戦闘開始! 再戦のスライム!?
魔力を見つけてから三日が経過した。
俺はこの三日間、魔力を使って多くの事を試した。
そして俺の目の前には粉々に砕かれた大岩だったものが落ちている。
「やばいなこれは……」
魔力の感覚を覚えてからはとんとん拍子にことが進み、魔力コントロールを覚え、今では拳に魔力を込める事によって大岩ですら簡単に砕く事ができるようになった。 いくらなんでもヤバすぎ。
これなら少し調整した後に、すぐにでも異世界探索を再開できるな。
「よし! 新たな景色を観に行くぞ!!」
☆ ☆ ★ ☆ ☆
また一つ夜を超えて朝日が昇る時間。
俺は少しの名残惜しさ感じながらも湖を後にした。
「さてと、探索再開だ。久しぶりの外の世界! 楽しみだな!!」
今後の目標は二つある。
一つ目は、このでかい森を抜ける事だ。どれだけかかるかはまだわからないが、とりあえず目標は1ヶ月以内だ。
そして、二つ目は魔力を集める事だ。
この世界で生きていくにはどうしても力がいる。問答無用で襲いかかってくるスライムさんみたいなのが沢山いるかもしれないからな。まぁ、今のところ見かけないが。
本当は湖の修行をもっと長く続けて行くつもりだった。しかし俺の予想を大きく上回る早さでとんでもない力を手に入れてしまった。そして俺の中で修行よりも外を旅したいと言う欲求が勝ってしまった。
だがコレじゃまずい。いつだって言うだろ? 身の丈に合わない力を使うと痛い目に合うってさ。
例えば俺の右拳に他の部位で使ってる魔力を集めれば岩を砕けるようになる。でもこれでは他の場所は弱くなってしまう、それじゃダメだろ。
俺は瞬間的な火力を手に入れただけで強くなった訳じゃない。本当に強くなりたいなら沢山の魔力を手に入れて身体中に行き渡る魔力を増やすしかないってわけだ。
今わかってる魔力を集める方法は一つだけ。
とにかく動き回って光球とのエンカウントすること。でも、これはたぶん無理。だって、ここはあまりにも広すぎる。
だから俺は、前にも考えはしたが、あまりやりたくなかった事を試すしかないのかもしれない。
そう俺が試したいの事は、俺に襲いかかってくる生き物を倒すことだ。
よくない考えだが、もしかしたらゲームみたいに倒したら何かを落とすかもしれない。そんな風に思ってしまうのはここが異世界だからか、いや単純に俺がやばいのか?
いや自分からスライムさんとかに襲いかかる事はしない、本末転倒だし。でも襲いかかってくるなら迎撃はする。
んー、深く考える必要はないよな。
俺はただこの綺麗な異世界の探索を楽しむ。そして、あわよくば魔力を手に入れる。それだけだ。
そう考えると楽しい事しかないな!
「やっぱり来てよかった! 異世界!!!」
「ポヨ?」
「ん? ポヨ……?」
「ポヨポヨッ!」
「こ、この音はまさか! ス、スライムさん!?」
俺は、もはや懐かしすら感じる水音に後ろへ振り返った。
「フフッ、まさか俺に会いに来てくれたんです、、か? ……え?」
「ボヨっ?」
「……、いやお前誰だよぉ!?」
そこにいたのはスライムさんとは違う、赤色のスライムだった。
いや色違いとかいるんかい!! 別にいいけどさ! でもこんなに早くモンスターと出会うとはついてねぇな! いや違うな! むしろチャンスだ! 再び訪れたんだ。
前のスライムさんとはちがう。スライムレッドさんは、きっと俺の事をわかってくれる筈だ!!!!
「は、はじめまして。いきなりなんだけど、できれば君と仲良くしたいんだ。ダメかな?」
「ブヨ」
「ハハッ面白いなスライムレッドさんは」
「ブヨォォォォォ!!!!」
「ですよねぇ!?」
一瞬で2本の異様に長い腕を持つ人形に変化し、叫びながら俺に向かってスライムレッドさん。バケモンやん……。
いや知ってたよ。
友好的なモンスターじゃないのは最初から分かってたよ!? 二度目だしさぁ! でもやっぱ一人は寂しいやん!! チクショウ!!
あー、こうなったらとことんやってやるよ!
「かかってこいヤァ!!」
「ボヨォ!!!!!!」
うん! 声量では俺の負け☆。
いや、そんな場合じゃないな。
内心ふざけていた俺の顔面に高速で向かって来る赤く太くゴツイ拳。そして、その攻撃をギリギリ躱した。
「あっっぶねぇ!!」
クッソ、んだよ今の?! 腕が伸びたぞ!! しかも、後ろの木が木っ端微塵だよ! 当たってたら大ダメージどころの騒ぎじゃねぇ! こんなの卑怯だろ、普通に!!!
いやスライムなら伸びて当然なんだけどさ! でも生物としてはどうなんだよ!!
「ま、異世界でそんな事言っても仕方ないけど、さ!!」
次々とスライムレッドさんから繰り出される連打をなんとか辛うじて躱す俺。
この腕、一体どこまで伸びるんだよ。間合いが全く読めない。それに不規則で攻撃パターンも掴めん!! 攻撃を受けてないのは奇跡みたいなもんだ。
だがこのまま続けば、いずれ俺の集中が途切れる。そして大きく傷を負えば、ほぼ強制的に回復に魔力を持ってかれる。そしたら頼みの綱の魔力強化も使えないでゲームオーバーだ。
うん。つまり今の俺はかなりまずいってわけだな。
どっかのタイミングで前に出なきゃ、俺の拳が届かない位置から嬲られて終わり。
だったら足に魔力強化を使って一気に距離を詰めて、その後更に魔力を拳に移動して……、いやダメだな魔力の移動はほんの一瞬とはいえ時間がかかる。その一瞬で何が起こるかわからない。まだ隠し玉あるだろ、たぶん。冷静になれ、俺。
てか、躱しながら考えんのいくらなんでもキツすぎる!!! 集中力がもたない!! 意識が腕から逸れるって!!
そんな時だった。
遂に俺の頬にスライムレッド拳が掠り少量の血が流れる。
「チッ!! いよいよやべぇな、これ、は!!!」
次いで横薙ぎに一閃されたスライムの右腕を俺は地を這うように体勢を低くして回避する。
ヤバい! マジでヤバい!! 攻撃の速度が徐々に上がって!! やば!!
「グッ!!!!」
思考を許さないほどの速度、スライムの左腕の動きが急激に変化し、俺の左腕に直撃した。そして後方へと弾き飛ばされた。
「クッソ痛いな……」
はぁ、舐めてたわけじゃないがここまで強いなんて予想外だ。スライムは元いた場所から全く動いてないのにこれだ。使ってるのは長く伸びる二本の腕だけ。
それを相手に、この状況は流石にヤバすぎる。
もしかしたらコイツはスライムの中でもかなり強い個体なのか? 青スライムさんとは比べ物にならないぞ。
だがそれよりも、もっとやばいのは攻撃を受けた左腕だ。
これ確実は骨が逝ってる。もう完全に使い物にならないな。死ぬほど痛いし。
「はぁ……」
絶望でため息しかでねぇよ。
いや本当にどうしたもんか。このままじゃすぐに魔力を回復持ってかれて、さらに状況が悪化する。
だけど不幸中の幸いってヤツだ。
吹き飛ばされたお陰でかなりの距離が取れた。いま全力で逃げれば恐らく生き残れる。そして、一から修行して最高な状態で戻ってこればいい。
そう、そうしたら何も問題ない。
問題はない、が。したら、すげーダサいよな。逃げるのは賢いし正しいかもだが、二回目は流石にカッコつけたいよな。それに俺がしたいのは逃げ隠れする事じゃないんだよな。
俺がしたいのは、この異世界を楽しむ事だ。この先モンスターが出る度に逃げてたら俺は何もできない。
日和った安全策じゃ何も出来なかった。
だったら次は?
そんなもん決まってる。今やりたい事を全部やる。
挑戦は成長の過程だ。もし死んだら、まぁ来世に期待☆。
やる事は一つ。
回復に魔力を持ってかれるまでの間、何を使ってもあのスライムボコボコにする。それが今、俺のやりたい事。
そうと決まれば……。
俺は、砕かれた木々たちの中から一本の手頃な枝を拾い上げる。
こんな土壇場だがやらせてもうぜ、身体以外の魔力強化。
「今日から俺はソードマスターだ」
こっちは左腕壊れてんだ。ステゴロは卒業させてもらう。
俺は、この棒切れ一本に命を賭けるんだ。
「待ってろよ、今ナタデココにしてやる」
そうして俺は両手が動く最低限の魔力を残し、あとは全て足に移動させ、弾丸のように駆け出した。




