ある節分の日の生徒会
ちょっと前にツイッターで節分ネタを呟いて、何となく思いついた短編パロ。
本編とはリンクしていません。
真梨香姉ちゃん1年の冬。
ちなみに元のツイート文
『「葛城! うちのシェフに作らせた特製恵方巻を食わせてや…ぐはっ!!!」
生徒会室のドアを開けた瞬間、石榴の顔面を豆の礫が襲う。室内では剛速球を決めた瞬間のピッチャーのようなフォームの真梨香が石榴の後ろで礫を避けた橘平を見て舌打ちしていた。』
こんな感じの内容です。ではどぞどぞ。
「そういえば、今日は節分ね。」
放課後の生徒会室。間近に迫る引退を控え、新旧の生徒会長と副会長は引き継ぎ業務に追われていた。今日中の急ぎの書類があらかた片付いたところで、休憩をとっていたところ、前副会長で、来月には監査委員会委員長就任が決まっている五葉松亜紀が誰にともなく言い出した。
「そうだな。寮では毎年段々サバイバルゲーム化していってるんだよな。」
前生徒会長、菅原棗が苦笑気味に語る。複雑な家庭事情を抱える彼は現在学園の寮に入り、そこから通っている。生徒会役員という立場上、寮生が暴走しないように、毎年苦労しているのだろう。
「そういえば、今日はお茶請けに、と思って福豆と落花生を持ってきたんです。すぐ用意しますから待っていてください。」
今回、紆余曲折を経て平の執行部員から副会長に異例の当選を果たした少女、葛城真梨香が立ち上がって、生徒会室を出ていく。しばらくして盆に人数分のお茶と、升に炒り豆、皿に落花生を盛って戻ってきた。
「…炒り豆はわかりますけど、落花生?」
新生徒会長の篠谷侑李が怪訝そうな表情を浮かべる。
「はい、うちでは結構落花生を撒きますよ。撒いた後も殻を剥いて食べられるので。」
真梨香以外の3人は撒く豆と食べる豆は別という認識だったので目を丸くする。
「節分の豆撒きは厄を祓って捨てるためのものだから、撒いた豆を食べるのはどうかと思いますが…。」
「そうかもしれないですけど、もったいないじゃないですか。」
篠谷の言葉に真梨香が少しむっとした表情を浮かべる。この二人のこうした言い合いはすでに日常と化していて、上級生二人は特に止めるでもなくお茶をすすって眺めている。
「それに、落花生は炒り豆よりも的に向かって投げつけやすいです。」
「的…?」
「はい。うちは鬼の役をやる人間がいないので、的に向かって投げてます。豆を買うときについてくるお面ですけど…。」
ふと真梨香の眼が窓の外に向けられ、狐を思わせる切れ長の目がさらに細められた。つ、と落花生の皿に歩み寄って、何個か掴み取った。
「…? 葛城さん?」
真梨香の様子に違和感を覚えた篠谷が声をかけると、にっこりと微笑みかえされた。束の間、見とれてしまい、篠谷は次の真梨香の台詞への反応が遅れた。
「せっかくですから、落花生でも鬼退治できることを証明しましょうか…。」
「え…?」
表情と裏腹な物騒な言葉に篠谷が一歩後ずさる。真梨香は生徒会室のドアを睨み据えながら、野球選手のような投球フォームをとった。
その時、廊下をバタバタと近づいてくる足音が響いて、生徒会室のドアが乱暴に開け放たれた。
「葛城! 最近巷の節分で流行っているという恵方巻をうちのシェフに特別に作らせた!! 貴様にも食わせてやるからありがた…ぐはっ!!!」
生徒会室へ飛び込んできた、いや、飛び込んで来ようとした代議会2年総代の一之宮石榴は猛スピードで投げつけられた落花生の礫を顔面に受け、あえなく轟沈した。幸い目には当たらなかったようだが、顔面を押さえゴロゴロと悶絶している。
室内では真梨香が投球後のポーズで石榴の後ろを見、吉嶺橘平が運よく避けていたのを見て舌打ちしていた。残る生徒会役員は、野球部エースもかくやという剛速球に思わず拍手してしまっている。
「鬼はーそとー。(棒読み)…あら、一之宮先輩、ちょうどいま節分の豆撒きで厄を祓おうとしたところです。何ならそこの吉嶺先輩も交えて第2投目、浴びていかれます?」
何なら炒り豆も投げましょうか? と輝くような笑みを向けられ、賢明な代議会副議長は両手を上げて降参の意を示した。
「いや、うん、今生徒会は引継ぎで忙しいんだったよね? 邪魔しちゃ悪いから、今日は退散しておこうかな。」
「そうですか。残念です。次は胡桃でもご用意してお待ちしますね。」
にっこりと微笑む真梨香の手の中で落花生の殻が無残に砕け散っていた。
そして唐突に終わる。
何でかこういうネタを考えるたびにバカ殿が暴力振るわれてる図しか浮かばない…。