表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冤罪で家が滅んだ公爵令嬢リースは婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!  作者: 山田 バルス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/84

第47話 伯爵家の没落 ― ざまあの結末

伯爵家の没落 ― ざまあの結末


 謁見の間の空気は、ぴんと張り詰めていた。

 リース=グラスゴーは一歩前に立ち、静かに頭を垂れている。

 かつては誇り高き公爵令嬢、今は没落し、追放され、居場所すら奪われた少女だ。


 だが、その沈黙を破ったのは、思いもよらぬ声だった。


「リースは俺の婚約者です!」


 銀髪をかきあげ、緑の瞳を輝かせた少年が名乗りを上げる。

 レスター=ブラッドフォード。伯爵家の長男、十六歳。

 唐突な宣言に、場内はざわついた。


「……え?」

 リースは思わず顔を上げた。


 レスターは得意げに顎を上げ、堂々と続ける。

「リース嬢は元公爵令嬢とはいえ、俺の許嫁。だから、彼女を迎えるのは当然の権利です!」


 それに呼応するように、父のブラッドフォード伯爵が進み出た。

 恰幅のいい体を揺らしながら、恭しく頭を下げる。

「陛下、妃殿下。息子の言うとおりでございます。リース嬢が没落したとしても、我が家が彼女を受け入れることで、彼女の身分も守られるのです」


 ――その瞬間、リースの胸に冷たい怒りが走った。


(何を言っているの……?)


 忘れもしない。

 公爵家が断罪されたその日、レスターは真っ先に駆け寄ってきて、嘲るように笑い、こう言ったのだ。

 ――「婚約破棄だ。落ちぶれた女など要らない」


 それが今になって「婚約者」だと?

 リースの拳は小刻みに震えた。


 さらにレスターは調子づいて、人垣の中を指さした。

「それに……! あそこにいる騎士団の男! そいつが俺を倒したんです! 父上、あれこそ我らに恥をかかせた無礼者です。今すぐ捕まえましょう!」


 名を呼ばれたのは――ロベルト。

 毅然と立ち、リースを守るように前に出る。


 伯爵はにやりと笑った。

「ほう……なるほど。では陛下、この者を捕らえ、処罰する許可をいただければ」


 空気が凍りつく。

 だが次の瞬間、朗らかな笑い声が響き渡った。


「おほほほほ!」


 王妃がゆるやかに立ち上がり、扇を口元に添えた。

 その声は、会場全体を震わせるほどの威厳を宿していた。


「なるほど。息子が騎士団に負けた腹いせに、王族の名を汚そうとするとは。伯爵、あなた方はどこまで愚かなのでしょう」


 レスターと伯爵の顔が真っ青になる。


 王妃は鋭く言い放った。

「ロベルトは我が息子です。王族に拳を向けたなどという虚言を弄し、今この場で罪人に仕立てようとした――これは明確な反逆行為!」


 周囲の貴族たちがざわつき、誰もがブラッドフォード親子に冷たい視線を向けた。


「さらに……リース嬢を婚約者だと? 笑わせますね!」

 王妃は声を張り上げる。

「公爵家が失脚した日に、あなた方は真っ先に彼女を見捨て、婚約を破棄した。証人は山ほどおります。都合のいい時だけ『婚約者』を名乗るなど、恥知らずにもほどがあります!」


 その一言に、場が爆笑に包まれた。

「破棄したくせに婚約者?」

「伯爵家も地に落ちたな」

 貴族たちが次々と嘲笑を浴びせる。


 レスターは顔を真っ赤にし、必死に叫んだ。

「ち、違う! あれは一時の感情で……本心では……!」

 だが誰も信じない。


 伯爵も怒鳴った。

「これは陰謀だ! 王妃殿下、我らを陥れるための……!」


 しかし、近衛の騎士たちがすでに動いていた。

 ガシャン、と鉄の鎖が響き、レスターと伯爵の両腕が縛られる。


「離せ! 俺は伯爵家の嫡男だぞ!」

「ふざけるな! 我らがどれほど王家に尽くしてきたと……!」


 必死の叫びもむなしく、二人は引き立てられていった。

 その姿は、惨めで哀れ、そして何より滑稽だった。


 こうして、ブラッドフォード伯爵家に調査が入り、後日、王家に対する大きな不正が発覚し、取り潰しとなった。


 静けさを取り戻した謁見の間で、リースは肩を震わせていた。

 安心か、感謝か、それとも長年の苦痛から解放された涙か。


 そんな彼女の前に、ロベルトが歩み寄る。

 蒼い瞳をまっすぐに向け、ひざまずいた。


「リース。俺は君を守りたい。もう誰にも傷つけさせない。だから……」


 剣を抜いた時よりも真剣な表情で、彼は言った。

「俺と結婚してほしい。ずっと、隣にいてほしい」


 リースの胸に、熱いものがこみ上げる。

 レスターに裏切られ、家を失い、孤独に沈んでいた自分を救ってくれたのは、この青年だった。


 涙を浮かべながら、彼女は小さく頷いた。

「……はい。わたしでよければ」


 場内に歓声が上がり、王妃は満足げに微笑む。

 王も深く頷き、二人の未来を祝福した。


 伯爵家の傲慢は潰え、レスターの野望は笑い者となった。

 そして――リースの新しい人生は、ロベルトと共に始まろうとしていた。

 【完結】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ