第12話:星空に願う
咲愛と冥逢と僕と、3人で歩く間、自然と咲愛との出会いを思い返していた。
雨の中、君が立っていたこと。そして傘を貸そうと思ったこと。君が急に告白してきたこと。その3つがなければ、今、咲愛と僕の関係はなかっただろう⋯⋯そう思うと自然と笑顔になる。
「なんで笑ってるの?」
君が僕に問いかける。ほんとのことを言うのは恥ずかしいので、僕は辺りを見回す。空を見上げると暗くなってきた夜空に星が輝いていた。
「いや、空がきれいだなって」
キザなセリフになってしまった。
「なに言って⋯⋯」
「でも、ほんとに綺麗だよ」
冥逢の言葉に被せるように、咲愛が星空を指さした。
「そうだね」
咲愛はそう言って笑った。僕と冥逢もそれにつられて笑う。満天の星空がそんな僕らを照らしてくれているような気がした。
「何してるの?」
パタパタと羽ばたくような動きをした咲愛に向かって、冥逢は首を傾げて聞いた。
「星が綺麗だからあそこまで行けないかなぁ、ってね!」
「行けるわけないじゃん!」
冥逢は、あははと声を出して笑った。咲愛もその笑い声につられて笑う。まるで劇を見ているようだった。
目の前にいる幸せそうな2人の後ろ姿を見ながら僕は思った。
冥逢は女の子だけど異性というより友達。咲愛は可愛らしい僕の自慢の彼女。僕からしたら全く違う正反対の2人が肩を並べて歩いているのを見るとすごく微笑ましい。
「何にやにやしてんの?」
冥逢は振り返って僕に問いかけた。僕は慌てて顔を隠すように下を向いた。
「変なこと考えてたりして」
「そ、そんなんじゃないから!」
僕の顔が自然と赤くなる。そして、3人の大きな笑い声が満天の星空に響く。
あぁ、これがずーっと続いたらいいのに。
僕は気づかれないように、そっと手を合わせ星空に願った―――




