聖十字騎士団
「お兄ちゃん!」
「サチ!」
手を伸ばしてもどんどん離れていく。
「助けてお兄ちゃん!」
「サチ!サチ!」
『我はアイザック。死神が一人』
一人の骸骨。
サチをさらった者。
「サチ!」
タクトは起き上がった。
時刻は深夜の2時。
街の明かりが街頭だけになっていた。
「夢・・・・か」
悪い夢だ。
今もサチは何をされているのかわからない。
早く見つけ出して助け出さなければ。
「早く見つけ出さなければ」
その時だった。
ドォオオオオンという大きな音と地響きが鳴り響いた。
いきなりのことにタクトはベッドから落下し、尻を打った。
すぐに立ち上がり、窓のカーテンを開く。
すると、丁度目の前にの道を大きなロボットが歩いていく。
大きさは推定5メートル。
腕は4本。
手には不恰好な剣を持っていた。
「でてこぉおい!ユウナぁあああ!」
「この声・・・・あのクソロン毛か!?」
タクトはバタバタ装備を装着して外に出た。
しかし、すでに別の場所に向かって行った。
でかい分歩幅がでかい。
急いで後を追う。
「でてこい!」
「うるさいわね。そんなでかい声で叫ばなくてもここに居るわよ」
下を見ると、ユウナがいた。
ロン毛はユウナを見ると剣を振り下ろした。
それを横に転がって回避する。
「どこ狙っているの?」
「こしゃくな!」
更に他の腕で剣を振り下ろす。
だが、どれもあたらない。
それはロボットの弱点があるからだ。
いくらロボットでも人間と同じ動きができるわけがない。
振り下ろす際に生じるタイムラグが剣線が簡単に見切れるのだ。
「もう諦めたらどうかしら?」
「くそぉおおおお!だが、これならどぅだあぁぁああ!」
一本の腕に子供がつかまれていた。
「ママァ!ママァ!」
「ああ、私の息子を返して!」
どうやら人質をとったみたいだ。
なんて下衆なことをするのだろうか。
ユウナもさすがに人質をとられては何もできない。
「動けばこいつを殺す。わかってるだろうな」
「返して!私の息子を」
「うるさい!」
「きゃぁぁあああああ!」
なんと、ロン毛が人質の母親を斬った。
母親のHPが減っていく。
そこにタクトが駆けつけた。
すぐにポーションで体力を回復させる。
なんとか一命は取り留めた。
「おらおらおら!」
ユウナはとにかく避ける。
避けて避けて避けまくる。
タクトは母親をあんぜんなところに運ぶ。
「避けるな!避ければこいつを殺す!」
「うぅうう」
手の中の息子がうめく。
握力だけで圧死させることも可能ということを見せ付けた。
「やっぱり下衆ねあなた」
「うるさい!お前みたいな凡人が僕にはむかうな!」
ユウナを叩き斬ろうとした。その時だった。
「いかんねぇ。そんなことしちゃいかんよ」
その瞬間、ロボットの腕が斬りおとされた。
鉄でできたロボットの腕を。
斬りおとした者は白いマントに白い鎧を纏い、背中に十字架のマークがしるされていた。
綺麗な金髪に整った顔立ち。
そして、その顔をニュースでよく見たことがある。
「人質をとってまでして女の子をいじめるんてナンセンスだねぇ」
その男は手に剣を持っていた。
その剣は有名だった。
カリバーンだ。
男は片手剣に盾の装備をしている。
「だ、誰だお前はぁあああ!」
真っ赤な顔のまま叫んだ。
「俺っちかい?俺は『聖十字騎士団第一師団長、ガウェインというものなんだ」
そう、彼はガウェイン。
ニュースで一人でドラゴンを倒したと言われる『十剣』の一人だ。
『十剣』とは世界で10人だけが選ばれる。
武に優れたものが選ばれ今は7人まで埋まり、残りが3席となっている。
「せ、聖十字騎士団だと!?嘘をつくな!今はもっと先の街にいるはずだぁぁあああ」
「いつの話をしてるんすかねぇ。団長」
「俺に話を振るな」
背後からゆっくりと歩いてくる者がいた。
ものすごく体つきがよく、白いフルメイルを纏っていた。
髪型はオールバックで顔も多少ごつい。
「私はジークフリード。聖十字騎士団団長だ」
ゆっくりとだが、近づいていく。
それにしてもなんという威圧感だ。
周りの空気が重くなったように感じる。
「う、嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」
「治安を乱したものは牢獄にて反省してもらう。それが掟だ」
「嫌だああぁぁぁぁああああああ!」
ロボットが動き出した。
残り3本の腕でジークフリードを斬りにかかる。
だが、ジークフリードはそれを前に進むだけで全て避けた。
そして、背中から剣を抜いた。
その剣は有名な剣で誰もが知っていた。
ドラゴンの首を切り落とす大剣。
デュランダル。
そのまま腕を全て斬りおとす。
「ひぃいいいい!」
ロボットを動かして逃げようとした。
しかし、ガウェインが足を斬りおとして逃がさない。
「逃がすわけないっしょ」
「おとなしく投降しろ」
「うあ・・・・うあぁぁぁあああぁあああ」
「これが『聖十字騎士団』。三大ギルドの一つか」
タクトは生唾を飲んだ。
大地は広い。
地上にはまだこんなにも強いギルドがある。
「終わりっと。大丈夫かい?お嬢ちゃん」
「あ、はい。あの、すみません!私をギルドに入れてください!」
ユウナはガウェインに言った。
ガウェインはこめかみを掻きながら言う。
「それは俺っちに言われても困るねぇ。あっちが団長だから」
「どうしてそんなに入りたがる」
ジークフリードが問う。
ユウナはジークフリードをまっすぐ見つめ言った。
「父の後を継ぐためです。私のお父様は元聖十字騎士団の団員でした。私はその意志を継ぎたいのです!」
「父親の名は?」
「ヒースクリフです」
ジークフリードはじっと見つめる。
それを見つめ返すユウナ。
ふと、ジークフリードの頬が緩み背を向ける。
「ついて来い。お前は強くなれる」
「ありがとうございます!」
「ひゅ~」
ユウナは『聖十字騎士団』に入団が決定した。
タクトは歩み寄りお祝いの言葉を述べた。
「おめでとう」
「ありがとう。タクトもどう?」
「俺はいいよ。やらなきゃならないことがあるから」
「そう、じゃぁ元気でね」
「ああ。じゃぁな」
ユウナは『聖十字騎士団に入り、タクトは自らのために一人で進む。
道は違えど生きていく。
人は生きていくのだ。
名前:ガウェイン
武器:片手剣=カリバーン
防具:白銀の軽鎧 アイギスの盾
備考:とにかくイケメン。ドラゴンを倒した男。
名前:ジークフリード
武器:大剣=デュランダル
防具:金剛の鎧
備考:ごつい。しぶい。かっこいい。