば「彼女が」その費用を持つとわたしは示唆しているようだ。
しかもそれに「気づいて」彼女は顔を強張らせている。
「んで、そのハレムをうらやましそうに眺めている彼」
続いてわたしは、お見合い仲間の横で水にちゃぷちゃぷ浮かびながら、相変わらずぼんやりとした笑顔を浮かべている小太り君をさす。
「欲しいものに対してもあんな顔しか出来ない人間と、毎日過ごすんだよ? 失敗したら離婚すりゃいいかもしれないけど、それまでの時間が勿体なくない?」
なんとも酷い言い様である。
お前は本当に何様だと言うお叱りは、甘んじて受けよう。
それでも彼女達には効果的だったようで、何かを決意した様な表情を浮かべて、もう片方のお見合い相手であるJリーガーと人のよさそうなイケメン君を連れてきた。
二人ともいつの間に貰ったのか、Jリーガーの彼が所属するクラブのオフィシャルタオルを首から下げている。
ちなみに付き合いが良いのか、Jリーガー君と人良さイケメン君も、タオルを装備。やはりシュールだ。
お嬢様二人の横にそれぞれ腰かけ、Jリーガー君はがわたしにもタオルをさし出しつつ、あくまで真面目な顔をして言う。
「いや先ほどの言葉は僕の胸にも刺さりましたよ。僕も付き合いだからとこの場に来て、適当に相手を見繕うなんて失礼な事を考えていましたからね……」
隣を見れば、人良さイケメン君も苦笑を浮かべている。
彼も似たような事を考えていたということだろう。
「結婚は大事なことだもの。真剣に考えてみるわ」
オーナー君の事はとっくに諦めたのか、Jリーガー君達の横顔を見つめて、お嬢様達が決意表明。
それになにか返そうとしたところで、旦那さまに起された。




