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冤罪で家が滅んだ公爵令嬢リースは婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!  作者: 山田 バルス


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閑話4 アーセナル編 アーセナルの悪行がバレる

王妃のお茶会 ― 揺らぐ学院の権威


 春の午後。王城の奥に広がる薔薇園で、俺――ロベルトは母上と向かい合っていた。

 庭を囲む薔薇はちょうど見ごろを迎え、柔らかな風に揺れて芳しい香りを漂わせている。テーブルには真っ白なクロスと金彩のティーセット。王妃エレオノーラが好む、静かなひとときだった。


「ロベルト。顔が疲れているようね」

 母上は俺のカップに紅茶を注ぎながら、やわらかい声で言った。

「そう見えるのかな。まあ……最近、耳に入ってくる話のせいかな」


「耳に入る話?」

「ポーツマス学院のことだよ」


 その名を聞いた瞬間、母上の表情が僅かに曇った。

 ポーツマス学院――王国でも名門とされる教育機関で、貴族子弟や才ある若者が通う場所だ。王国の未来を担う人材を育てるために、王家も援助を惜しまないはずだった。


「何があったの?」

 母上の声は慎重だ。


 俺は、耳にした噂をすべて語った。

 学院の厨房責任者が辞め、その穴を埋めていた事務員アトラスまで過労で去ったこと。食堂では献立が作れず、学生たちが空腹を訴え、ついには近隣のパン屋や食堂に頼ってしのぐ始末だったこと。

 そして、学院長アーセナルの傲慢さと無能ぶり。


「……生徒の食事がまともに出せない教育機関なんて、ありえない」

 母上は目を細め、唇を結んだ。


「そうだろう? 俺も信じられなかったよ。しかも聞いた話じゃ、院長はその責任を全部部下に押しつけて、自分は遊び回っているらしい」


「まあ……」

 王妃は深くため息をつき、そして真剣な顔で言った。

「これは放置できませんね。学院は王国の未来そのものですもの。陛下にお伝えします」


 翌日。謁見の間にて。

 母上の言葉を受け、父上――現国王アリフレッド=ダイエー陛下は玉座に座り、厳しい眼差しを宰相セドリックに向けた。


「ポーツマス学院について調べよ。学院は国の基盤を支える人材を育てる場だ。それを腐らせるなど断じて許さん」


「ははっ!」

 宰相は即座に頭を下げ、すぐさま調査を始めるよう動いた。


 数日後、報告が届いた。

「陛下。学院の監督責任はサンダーランド侯爵家にあります。しかし、現在の学院長は侯爵家の親族――アストン子爵家の三男、アーセナル=アストンでございます」


「三男だと?」国王アリフレッドの声は低く響く。

「はい。侯爵家は本来、別の者を立てたかったようですが、都合によりアーセナルを代理に据えたようで……結果、学院は大混乱に陥っております」


 王妃が小さく息をついた。

「やはりロベルトの言った通りでした。早急に交代させなければ」


「その通りだ」陛下はうなずく。

「ただちにアーセナルを解任せよ。そして、学院の資金の流れを徹底的に洗い出せ」


 調査が進むにつれ、さらに衝撃的な事実が判明していった。


「院長アーセナル、資金を横領しておりました!」

 宰相セドリックの声が謁見の間に響く。

「学院に納められた予算を不正に抜き取り、裏金を作成。その多くを、街の劇場に通う愛人に貢いでいた形跡がございます」


「愛人だと?」王の声が轟いた。

「馬車、宝飾品、高級衣服……すべて学院の金で買い与えていたようです」


 王妃は怒りに頬を紅潮させた。

「学生たちが飢えているというのに、自分だけ贅沢をしていたなんて……許せません!」


「全くもって不届きだ」国王アリフレッドは玉座から立ち上がり、力強く命じた。

「アーセナル=アストンを逮捕せよ。罪状は資金横領と背任。王家の威信にかけて断罪する!」


 夜。学院の院長室。

 厚い絨毯と豪華な調度品に囲まれ、アーセナルは愛人への贈り物リストを眺めていた。

「次はルビーの首飾りを買ってやろうか……」


 そのとき、扉が乱暴に開かれた。

 黒い鎧に身を包んだ近衛騎士たちが雪崩れ込む。


「な、何事だ!? 私は院長だぞ!」

「国王陛下の命である。アーセナル=アストン、貴様を横領と背任の罪により拘束する!」


「ば、馬鹿な! これは誤解だ! 全部……部下が勝手にやったことだ!」

 必死の叫びもむなしく、両腕を縛られる。


「や、やめろ! 俺はサンダーランド侯爵家の親族だぞ! この私に逆らっていいと思っているのか!」


 しかし騎士たちは冷ややかに言い放った。

「陛下の命に逆らえる者など、この王国に存在しない」


 アーセナルの叫びは廊下に虚しく響き、やがて牢獄へと消えていった。


 後日、王都には早くも噂が広まった。

「ポーツマス学院の院長が捕まったらしいぞ」

「横領だってさ。学生に飯も食わせず、愛人に貢いでたんだと」


 人々は呆れ、怒り、そして新しい学院の未来に期待を寄せた。


 その頃、騎士団の寮ではリースが仲間と共に、いつも通り仕事に励んでいた。

 彼女はまだ知らない――学院を揺るがした大事件が、やがて自分の歩む道にも繋がっていくことを。

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