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あまりにも凡庸な。 これはホラーかサスペンスか。

喜劇と言う手もある。

 これはホラーに分類すべきなのだろうか。

 それともサイコサスペンス?


 大げさな煽り文句をつけるならば、「巨大な国家の陰謀に立ち向かうレジスタンス達!」でるあるとか、「サスペンスと最新のVFXが融合したスペクタクル!!」であるとか。


 あぁ、お色気シーンもあった。

 ドラマ前半の鍵となる少女。

 顔や言動、服の上からみて16、7歳と思い込んでいたが、ある屋敷に忍び込むシーンでポロリと見えた胸と丸いお尻は成熟していた。

 いやとても綺麗でした。ありがとう。



 たぶん久々にこんな夢を見たのは、映画「トパーズ」の原作者にして監督さんのエセーを読み返していたせいかもしれない。

 それから自分のブログの過去ログを。


 どちらもその当時のメディア報道について、政治について、経済についてなんぞを気ままに(彼の方はそうでもないかもしれないが)書かれたものだ。

 だから自然に、頭の中がそのチャンネルに合わさってしまったのかもしれない。



 ***


 物語はどこかの戦国バサラな国から始まる。


 主要人物が銃刀法違反どころか機動隊をよばれそうなほどの銃装備、鎧や槍、刀を日常的に身につけているのに、小物や言動にちょこちょこ時代考証からするとおかしなものが混じっている状態。



 わたしはいつも夢のごとく、それを俯瞰して、時に密着して観ている。



 彼ら―――主人公達―――はその舞台となる国の、中小姓であったり、一個中隊を率いる立場であったりする青年達のようだ。

 名前はうろ覚えであるが、主君にお目見えでき、作戦会議に参加するだけではなく、重要な任務を帯びるくらいの立場。


 で。裏切り者である。


 彼らの主が暗愚か暴君だからなのか、他に主家がある草なのかはわからない。

 わからないが、主が直接かかわっている大規模な作戦の場で、主とその幹部達もろともを打ち取ろうとしている場面である事は、会話からわかった。


 ちなみに彼らが潜んでいる場所は、元々の持ち場である櫓の様なものの最上部。

 櫓と言っても間に幅広い道をはさんだ街道のように連なっており、木で組まれた城壁のようなもので。

 彼らがいる最上部は、上に瓦屋根がのり、板戸でふたをできる窓のついた廊下。

 その窓から太ももの辺りまで身体を乗り出した状態でいるのだ。


 もちろん彼らは鎧で身を包み、腰には刀を履き、ある者は背中に槍や斧を負っている。

 高所恐怖症気味のあるわたしからすれば、今にもまっさかさまに落ちてしまいそうで、作戦の成否そのものよりも、彼らの状態にドキドキが止まらない。



 あぁ間道の入口に、彼らの主、いまこの時は打ち取る相手の一団が、入ってきた。

 鹿毛に金色の馬具をつけた馬にまたがる主を真ん中に、華やかな一団がゆっくりと近づいてくる。

 彼らを歓迎しているのか、舞う紙吹雪。あがる歓声。

 あの鹿毛がちょうど真下に来た時、仕掛けるぞと息を殺して彼らは――――――。

 というところで場面が切り替わった。




 ***



 お次はひとりの少女が逃げている。

 何から逃げているのかは分からないが、走りだしてから時間はかなり経過しているようだ。

 まだ余裕はあるものの、既に息は弾み、その白いガーゼを重ねた様な薄い短衣チュニカには、葉っぱや小枝がついているから。


 彼女がいま走っているのは、彼女の頬のあたりまで伸びた草が茂る原っぱで、小高い丘へと続いている。

 そして彼女の前方、小高い丘の上には白亜の館が。


 豪奢というよりは壮麗なその二階建ての館は無人らしく。大きなガラス窓から見える煌々と灯りのつけられた広い室内には、人っ子一人いない。


 周囲を警戒しつつ、彼女が窓からするりと中に忍び込む。

 明るい場所で見えた彼女のいで立ちは、まるでギリシャ神話から抜け出てきた様で。薄い布を何枚か重ねた襟ぐりの深い布地を革と金属でできたベルトで留めている。

 細い二の腕には幅広のバンドが。腕輪もしているようだが、わたしにすれば装飾過多に思える上半身に反して、彼女の足を覆うのは、太ももの半ばまでしかない布と、脛まで覆う編み上げサンダルのみ。

 季節が良く分からないが、寒そうである。



 彼女がはずんだ息を整え、用心深く周囲を見回し、カーテンの裏まで確かめてから。

 おもむろにチュニカの裾をまくって真っ白いひとりがけソファに腰掛けた。

 どうやら彼女は下着をつけていなかったらしく、そこで彼女の丸いお尻が見えた。

「服は汚れていますけれど、こうしてまくればソファは汚れませんからね~」

 なんて何もない空間に向かって言い訳する彼女は可愛かった。



 彼女がソファに腰を下ろし、その柔らかさに負けてか背にもたれかかろうとした時。

 そのリビングの様な広い部屋に、誰かが入ってきた。


 驚いて飛びあがる少女。

 彼女が飛び起きた拍子に、いつの間に寛げていたのか襟元から豊かな胸がこぼれ出た。

 ここはサーヴィスシーンだったのだろうか。


 入ってきたのはこの館の住人らしい、ローティーンの女の子であった。

 ゆるく編んだ金色の髪。瞳の色は忘れてしまったが、見なれぬ人間(少女)がソファに座っているのを見て不思議そうに眼を見開いている。


 少女が彼女になにか言っていたが、その台詞は忘れた。

 取りあえずその言葉で彼女はひどくあわてている。


 少女の後に彼女の兄と思われる、顔立ちの良く似た青年が入ってきて、同じくポロリ要員である彼女になにか言っていたが、それも忘れた。

 敵対する言葉でなかったのは、彼らの表情で覚えている。





 ***



 そこからまた場面は転換する。

 こんどはぐぐっとシリアスで、「残虐な描写あり」な状況に。



 登場人物もほとんどが中高年、壮年のおば様おじ様である。

 彼らはどうやら全体主義で統制主義の政府に「支配」されつつあるらしく、その状況を是正しようと闘う闘士らしい。


 なにしろ夢なので、場面がぽんぽん飛んでいく。

 闘士の中でも中心人物の一人らしいおじ様は、九州を地盤とした失言を良く指摘される政治家くんに似ていたが、彼もまた熱い男のようで、拳を突き出し、さかんに「政府の横暴」を非難していた。

 なんの集会か分からないその会場。

 そこは灰色の空の下、崩れかけたコンクリートの建物に囲まれた場所で、映画「ハン○ーゲーム」を思い浮かべてもらえばわかりやすい。


 映画と同じように、一見して分かるほど質の良いスーツとコートを着込んだ政府関係者が壇上でなにかを通達している。

 映画と違うのは、彼らが一様に無表情か、目がまったく笑っていない微笑みを浮かべているところか。


 彼らが何かを話すたび、麻○くん似の彼が拳を突き上げ非難する。

 群衆は押し黙ったまま。コンクリートの建物と同化するように、彼らの輪郭はあいまいで、ぼやけて見える。


 そして。政府関係者と○生くんの応酬がしばらく続いたあと。

 政府関係者の背後からいきなり、触手が飛び出してきた。

 ここが、「最新のVFX」の場面である。

 見ているわたしが、その手のもの嫌っているせいか、その触手はホラー映画で良く見る形状ではなく、木の枝と蔓の中間のような色と形状であった。

 ただし。その触手の先には、歯のついた口がついていた。


 触手は全部で3本。それらがうねうねと動きながら、麻○くんとその仲間たちに襲いかかる。

 巻き込まれまいと悲鳴を上げて逃げまどう群衆。

 迫る触手に、さすがに顔をひきつらせる○生くんが大写しになる。

 それと対比するように挿入された政府関係者の顔。通達時となんら変わらず、薄笑いを浮かべたままなのが不気味だった。




 そんな阿鼻叫喚の状況を、会場の隅で冷静に携帯のようなもので撮影している人間がいた。

 麻○くんの仲間のおばさまである。

 ときっぱなしの白髪まじりの髪に、彼女が過ごした歳月が決して平穏なものでなかった事を物語る皺が、目元口元に深く刻まれてはいるが。

 着飾ればいまでも十分に美しい、整った顔立ちをしている。


 そんな彼女が、仲間を助けず撮影している。

 おそらくその映像を使って、全国の仲間に共闘を呼びかけ、全世界にこの窮状を訴えようというのだろう。


 その予想は当たっていたらしく、ある程度の映像を撮った後、静かに会場を離れようとしていた彼女の前に、男達が立ちはだかる。

 壇上の政府関係者と同じような薄笑いを浮かべて、彼女に映像を渡すように迫る彼ら。その内のひとりは顔の上半分を隠すマスクつけている。

 彼らを睨みながら、じりじりと後退する彼女。

 迫る男達。マスクの男の手が彼女の荒れた手に触れようとした時―――。


 ヒーローの登場である。

 まぁヒーローというか、触手から見事逃れたらしい麻○くんが、彼女と男達の間に降り立ち、叫ぶ。


「撮れ! この臆病もの達も一緒に撮って、晒しちまえ!!」


 言うが早いか、マスクの男に踊りかかり、引き倒し、ヘッドロックをかけてマスクを毟り取ろうとしている。

 さすが熱い男である。攻撃には攻撃を。敵に遠慮はいらねぇということであろう。


 自分より弱い立場を追い詰めるのは得意でも、攻撃には弱かったらしい。

 マスクの男はじたばたと手足を振り回して抵抗していたが、結構あっさりマスクを取られていた。

 カメラが大写しになり、マスクの下にあった痘痕の残る凡庸な顔を映し出す。

 その顔と、いつの間にか駆けつけていたらしい他の闘士に羽交い絞めにされた男達の顔を、彼女が容赦なく記録していく。



 その情けない姿が。

 なにかある度にフラッシュを浴びながら、一斉に頭を下げるどこかの誰か達の姿に重なって。

 妙に白けた気分になったところで、目が覚めた。

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