閑話6 アリータ編 リースお嬢様との再会
騎士団への道
王都の外れにある騎士団の寮は、学院の華やかさとはまるで違っていた。
重厚な石造りの建物は質実剛健で、武具を手入れする音や若い騎士たちの掛け声が、夕暮れの空気に響いていた。
私は胸を高鳴らせながら門をくぐった。
ここに――リースお嬢様がいる。
けれど足が震える。
もしも違っていたら?
もしももう一度、会えなかったら?
影武者として生きてきた私にとって、リースお嬢様は光そのもの。
だからこそ、その光を見失うのが怖かった。
寮の受付で名を告げ、しばし待たされた後、一人の少女が姿を現した。
金糸のように輝く髪、蒼く澄んだ瞳――
その姿は、私が幾度も夢に見たお嬢様そのものだった。
「……リースお嬢様!」
思わず駆け寄り、涙が滲む。
彼女もまた、驚きと喜びの入り混じった表情で私を見つめた。
「アリータ……? 本当に、あなたなの?」
声が震えている。私は深く頭を下げ、必死に言葉を紡いだ。
「はい、アリータでございます。お嬢様にこうして再びお目にかかれる日を、どれほど待ち望んだことでしょう……!」
彼女は小さく笑みを浮かべ、私の手を取った。
その温もりが、夢ではないことを伝えてくれる。
「私も、あなたに会いたかったわ。学院を追放されてからずっと、不安で……でも、こうして再会できた。それだけで心強いわ」
涙が溢れそうになりながら、私は彼女の前に膝をついた。
影武者としての自分ではなく、一人の少女として。
「お嬢様。私は公爵様からの遺言を託されております。必ずやダイエー王国の国王陛下にお伝えしなければなりません。そして……お嬢様と共に、陛下のもとへ参りたいのです」
リースお嬢様は少し目を伏せ、やがて真剣な眼差しで私を見返した。
その瞳は、若さに似合わぬ決意の光を宿していた。
「……ええ、行きましょう。私たちには守るべきものがある。お父様の名誉も、そして未来も。逃げてばかりではいられないのね」
その言葉に、胸が熱くなる。
あの幼い令嬢が、苦難を経てここまで強くなったのだと思うと、誇らしさでいっぱいになった。
「お嬢様……ありがとうございます。必ずや私が盾となり、共に王城へとお連れいたします」
その瞬間、彼女は小さく頷き、微笑んだ。
柔らかな春風が寮の窓から差し込み、彼女の金の髪を揺らした。
その光景は、まるで新しい旅立ちを告げる祝福のように見えた。
こうして――影武者である私と、本物のリースお嬢様の物語は、新たな舞台へ進む。
目指すは王城、そして国王陛下の前。
長い道のりになることはわかっている。
それでも今なら迷わない。
お嬢様と共に歩む未来が、確かにここにあるのだから。




