壁ドン 林檎坊や編
本編との繋がりは一切ありません。
攻略キャラとお姉ちゃんが恋人設定。
時間軸未定。
糖分過剰。
お姉ちゃんがデレ。
キャラ崩壊。
本編との繋がりは一切ありません。(大事な事なので以下略)
「…じっとしててね。お姉さん」
そう言われ、狭い路地裏で息を殺す。じっとしてるも何も、視界は重ね着のパーカーとジャケットで占められ、ほぼ密着状態で身動きは取れない。背中は路地の壁に押し付けられている。
路地の出口、少し曲がった道の向こうをバタバタとあわただしく走っていく男たちの声が聞こえて、そのまま遠ざかって行った。それでもしばらくは気配を窺いながらじっとその場に留まる。少し経って、頭上でホッと溜息をつく気配がして、目の前を覆っていた胸板が少し離れる。
「行っちゃったね~」
「まったく……せっかくの休日に何でこんな目に………」
走り回ったせいで上がってしまった息を整えながら肩をすくめていると、顔の両脇に肘をつかれたかと思うと至近距離から切れ長の瞳に睨まれた。
「真梨さんがそれ言うの~? 街で絡まれてる女の子助けて、うっかりチンピラ叩きのめしちゃって、俺との待ち合わせに遅れたと思ったら、仲間連れた奴らが報復に来て、追っかけ回されて、今一番の被害者俺じゃない~?」
「う…それは……だ、だいたいちょっとやられたくらいで女の子相手に人数増やしてリベンジとかする方が問題じゃない?」
「それはそうだけど~。あんまり危ないことに首突っ込まないでよ~」
そのまま肩口に顔をうずめられ、「あんまり心配させないでよ」と囁かれるとさすがに申し訳ない気持ちになる。それでも多分もうしないとは約束できないのだけど。
「まあ、真梨さんがそういう性格だから俺達は出会えたんだし…わかってるけどさ~。…気を付けてよね、お姉さん」
「……善処するわ」
日本人特有の曖昧な返事を繰り出せば、やはりその答えはご不満だったのか、そのままの体勢から、耳たぶを噛まれた。びっくりして叫びそうになる。慌てて押しのけて耳を抑えながら睨むと、悪戯が成功した子供のような笑顔を向けられた。
「お姉さんって、耳弱いよね?」
「その『お姉さん』って呼び方を止めないと、今日はこのまま帰るわよ?」
「ええ~~やだよ、今日はまだデートのデの字もできてないじゃん~。ちゃんと真梨さんって呼ぶから帰んないでよ~」
肩を掴まれ駄々をこねられる。確かに、折角のデートで初手から台無しになったのはほぼ私の所為だし、大人しくデートを再開しようか…。
そう思って顔を上げると、なぜか真顔の檎宇がじっとこちらを見下ろしていた。
「…何…?」
彼がこういう顔をした後の発言はだいたい碌な事がない。
「ん~? この位置、超眼福なんだけど、他の野郎とかからも見えるのかなって思ったらムカつくから、今日はまず服買いに行こうよ。もう少し胸元詰まってるやつ」
にへら、と笑いながら言われた私がその場で檎宇の足を踏み抜いたのは言うまでもない。
超短い。檎宇ちゃんの事は好きなんです。個人的にお気に入りキャラなんです。