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季節外れのスノードーム〜僕が余命1年の君と出会い恋が散ったあとで〜  作者: 平井ララライ


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第3話:軽音部入部!?


 沈黙の時間を止めたかったが、話題が見つからなくて、焦って出たのがこれだ。


 「好きなジュース⋯⋯かぁ。ジュースじゃないんだけど、ミルクティーかな」


 「あ、あれ?」


 「どうしたの?」


 あまりにもイメージと違った回答と、もの静かに答える姿は、先ほどの冥逢とは正反対だ。


 「いや、なにもない。ごめん」


 僕は動揺を隠しながら答えた。このギャップに吸い込まれてしまった僕は、この後も色々話した。



 「ごみ捨t⋯⋯あ」


 どうやら冥逢と同じ考えだったようだ。袋を持とうとした手が触れた。


 「あ、ごめん」


 少しドキッとした。ただ、恋愛としての好きではないことはこの時点で気づいていた。


 「あ、雲村さんは帰って大丈夫ですよ。ごみ捨てはやっときます」


 雲村さんは頷いてカバンを持って去っていった。


 恋愛感情とかそういうのではなく。ただ友達としてこの先もやっていくんだろうな。そう思いながらギターを背負ってカバンを持った。



 「ねえ、ギター弾けるの?」


 冥逢がギターを指さしながら聞いてきた。


 「まぁ、一応ね」


 僕は見栄も張りたくないし、がっかりさせたくもない。だから一番スタンダードな答えを選んだ。


 「ええ!すごい。今度聞かせてよ」


 「う、うん。いいけど、音楽室でしか弾けないよ?今日はないし、どっちにしろ明日だね」


 「じゃあ明日行くよ」


 「中には入れないけどね」


 僕は煽るように言った。冥逢は楽器なんて弾けないと思っていたのだ。


 実際、この時の冥逢は楽器はリコーダーもまともに吹けないタイプの人だった。つまり音楽とは無縁な人間だったのだ。


 「入部したらいいんでしょ?」


 冥逢は逆に煽るように言った。


 「え、にゅ、入部!?」


 バカにして言ったことが裏目に出るとは思わなかった。


 「君のバンド、ベースが足りないの?それともドラム?」


 邦ロック好きのようで、バンドの知識はあったらしい。


 「ベースだよ。ドラムとリードギターは先輩がやってる」


 「え、バンド1つだけ?」


 冥逢は目を丸くした。


 「そうだね。こんな田舎の軽音部だよ。そりゃ人数少ないよ」


 僕はそれでも入部したかったのだ。ベースがいないので個人練習をしながら頑張って張り紙とかで募集していた最中だったのだ。佐野先輩も天月先輩もうれしいだろう。でも、全くの初心者。こりゃ時間かかるだろうな⋯⋯



 冥逢は僕の前に出た。なんだか嫌な予感がする。不吉というか何と言うか⋯


 「じゃあベースする。今日買いに行くから付き合ってよ」


 前に出た冥逢は振り返って僕に言った。


 「え、ええ!?今日?」


 予感が当たってしまった。嫌な予感ではなく良い方の予感だったが。


 そうして一緒にこの町に1つだけある古い楽器店に行った。そこで冥逢は目を輝かせながら店内を周り、赤いベースを選んだ。


 家に帰る前、僕らは連絡先を交換した。家についてスマホを見ると、通知が鬼のように貯まっていた。


 不在着信が30件⋯⋯何が起きてる。


 折り返してみると、ベースの音が聞こえた。ビヨンビヨンしている。買うときに弦を張り替えて貰ったばかりで音もずれてそうだな。


 「チューニングした?」


 「わかんないんだよね……ビヨーン」


 びよーんという音が語尾のようになっている。


 「教えてあげるよ。カメラ付けるね」


 僕はカメラを付けて、冥逢に教えてあげた。


 「ああ、そういうことね」


 冥逢はどんどん知識を吸収していった。ベースは僕も弾けないので動画をおすすめしてあげた。


 次の日、音楽室に行くと、綺麗なベースの音が響いていた。え、誰だ。もしかして⋯⋯


 「あ、お疲れ様!!」


 冥逢がベースを弾きながら笑顔で僕を迎えた。


 「え、今の冥逢が弾いてたの!?」


 僕が指さすと、冥逢は笑った。


 「そーだよ。練習した」


 ご飯呼ばれて切ったのだが、あの後ずっとやってたのか⋯…冥逢のプロフィールに『飲み込みが早い天才』に加えて『努力家』という言葉も追加された。


 「1日で??」


 「うん」


 信じられなくてその後も何回も聞いた。天月先輩も冥逢が昨日ベースを始めたと聞いて、すごく褒めていた。憧れの先輩に褒められるという様子に少し嫉妬したが、これで快晴高校軽音部のバンドが1つ完成した。この後、伝説を作るバンド『AposTrophy’』が―――

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