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冤罪で家が滅んだ公爵令嬢リースは婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!  作者: 山田 バルス


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閑話5 メアリー編 リースとの再会

春の再会 ― 並木道にて


 桜の花びらが舞う中、私はただ夢中で駆けていた。

 金色の髪が春の日差しを反射して輝き、蒼い瞳がまっすぐにこちらを見つめている。その姿は、あの日からずっと探し続けていた友――リース=グラスゴー、その人に間違いなかった。


「リース!」


 叫ぶように名前を呼んだ。声が震えていた。

 彼女も驚いたように目を見開き、それからゆっくりと微笑んだ。


「メアリー……」


 その笑顔を見た瞬間、胸の奥に溜め込んでいたものが一気にほどけた。

 私は立ち止まることもできず、そのままリースの胸に飛び込んでいた。


「よかった……生きてた……! 本当に、無事で……!」


 言葉が途切れ途切れになり、涙が頬を伝う。

 リースは少し驚いたように固まったが、すぐにそっと私の背中に手を回してくれた。


「泣かないで。私は大丈夫だから」


 その声は、以前と変わらない。静かで、でも芯のある強さを帯びていた。


 少し落ち着いてから、私たちは並木道のベンチに並んで腰を下ろした。

 桜の花びらが風に舞い、足元にひらひらと積もっていく。


「……本当に、リースなのね」

「そうよ。久しぶりね、メアリー」


 改めて向き合うと、胸が熱くなる。

 リースは少し痩せたように見えたけれど、その瞳は以前よりも強く輝いていた。


「手紙を読んでから、ずっと信じられなかった。夢なんじゃないかって……でも、こうして会えて、本当に……!」


 私が言うと、リースは小さくうなずいた。


「私もね、こうしてあなたに会えて嬉しいわ。あの時、全部失ってしまった気がして……もう誰にも会えないと思ってたから」


 その言葉に、胸が締め付けられる。

 私はあの日のことを思い出す。物置小屋の火事、突然の断罪、そしてリースの追放。

 何もできなかった自分が、悔しくてたまらなかった。


「ごめん……本当に、ごめんなさい。あの時、わたし、何もできなくて」


 震える声でそう言うと、リースは首を振った。


「メアリーのせいじゃないわ。あれは私の運命だったのかもしれない。でも――」


 リースは小さく笑った。


「今はね、もう大丈夫。騎士団の寮でお手伝いとして働いているの。最初は大変だったけど、今は仲間もできて、仕事にも慣れてきたのよ」


「本当……? つらいことばかりじゃなかったのね?」


「ええ。むしろ、ここに来てから、ようやく自分の居場所を見つけた気がするの」


 そう語るリースの顔は、とても晴れやかだった。

 私は胸がいっぱいになった。あれほど理不尽な追放を受けながら、彼女はこうして前を向いて歩いている。


「すごいよ、リース……」


 思わずつぶやくと、リースは照れたように肩をすくめた。


「ただ、必死なだけよ。生きるためにね。でも、こうしてあなたに再会できて……本当に良かった」


 それから私たちは、互いに近況を語り合った。

 私は学院での日々、勉強や友人たちとの小さな出来事を話した。

 リースは、寮での仕事や騎士たちとのやり取りを語ってくれた。


「騎士団の人たちって、厳しそうだけど……どうなの?」

「確かに厳しいけれど、皆、誠実よ。最初は年齢を偽って働くことに不安もあったけど、ちゃんと認めてもらえるように努力したの。今は信頼してくれている人もいるのよ」


「そうなんだ……それを聞いて安心したわ。きっと、みんなリースの真面目さを分かってくれたんだね」


「そうかもしれないわね」


 リースはそう言って、少しだけはにかんだ。

 その笑顔を見ていると、胸が温かくなる。


「ねえ、メアリー」


 不意にリースが真剣な顔をした。


「私、これからもここで働きながら、自分の力で生きていこうと思ってるの。あの日の出来事を忘れることはできないけれど、それに縛られて立ち止まりたくないの」


 その瞳には、決意が宿っていた。

 私は強くうなずいた。


「うん、応援する。リースが前に進もうとしているなら、私も一緒に支えたい。ずっと友達だから」


 その言葉を聞いて、リースは小さく笑い、そして静かに答えた。


「ありがとう、メアリー。あなたがそう言ってくれるだけで、私は救われる」


 その後も私たちは、時間を忘れて語り続けた。

 春の午後はゆるやかに過ぎ、やがて並木道に夕日が差し込み始める。


「そろそろ帰らなきゃね」

「そうね。また会える日を楽しみにしてる」


 別れ際、私たちはしっかりと手を握り合った。

 その温もりは、確かにこれからも続いていく絆を感じさせた。


 リースが歩き去る背中を見送りながら、私は心の中で強く誓った。


 ――もう二度と、彼女を一人にはしない。


 桜の花びらが、夕陽に染まって舞い落ちる。

 その下で、私は初めて心から安堵の笑みを浮かべることができた。

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