壁ドン マッシュルーム編
本編との繋がりは一切ありません。
攻略キャラとお姉ちゃんが恋人設定。
時期未定(加賀谷の背が伸びていないのでまだ真梨香2年生の間かと)
糖分過剰。
お姉ちゃんがデレ。
キャラ崩壊。
本編との繋がりは一切ありません。(大事な事なので以下略)
「つっかまえた!」
サラサラの髪が揺れ、ぱっちりと大きな二重の瞳と向かい合う。細い肩の両脇に手をついて逃げられないように囲えば、幼さの残る双眸がびくりと震え、俯いた。壁ドン状態で恋人に迫る図、といえばよくあるシチュエーションだが、いかんせん、追い詰められてるのが小柄な美少年、追い詰めているのが長身の女では違和感しかない。
「散々手こずらせてくれて…覚悟はいいかしら? 加賀谷君??」
「先輩…話なら、他所で聞きます…あの、いったん離してください」
「いやよ。離したら逃げるでしょう?」
「もう逃げませんから…っていうか、ここ、何処だと思ってるんです? 普通僕を掴まえるためだからって、男子トイレの前で待ち伏せとかどうかと思います!」
「しょうがないじゃない。朝から目が合えば逸らす、話しかければ適当な事を言って逃げる、休み時間に教室を訪ねたら反対側の出口から逃げてる。その点ここなら入り口一つしかないもの。出てくるところを掴まえられるでしょう?」
「手段を選ばなさすぎです! 慎みってものがないんですか?!」
外で待ってただけありがたいと思って欲しい。今日一日、年下の恋人に避けられ続けた私としては手段なんて選んでいる場合じゃなかったんだもの。昨日までは普通だったというのに、私は何か彼に避けられるようなことをしただろうか……? 考えれば考えるほど心当たりが出てくるので困る。
「……やっぱり、こんな慎みのない年上の、自分より身長も高い女なんて、嫌になるわよね…」
「え…?」
「加賀谷君は女の子らしくて華奢で小柄で慎み深い子の方がいいのよね…」
自分で言ってて悲しくなるほど、好かれる要素がない。こんなんじゃ加賀谷に嫌われても仕方ないのかもしれない。どんどんネガティブになる思考に涙まで浮かんできた。
「ちがッ…!! 違います。先輩の事を嫌いになるなんてありえません!!」
「じゃあどうして今日一日私の事避けてたの?」
「そ…それは……」
加賀谷は視線を彷徨わせ、気まずそうに口ごもる。やっぱり何か嫌われるようなことしたかなと思い始めた時、加賀谷が突然ガバっと頭を下げた。
「すみませんでした!!」
「え? ええ??」
「き、昨日放課後図書館で一緒に過ごしたじゃないですか。…先輩途中で転寝しちゃって……それで、僕……つい……先輩に…キスを……」
頭を下げたまま訥々と語る加賀谷の耳も首も真っ赤だ。伏せられて見えない顔もきっと真っ赤なのだろう。見てみたい衝動に駆られるが、今は無理だ。
「…はぁ…」
「あ、やっぱり怒ってますよね?! 僕…っ!!?」
私のついた溜息にパッと顔を上げようとした加賀谷に頭突きをお見舞いして踵を返す。しばらく後方で苦悶の声が聞こえたが、慌てて立ち上がり、追ってくる足音がして、腕を掴まれた。振り返るのをこらえてそっぽを向く。
「ごめんなさい、怒ってるんですよね?」
正面に回り込んで来ようとするので、こちらも体を捻って背を向け続ける。しばらく無意味にぐるぐる回り続けていると、加賀谷がふと何かに気づいたように動きを止めた。
「あれ…? 先輩、耳が真っ赤で…っ!!!」
指摘された瞬間、高速で振り返り、二度目の頭突きをお見舞いする。加賀谷が頭を抱えて蹲る。
「…怒ってるわよ。…怒ってる。……だから次はちゃんと起きてるときにしなさいよね」
それだけ言うと、蹲ったまま呆けている加賀谷を置いてダッシュでその場を走り去った。
「あ、ちょ、…待ってください! 先輩!!」
攻守交代の鬼ごっこの始まりである。
まさかの逆壁ドン
加賀谷少年が真梨香さんを壁ドンできる日はいつになるやら…。