プロローグ 来訪する狂気の才能!!
深い森の中で銃声が響いた。
「ぐぅぁあああ!!」
こだまする、悲鳴。
血飛沫。バタバタと倒れていく耳の長い人間。
否、自然の神の眷属であり、高い魔力適正を持つ高潔なる生命体【エルフ】
そんなエルフたちが銃声が鳴るたび、一人、また一人と血を流し倒れていく。
「オイオイ、逃げんな」
木の陰から、男の声が響く。
酒井悠斗。地球から転移して来た、齢十六にして複数のタイトルでトロフィーを持つ、若き天才FPSゲーマー。
「もっと、楽しませろって」
悠斗は、楽しそうに両手でハンドガンを構える。
狙うは、逃げ惑うエルフの背中。
「遅ぇんだよ」
そして、迷いなく引き金を引く。
パァンと乾いた音。
「ぎゃぁぁぁ!!」
弾丸は狙いを違うことなく背を貫き。また一人、悲鳴と共にエルフが倒れた。
生物の呼吸が止まる。その瞬間を眺めながら興味がなさそうに欠伸する、悠斗。
「ハ、やっぱり弱ぇな。むしろ雑魚すぎる。これじゃただの的当て、面白くねぇ」
森は血と死体で埋め尽くされ、美しい緑の大地が赤黒く染まっていた。
そして、悠斗はエルフの血で出来上がった、赤いカーペットを悠々と歩き。逃げる回るエルフたちを追いかようとした。
───その時。
「お?」
後方、5キロ先。仕掛けて罠が作動したのを感知する。
悠斗は、エルフを追いかけるのやめて木々を足場しに上へと駆け上がる。
そして一瞬で木々の天幕を抜け、視界が開ける。そこで悠斗は【アイテムボックス】から大型のドローンを呼び出し、それを足場に空中に留まる。
「どれどれ、一体どんな獲物が掛かった?」
悠斗は再び【アイテムボックス】を開き、スナイパーライフルを取り出し構え、スコープを覗いた。
罠の設置地点──そこには。
「日本人?」
この世界ではまず見ない。
髪色と顔立ちした少年が、捕縛用の罠にかかり木に吊るされていた。
「同郷の転移者……珍しいな」
悠斗はニヤリと悪魔の如き邪悪な笑みを浮かべた。
「やっとボーナスタイムか、面白くなってきた」
スコープ越しに、少年の顔を見る。
蒼い瞳に、整った顔立ち。だが全て間抜けな表情のせいで台無しだ。
「見るから雑魚そうだな。まぁいい。どんな姿でも、神が放った獲物には変わらない」
悠斗はスナイパーの引き金に手をかけた。
「死ね」
銃声が森に響いた。
弾丸が空気を切り裂き、一直線で少年の元へと奔る。
スコープ越しに見える少年の姿は変わらない。
刹那後、完璧な軌道で頭部へと命中する。
──そのはずが。
「……は?」
悠斗の目が見開かれる。
少年はまるで弾丸が来ることを予知していたかのように、頭を振った。
確実に頭へと命中するだった弾丸は、頬を掠めるに留まる。
「俺の玉を避けただと……?」
悠斗は信じられないという表情で、目を凝らしスコープを覗き直す。
蒼目の少年は魔力で強化された捕縛網を、引きちぎっていた。
「オイ、マジか。ボーナスタイムかと思ったらイレギュラーエネミーかよ」
悠斗の口角が、更に上がる。
「面白ぇじゃん」
そして足先からドローンへと魔力を流し、獲物の元へと一気に加速した。
◇ ◇ ◇
「痛ァァ!??」
ハァ??? 一体なんなんだよ!? どこの誰だよ!? 俺のことを罠に嵌めた挙句に、狙撃して来たとんでもねぇ野郎はよぅ!? てか狙撃!? 銃あんの? この世界!??
見渡しても見えん!!! どんだけ遠くから撃って来てんだよ!! いや勘弁してくれ。てか早く逃げないとまずい!!!
「あぁ、クソこの網無駄に硬いわ!!! お母さん助けてぇ、って案外いけるじゃん」
魔力強化した腕力で、網を引きちぎることに成功した俺は地面へと降りる。
「ったくどこの誰だか知らないが、本当に勘弁してほしいよなぁ。こちとら死闘続きで疲れてんだからさぁ泣」
赤いスライムさんを倒して森の探索を始めて十日程が経った。寝る間も無く探索し、常にモンスター達に狙われ続けた結果。大量の魔力を得て成長し、世界を知ることができたと思った。
結果、今。
うん。ぜんぜん舐めてたわ。この世界怖すぎる。
人の声がすると思ってウキウキで来てみたら、トラップからの狙撃ってヤバすぎるだろ。歓迎にしてはあんまりすぎるって!!
でもまぁ………銃か……。
「ちょっとワクワクするな」




