勇気
タクトは次の街に到着した。
この街は漁業が盛んな街で近くに海がある。
なのでタクトはすぐに食事処に入った。
海鮮丼を頼んでみた。
しばらくしてきた海鮮丼は新鮮度MAX。
ものすごくおいしかった。
腹ごしらえしたタクトは宿を探しに向かった。
すると、なにやら裏路地から声が聞こえた。
気になったので見に行ってみる。
決して好奇心で見に行くわけではありません。
「おら!さっさとだせよ!」
一人の少年が同じく一人の少年を蹴っていた。
蹴っている少年は腰にブロードソードいう一般的な剣を持っていた。
蹴られている少年はククリと呼ばれる剣を一本持っていた。
「や、やめてよ。出すから蹴らないで」
少年はポケットから何か出した。
お金だ。
蹴っていた少年はそれを奪い取るとタクトのほうにやってきた。
そしてタクトを睨みつけながら横を通り過ぎる。
タクトは蹴られていた少年のほうに向かった。
「大丈夫か?」
「え?あ、はい。大丈夫です。慣れてますので」
「いじめられるのに慣れるなよ」
タクトは手を差し伸べる。
少年はその手をとり、立ち上がる。
「俺はタクト。よろしくな」
「僕はショウ。よろしくです」
「なぁ、俺、宿屋探しているんだけど教えてくれない?」
「あ、でしたらうちに来てください。うち宿屋なんで」
「お、助かる」
タクトはショウの宿にとまることにした。
二人は道を歩いて行く。
ふと、タクトがこんなことを聞いた。
「ショウは何であんな奴にいじめられてんだ?」
「何でって、弱いからですよきっと」
「弱いからっていじめるか?」
顔をしかめた。
ショウは少し苦笑いをして言った。
「仕方ないですよ。僕は何をしたってだめで、落ちこぼれですので」
「そんなものなのか?」
二人はしばらく歩く。
宿に着くと、タクトは夕食を頂く。
宿自慢のビーフシチューを頂いた。
ものすごくおいしかった。
肉も柔らかく、野菜にも味がしみて美味。
食事を終えると、タクトは武器の手入れをした。
メニューからメンテナンスを選ぶ。
データ内で勝手にメンテナンスが行われる。
タクトはゆっくりと立ち上がってトレーニングを始める。
少しでも体を鍛える。
わけなかった。
ただの暇つぶしだった。
メンテナンス中は狩りにもいけないから暇をこうしてつぶしていた。
すると、ドアを叩かれた。
タクトは筋トレをやめてドアを開ける。
そこにはショウがいた。
「お風呂が沸きましたのでいいにきました」
「お、マジか。よし、一緒に入ろう」
「はい?」
「お姉さん、ショウくん借りていいですか?一緒に風呂入ろうとおもって」
お姉さんとは宿の女将。
つまり、ショウの母親だ。
「あら、いいですよ」
「よし、許可が下りたからいくぞ」
ショウは言われるまま風呂に向かう。
風呂は広く、普通に20人は余裕で入れる。
「あ~きもちいい~」
「・・・・・・・・」
「どうしたそんな顔をして」
タクトは泳いでショウの元まで行く。
「いえ、ちょっと」
「あ~あ、だらしないな。そんなウジウジすんなって」
タクトはショウの肩に腕を乗せる。
ショウはその重みで沈んでいく。
慌てて引き上げる。
どうやらのぼせたみたいだ。
タクトは背負って風呂をでる。
冷房の効いた場所でショウを長いすに寝転がす。
その間に牛乳を買い、一気に飲み干す。
「ぷはー。やっぱり風呂上りは牛乳だぜ」
「うう」
「お、目が覚めたか」
「すみません。迷惑をかけて」
「お前謝りすぎだ」
タクトはショウと同じ目線になって言う。
「お前はもっと自信を持てよ」
「無理ですよ。僕は落ちこぼれですし」
「よし、なら俺がお前を鍛えてやる」
「え?ええ!?」
「ほら、いくぞ」
タクトはショウを無理やり引きずっていく。
着いた場所は人気のない公園。
タクトは刀を抜いた。
「お前もククリを抜けよ」
「で、でも」
「いいから」
ショウは恐る恐るククリを抜いた。
その瞬間、タクトは斬りかかった。
ショウはとっさにククリでガードした。
「目をそらすな。しっかりと前を見ろ」
「む、無理ですよ」
「無理と思うからできないんだ」
タクトは再び刀を振るう。
ショウはできるだけ目をそらさないようにして受け止める。
「やればできるじゃねぇか」
それから数時間訓練を行った。
ショウもだいぶ慣れたのかすでにタクトの剣をまっすぐ見て受け止めていた。
「よし、終了だ」
「あ、ありがとうございました」
「後はショウの気持ち次第だ。勝つっていう気持ちを忘れるな」
「はい」
「じゃ、俺は今日は寝るわ」
「はい、おやすみなさいです」
タクトは就寝した。
次の日の朝、タクトは道具屋に寄った。
回復薬と携帯食料を買い、外に出る。
すると、丁度良く昨日の少年とショウが裏路地に入った。
それをこっそりと追う。
「おら、今日の金をさっさとよこせよ」
「い、嫌だよ」
「あ?お前なに歯向かってんだ?さっさと出せよおら!」
少年が蹴りを繰り出す。
しかし、ショウはそれを避けた。
少年もびっくりしたが、ショウもびっくりしていた。
「てめぇ、いい度胸してんじゃねぇか」
少年が剣を抜いた。
ショウは小さい悲鳴を上げて尻餅をつく。
(やっぱり無理。僕には無理だ)
そう思って金を出そうとした。
その時だった。
ショウは少年の後ろで壁にもたれかかっているタクトを見つけた。
ショウはあの時の言葉を思い出した。
『勝つって気持ちを忘れるな』
ククリに自然と手が伸びる。
「おらぁ!」
少年が剣を振り下ろした。
キィイインッという甲高い音がした。
ショウが少年の剣を防いだのだ。
少年はびっくりして目を見開いた。
ショウはまっすぐと少年を見る。
「僕はもう今までの僕じゃない。弱虫でただ逃げているだけの僕じゃないんだ!」
ショウは少年の剣を押し返した。
少年は怒って剣を振るう。
剣筋が適当だ。
ショウはそれを簡単に防ぐ。
見える。
剣筋がよく見える。
タクトとの修行が発揮された。
今まで目を背けて見てなかったものを見る。
そして、勝つという気持ちを忘れない。
「やああああ!」
ショウは少年の剣を弾き飛ばした。
少年は尻餅をついてショウを見上げる。
ククリを突きつけて言い放った。
「僕はもう君にお金は渡さない。それでも来るのなら僕は今度こそ君を倒して警士団に差し出す」
「お、覚えてろよ~!!」
少年は顔を真っ赤にして地面を這うように逃げていった。
ショウはタクトがいた方向を見る。
居なかった。
タクトは少年がちゃんと戦うのを見て街を出て行ったのだ。
ショウはタクトに感謝した。
たった一日の師匠に。
「さて、次の街は・・・・・あっちだな」
タクトは地図を開いて次の街に向かった。
サチを助けるためにあまり長く同じ街にとどまっていられない。
だから進む。
先に進むのだ。