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壁ドン(?) 風紀の眼鏡編

本編との繋がりは一切ありません。

攻略キャラとお姉ちゃんが恋人設定。

二人とも大学進学後(学年不詳)

糖分過剰。

お姉ちゃんがデレ。

キャラ崩壊。

本編との繋がりは一切ありません。(大事な事なので以下略)

「結構混んでますね。やっぱり皆パークに行く人たちなんでしょうか?」

「家族連れも多いみたいだし、そうかもな。…これは、向こうでも結構並ぶ羽目になりそうだな…」


 久々のデートに最近新しいアトラクションが増えたと話題のテーマパークに行きたいとねだったのは私だ。本当は一緒に過ごせるならどこでもいいのだけど、折角だから先輩が夢の国ではしゃぐところが見てみたい。キャラクターもののカチューシャとか似合わなさ過ぎてきっと可愛いだろう。

 普段は生真面目でクールビューティーと評判の菅原すがはら先輩だが、可愛い物やファンシーなものが結構好きらしい。


「こんなに朝早くから出かける必要があるのかなって思ってたけど、正解でしたね」

「ああ、そうだな」


 そんなことを言いながら、行き先のパンフレットなどを二人で覗きこんでいたら、大きめの乗換駅についたらしく、開いたドアから一気にサラリーマンや学生らしき集団が乗り込んできて、あっという間に車内はぎゅうぎゅうの満員になってしまった。

 そう言えばこの時間のこの辺りはラッシュになるんだったっけ。

 反対側のドアに持たれるようにしていた私は押し潰される衝撃にこらえようと身構えた。…けれど、予想していた圧迫感は訪れない。菅原先輩が私の体の両脇に手をついて、壁になってくれていたからだ。本人も咄嗟の事だったようで、目が合うとパッと顔を赤らめて顔を逸らされた。


「だ、大丈夫か?」

「はい、ちょうどラッシュに当たっちゃったみたいですね。この先のもう一つ大きな乗換駅に着いたら多少減ると思います。…あの、菅原先輩、そんなに力いっぱい踏んばらなくても、もうちょっと寄ってもらって大丈夫ですよ?」


 菅原先輩は身長も高いので腕もそれなりに長い。その腕を限界まで伸ばして突っ張っているものだから、私の前には周囲の密集具合をよそにぽっかりとスペースが空いている。ありがたいのだが、先輩の背後でぎちぎちに詰まって身動きの取れないサラリーマンの視線が痛い。そのほかの客も迷惑そうに先輩を見ている気がする。


「先輩、私なら平気なので、もうちょっと力を抜いてください。何ならこのまま寄りかかってもらっても…」


 鍛えてはいるので丈夫さには自信がある。多少の重みでは潰れはしないだろうし、身長もあるので埋もれる心配もない。そう言うと、菅原先輩は何か考え込むように私を見下ろしていたが、ブルブルと頭を振って、きっと睨み付けてきた。


「だ、だめだ。絶対に!」

「いや、でも後ろの人たちとかきつそうですし…。私なら本当に、ラッシュにも慣れてますし…」


 むしろ高校時代は寮住まいで、大学に進学してからは大学近くのマンションで一人暮らしの菅原先輩の方がこんな混雑は経験がないだろう。同じ大学に進学した私は家から通うのに電車を使うため、講義の時間によってはラッシュに巻き込まれるのだ。


「慣れてる…だと?! この状態にか?!!」


 何故か菅原先輩の機嫌が急降下した。何でだろう。結局、その後は口をつぐんでしまった先輩は、乗換駅でまた大量に人が降りて混雑が解消されるまで、腕をまっすぐ突っ張ったまま、踏んばり続けていた。


「……だから、力を抜いてくださいって言ったのに」


 目的地であるパーク最寄りの駅のホームでベンチにぐったりと座り込む菅原先輩に、自販機で買ったスポーツドリンクを渡す。限界までの荷重に耐え、腕を突っ張りつづけていた先輩の疲労はピークで、このままではパークではしゃぐ体力はもうないんじゃないかという消耗っぷりだ。渡したドリンクを一気に飲み干すと、またしても睨まれた。


「あの状況で力なんぞ抜けるか、阿呆」

「あの状況なら普通力は適度に抜いて、壁にしろドアにしろ人にしろよっかかっちゃった方が楽なんですよ」

「………お前の家は大学から遠いんだったな……」


 そう言うと眉間にしわを寄せて何か考え込み始めた菅原先輩の隣に座って、自分もまた買ってきたコーヒーを飲む。先輩が疲れてるなら今日はもうアトラクションはあまり乗らないで、ゆっくり見て回るだけでもいいかな。また次の機会もあるだろうし。

 そんなことを考えていた私の手を急に先輩が握りしめていたかと思うと、真剣な顔で間近から見つめられた。


「…? 先輩…??」

「葛城、一緒に暮らさないか?」

「………………………はい?」


 突拍子もない同棲の申し込みに一瞬何を言われたのか戸惑うが、菅原先輩の表情は真剣そのもので、恐ろしいことに本気らしい。ただ何でいきなりそんな話になったのかがさっぱり理解できない。


「いきなりどうしたんですか? 先輩、実はさっきのラッシュで消耗しすぎて意識が朦朧としてるんじゃないです?」

「本気だ。俺と一緒に住んで、俺の家から大学に通ってくれ」

「何がどうしてそうなったんですか? って言うか、いきなり同棲はさすがにハードルが高いって言うか、確実に妹に泣かれるのでちょっと…」

「俺の家からなら電車に乗らなくて済むだろう? さっきみたいな混雑に巻き込まれることもない」


 話を聞いていて、何かがおかしいことに気づいた。菅原先輩の目には同棲とかそういった甘ったるい色がない。


「…先輩、ひょっとして私がラッシュの電車に乗るのが嫌でそんなことを……?」

「だ、だってあんな状態で俺がいなかったら確実に他の男がお前と密着してたんだぞ?! それを慣れてるとか、お前はもうちょっと警戒心ってものを持て! さっきだってお前の事をいやらしい目つきで見てくる野郎ばっかりで…」


 いや、あれは確実に迷惑なバカップルへの怒りの視線だったと思う。けれど、その後も大真面目な顔でラッシュの電車に乗ってくれるなという懇願をされ、朝が早い時は女性専用車両を利用するという約束をするまで、菅原先輩の暴走は続いた。


 パークへのデートは、結局次回にお預けになった。

出番が少ない所為か、文字数も少ない不運体質な眼鏡キャラ。しかも眼鏡の存在感ゼロという…。文章だけ読んでると眼鏡…かけてない…?

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