土の神ライドー 序章 その2
レオ・バレッタ。西の果てウエストホースで保安官をやっていた男。この大陸は賞金首やならず者のたまり場だった。そんな世界でスターと呼ばれ、恐れられた男。今日も目覚まし代わりに、ボスに説教を食らう。
[だいたいお前はだなぁ!品格が無さすぎるんだ!少しは自覚しろ!][ヘイヘイ。品格ね。わかりましたわ。ジャー、パトロール行って来ますんで]テンガロンハットを被り直し、マントを鷲掴みにしながら馬にまたがる。[バレッタ。今日の依頼よ][ホウホウ。なるほどな。南が騒がしいな。今日は北に行くか][チッ………チョット!バレッタ!][いいのいいの。どうせ事件が起こりゃ行くんだから。見回りと称して暇潰しな。付き合ってらんないよ。あんなボス]レオ・バレッタは馬を走らせながら後ろ手に投げキスをする。
[まったくモー…………どうするの?この依頼!]アシスタントはいつもの事と諦めた。
[今日あたり、新しい保安官が来るらしいけどまだかしらね。イケてたらつまみ食いね]
[ヤレヤレ。やっと巻いたか?厄介な依頼には付き合いたくねーもんな。まあ、いずれやる事になるさ。いずれな]
レオは北の小川にさしかかった。
[さて、魚釣りでもしますかね。オイ馬。お前も飯の時間だろ?その辺で適当にやれや]レオは馬から降り小川に向かった。
[キャー!泥棒!誰かー!]向こう岸で女性の悲鳴が聞こえた。[何?泥棒?マテマテ。オイ!馬!行くぞ!]レオの馬は呑気に草を食んでいた。[ッタクモー!シャーネー行くか!]レオは面倒な事に巻き込まれるのは嫌いだが、目の前で起こった事には躊躇しなかった。小川を蹴り進み、向こう岸に渡り、高い木を三角跳びでに登り、辺りを見渡す。
[さて、獲物は?…………いた!あそこだ!]マントをたなびかせ、一回転して地面に着地し、残像を残して泥棒を追いかける。
レオの隣を黒い影が走り去る。黒い影は投げ縄を放り、泥棒を捕らえる。
[捕らえた!覚悟しろ!こそ泥!]男は馬を飛び降り、殴り付ける。
[マテマテ!失神している!やめるんだ!]息を切らしながら、レオが追いつく。[お嬢さん。もう大丈夫ですから。コレですよね。盗まれた物は?]泥棒の盗んだかごを手に取り被害者に見せる。[エエ。ありがとうございます][アア、お礼は保安所まで][エエ。解りましたわ]
レオは男を見た。
黒いバンダナに赤く長い髪。茶色いベストに投げ縄を片手に持った男。[初めまして。レオ・バレッタさん。僕はピート。今日付けで保安所に配属されました][ルーキーか?よくやった。まあ、俺も馬があればお前より早かったがな。マア………あれだ、ハンディーだ。くれてやる。就任祝いだ][ありがとうございます。ジャー保安所に帰ってますんで。また後で]ピートはペコリと頭を下げ、馬にまたがり、泥棒を抱えあげる。
[ピートか。ハンディーがあったにしても、あの馬の乗りこなし。縄を投げるタイミング。かなりのセンスだな。鍛えがいがありそうだ。マア俺も、就任当時は…………]ブツブツ言いながら自分の馬に戻る。
馬はお腹一杯草を食べ、呑気に昼寝していた。
[まったくこいつは。肝心な時にコレだよ!]
[オーイ。レオ!暇か?]林の中から大きな虎が出てきた。[おお。チャンク。散歩か?][アア。なんでも強い熊がいるらしくてな。力比べさ。たいしたことなかったがな][たいしたこと無いが、怪我してるぜ][ナーニ。返り血さ][そうか?手当てしてやるよ。マア来いや]
レオは親友チャンクの手当てをした。
[わりいな。いつも。熊肉いるか?やるよ][アア。貰うよ]二人は熊肉をかじりながら、馬を引きずり保安所に帰るのだった。
続く




