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冤罪で家が滅んだ公爵令嬢リースは婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!  作者: 山田 バルス


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第25話 甘い午後 ― カフェでのひととき

甘い午後 ― カフェでのひととき(ロベルト視点)


 昼下がりの光が食堂の窓から差し込んでいた。

 俺は勢いよく扉を開けると、思った通りの場所にリースがいた。


「リースー! やっぱりここにいた!」


 彼女は驚いたように振り返り、ふわりと微笑む。

 その笑顔を見るだけで、胸が跳ね上がる。


「ロベルト君、こんにちは。今日も元気ね」


 いつもと変わらない優しい声。

 でも俺にとっては、それがたまらなく嬉しい。


「うん! 今日はさ、街でめっちゃ美味しいスイーツを見つけたんだ!」


 俺は興奮気味に話す。

 まるで子犬みたいだって思われてるかもしれないけど、仕方ない。

 彼女にこの気持ちを伝えたいんだ。


 果物をふんだんに使ったタルト、甘いクリームが乗ったシュー……。

 どれも彼女に食べさせたいって思った瞬間、真っ先にここに駆け込んできた。


 俺の言葉に、リースは目を丸くして――そして小さく呟いた。


「……食べたいな」


 その一言に、俺の心臓は大きく跳ねた。


「だよね! じゃあ行こう、今から!」


 気づけば口が勝手に動いていた。

 だって、俺と一緒に行きたいって思ってくれたのかもしれない。

 そんな期待に胸が熱くなる。



 石畳の街路を並んで歩く。

 昼下がりの太陽は柔らかく、行き交う人々の笑い声や露店の喧騒が耳に心地いい。

 俺はこの時間を、ずっと忘れたくないと思った。


「ここだよ!」


 案内したのは、白壁の小さなカフェ。

 花の鉢植えが並び、甘い香りが漂ってくる。

 彼女の瞳が少し輝いたのを、俺は見逃さなかった。


 店員に案内され、窓際の席に座る。

 メニューを広げるリースの表情は真剣そのもの。

 そんな姿すら愛おしい。


「俺はこのベリータルトにする! リースは?」

「うーん……悩むけど、じゃあ、モンブランにしようかな」


 モンブラン。

 彼女の落ち着いた雰囲気にぴったりだと思った。



 ケーキが運ばれてくるまでの間、窓の外を眺めながら、俺は口を開いた。


「ね、リース。こうして街を歩いたり、カフェに入ったりって、楽しいでしょ?」


「ええ。いつも食堂と寮の往復ばかりだから、新鮮だわ」


 彼女は軽く笑った。

 その横顔に胸が締め付けられる。


「そっか……。じゃあ、また一緒に来ようよ!」


 自然に出た言葉。

 でも俺の中では願いに近かった。

 本当は――「もっと一緒にいたい」って。


 けれど彼女は、弟に向けるみたいな眼差しで頷くだけ。

 俺の心の奥の熱さなんて、きっと気づいていない。



 運ばれてきたケーキ。

 ひと口食べると、リースの瞳がぱっと輝いた。


「美味しい!」


 その笑顔を見た瞬間、俺は心の底から思った。

 ――連れてきてよかった。


「だろ? 俺、これ食べた時、絶対リースに食べさせたいって思ったんだ!」


 少し照れ隠しみたいに胸を張る。

 でも彼女は本当に嬉しそうに笑ってくれた。


「ありがとう、ロベルト君。あなたのおかげで、すごく幸せな気持ちになれたわ」


 その言葉に、呼吸が止まりそうになる。

 俺の心臓が、爆発しそうなほど高鳴った。


 ――気づかないふりをしてるのは、リースのほうなのかもしれない。



 夕陽が街を黄金色に染める頃。

 俺たちは店を出て、並んで歩いていた。


「楽しかったな!」

「ええ。また来ましょうね」


 そう言って笑う彼女。

 その笑顔に、俺の顔は一瞬で熱くなった。


「リース……」

「ん?」

「な、なんでもない!」


 慌ててごまかす。

 情けないって分かってるけど、今はまだ言えない。



 ――俺の名はロベルト=ダイエー。

 この国の第3王子だ。


 本当は、ただの騎士見習いの少年なんかじゃない。

 けれど、そんな肩書きはリースには必要ないと思った。

 だから「ただのロベルト」として、彼女のそばにいた。


 俺には婚約者がいた。

 けれど同盟国との関係が決裂し、政略の駒のようにその婚約はあっけなく解消された。

 笑って済ませたふりをしたけど、正直、胸の奥はずっと空っぽだった。


 そんな時に出会ったのがリースだった。


 彼女は公爵家を追放されても、黙々と働き、笑顔を見せてくれた。

 俺のことを王子だなんて知らず、ただ「ロベルト君」と呼んでくれる。

 その自然さが、どれほど心を救ってくれたか分からない。


 ――リースは、俺にとって光だ。


 今日、彼女とカフェで過ごした時間は、ただの甘い午後のひとときに見えるかもしれない。

 でも俺にとっては、それ以上のものだった。


 婚約を失い、未来を見失いかけた俺にとって、彼女と過ごす一瞬一瞬が、生きる理由を思い出させてくれる。


 彼女はきっと気づいていないだろう。

 俺の胸に芽生えた気持ちを。

 弟分としてしか見られていないことも分かっている。


 それでも――俺は諦めない。


 いつか必ず、リースに伝える。

 彼女にとって「守ってあげたい弟」じゃなくて、「隣に立つ男」になりたいと。


 黄金の夕陽に染まる街を歩きながら、俺は心の中で強く誓った。

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― 新着の感想 ―
ん?ロベルト王子はリースが公爵令嬢だったことを知ってるの?
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