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逢える日まで、笑っていて…妻からの手紙…

作者: Ilysiasnorm
掲載日:2026/02/04

僕がそちらに行った時にまた君と会えるかな?

はい…あちらでは貴方が望む私の姿で、貴方が望む場所に私は現れますから。

この別れは永遠ではありませんよ!

だから貴方は悲しみの中で過ごさず、この先もその朗らかな笑顔を絶やさず過ごして下さいね。

ねえ、旦那様。

あなたが泣く顔を、私は最後まで見たくなかったの。

病室の天井は白くて、

窓の向こうの空は、どうしてあんなに青いんだろう。

あなたの手はあたたかくて、

それだけで私は、もう充分に幸せだった。

「まだ、早いよ」

そう言ってくれた声が、私の胸を締めつける。

早いね。わかってる。

ふたりで見るはずだった季節が、まだ、こんなに残ってる。

でもね。

だからこそ、お願いがあるの。

私のいない朝に、あなたが負けないように。

私のいない夜に、あなたが壊れないように。

——笑って。

無理にじゃなくていい。

上手じゃなくていい。

ただ、あなたがあなたでいられる形で。

私が好きだった、あの朗らかな笑顔を、

自分から奪わないで。

あなたは優しいから、きっと自分を責める。

もっと何かできたんじゃないかって、

あの日ああしていればって、

答えのない場所で、何度も足を止める。

けれど、旦那様。

私はあなたに、何一つ悔いなんて残していないよ。

だって、私を見つけてくれた。

選んでくれた。

手を離さずにいてくれた。

それは奇跡みたいに充分で、

それ以上を望んだら、私は欲張りになってしまう。

私はね、あなたのこれからを、奪いたくない。

私のために笑えなくなるあなたを、

私のせいで色を失う世界を、

私は見たくない。

……だから、約束をするね。

私が“あちら”に先に着いても、迷わないように。

あなたが来た時、すぐ見つけられるように。

あちらではね、

あなたが望む私の姿で、

あなたが望む場所に、私は現れる。

初めて出会った日の私でもいい。

泣きながら笑っていた、あの夜の私でもいい。

あなたが「きれいだ」と言ってくれた、

照れくさいあの瞬間の私でもいい。

あなたがいちばん救われた私で、

あなたがいちばん安らげる場所で、

私はあなたを迎えるから。

そして、その時——

あなたに叱られるの。

「なんで、先に行ったんだ」って。

「ずるい」って。

「会いたかった」って。

その全部を、私は受け止める。

抱きしめて、受け止める。

だからそれまで、旦那様。

どうか、自分を置き去りにしないで。

私を想って泣く日があっていい。

胸が痛くて、食べられない日があっていい。

何もできない日があっていい。

でも、泣き終えたら。

あなたの暮らしを、あなたの手で戻して。

コーヒーを淹れて。

シャツにアイロンをかけて。

窓を開けて。

空を見て。

私が大好きだった日常の続きを、

あなたの足で、もう一度歩いて。

その足音が、私には祈りに聴こえるから。

最後にもう一つ。

どうしても言いたいことがあるの。

——私は、幸せでした。

短いって、思わないで。

若いって、悔しがらないで。

ふたりが重ねた時間の密度は、

誰にも負けない。

あなたに愛された記憶は、

私の永遠です。

だから、旦那様。

悲しみに沈まないで。

私のせいで、あなたの人生を小さくしないで。

笑って。

歩いて。

生きて。

私がいちばん愛したあなたのままで。

そして、いつか。

あなたがこちらに来た時、

私は必ず、あなたの前に現れる。

あなたが望む、私の姿で。

あなたが望む、場所で。

「おかえり」って言って、

もう一度、はじめての恋みたいに笑うから。

——この別れは、永遠ではありませんよ。


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